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2009年3月 7日 (土)

「人財力」の劣化が心配

 3月3日の経済財政諮問会議は成長戦略を集中審議するとして、まず、健康長寿、底力発揮(人財力)、底力発揮(コンテンツ)の3つを取り上げた。民間議員からは、戦略的に重要な分野を支えるための「人財力」、技術力を高める観点から、「非正規労働者を含め、若手・中堅を中心とした人材育成の強化や、新しいフロンティアを生み出す研究基盤の整備に官民あげて取り組むべきである」として4つの論点が提示された。

 第1に、「企業等における人材育成の強化、特に非正規労働者の能力開発を社会全体で支援していく取組を強力に進めるべきではないか」。第2に、「世界最先端の研究を支えるハード・ソフト両面にわたる研究体制の刷新を進める必要があるのではないか」。第3に、「理数・英語教育、キャリア・職業教育の充実、世界をリードする大学としての機能強化を推進すべきではないか」。第4に、「博士課程修了者が十分に活用されていない問題について、大学や産業界等の関係者で、原因の分析とともに解消策を検討すべきではないか」。そして、それぞれの論点に対して、推進方策を数項目ずつ示している。

 例えば、論点1では、離職者に対する生活費支援付きの職業訓練システムなどをあげており、論点2では、「環境エネルギー技術革新特区」の創設など、論点3については、小学校の理科、算数、英語の教育の強化のための人材確保(外国人を含む)などをあげている。

 だが、日本の「人財力」を向上させようとするなら、もう少し、子供の頃からの、しつけ、“読み書きそろばん”といった基礎的な知識の習得、社会や自然との関わり、仕事・働くことの意味、そして学ぶことの大切さ、などを身に付けるように、政府をはじめ、小学校から大学までの教育機関、地域、家庭などがこぞって取り組むようにすることが必要ではないかと思う。

 地方の私立大学で教えたとき、そこの大学4年生で新聞を読む者は皆無に等しかった。新聞の1面にあるコラムを読ませたら、字が読めない、読めても意味がわからないという学生がほとんどだった。また、分数と小数の転換がわかっていないとか、距離と時間と時速の関係が理解できていない学生も多かった。そして、いまでも強烈に記憶しているのは、9.11の同時多発テロが起きて3、4日経ったときにクラスの学生にたずねたら、事件そのものがあったことすら知らない学生がいたし、どこで何が起きたのか、誰がやったのか、などについてきちんと理解している者は一人もいなかったことである。

 どうして、こんなに学力が低いのか。また、社会への関心が低いのか。それは、小学校か中学校の頃に、もう勉強がわからなくなり、学ぶ意欲を失ったまま、高校、大学へと上がってきたからだろうと思う。少子化で大学に入りやすくなり、必死に受験勉強をしたことがない生徒・学生が増えているのだ。

 そもそも義務教育のときに、授業が理解できなかろうと、トコロテン式に卒業させるのがずっと続いている。そうした問題点を解消するためには、授業がわからない生徒を相手に個別に教えるとか、学校外のプロの協力を得たりして生徒の興味をひくような授業をするなどの改善が必要である。彼らはケータイをやすやすと使いこなしていたように、知能は必ずしも低くはないが、勉学意欲が全くないのである。

 携帯電話は深く彼らの日常に入り込み、若者の多くは1日に何時間もケータイに費やしている。大人もそれに似てきていて、空いている時間に、一人で考え事をしたり、書物を読むという人は少なくなっているように思える。若者も大人も、アタマを使う、知的な時間の過ごし方を苦痛に感じるようになっているからだろう。

 若者の多くは身近の些事にしか関心がなく、外国など遠いところとか、過去の歴史、未来には関心が乏しいようだ。つらくても、頑張っていれば、よい結果が得られるかもしれないという類いのものにはあまり耐えられない。仕事も、自分の意に染まないときには、がまんせず、さっさと辞めてしまう傾向がある。

 現代は、親のしている仕事が何か、それが社会にとってどんな意義があるのか、が子供の目にみえにくい。だから、就職し、働くことの意味を体験し、実感してもらう、あるいは仕事をしている人たちの苦労話や喜びを若者にわかってもらう仕掛けが必要である。

 ところで、派遣切りで製造現場の仕事を失った人たちに対し、再就職のための職業訓練が行なわれている。そうした職業教育の現場では、座学に耐えられず、動き回る人が少なくないという話を聞いた。いま、小学校で起きている現象と同じだ。なにかと言えば、人的資源を誇ってきた日本で、「人財力」の劣化が進行しているわけだ。  

 一方で、義務教育は平等主義で、できる生徒とできない生徒とを一緒の教室にして教えるから、できる生徒には物足りない。飛び級を採用し、英才教育を行なうということは考えもしない。しかし、世界に羽ばたくような「人財」をできるだけ増やすには、底上げと並行して英才教育を導入すべきだろう。

 思いついたことを羅列したが、日本の「人財力」を高めるには、諮問会議の論点以前の論点を片付けなければならないのではないか。

 

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