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2009年4月 6日 (月)

消費税と社会保障給付のセットで所得格差は是正されるとの説

 4月2日付け日本経済新聞朝刊の「経済教室」欄に、吉川洋東京大学教授と松元崇内閣府政策統括官が「社会保障費の財源確保  消費増税 議論逃げるな」と題して書いている。そこでの主張の1つは、消費税の全額を年金、医療、介護の社会保障給付と少子化対策とに充てる区分経理を行なえば、所得格差は是正されるという内容だ。

 税率がフラットである消費税は高所得者の負担が相対的に低く、低所得層の負担が重いとして、課税の逆進性が問題にされることがある。そういう視点からは、社会保障費の増大や財政危機への財源対策として消費税を引き上げるということには反対だという意見が出る。

 ところが、吉川氏らの見解によれば、消費税の負担と社会保障の受益とを比べると、対年間収入比で、年収200万円未満は負担0.71%、受益1.09%、ネットの受益0.38%。年収200万円~300万円は負担0.55%、受益0.68%、ネットの受益0.13%‥‥と、年収500万円までは「負担<受益」で、ネットの受益はプラスになっている。

 それ以上の年収となると、負担の比率も少なくなるが、受益の比率のほうがもっと少なくなるので、ネットの受益がマイナスとなり、かつマイナスの幅が大きくなっている。年収1000万円以上は負担0.23%、受益0.13%、ネットの受益はー0.10%である。

 2008年11月28日の経済財政諮問会議に民間議員(吉川氏もその1人)から提出された資料は「粗い試算」と断りつつ、同じ内容をグラフにして示した。そこでは「社会保障目的の消費税増税により所得再配分は強化される」と書いてある。

 この諮問会議における民間議員の見解は、2008年12月24日の閣議決定〔持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた「中期プログラム」〕の基本的な骨格となっている。「中期プログラム」の「1.税制抜本改革の道筋」では、「消費税収が充てられる社会保障の費用は、その他の予算とは厳密に区分経理し、予算・決算において消費税収と社会保障費用との対応関係を明示する」、「消費税の全税収を確立・制度化した年金、医療及び介護の社会保障給付及び少子化対策の費用に充てる」と言い切っている。

 吉川氏らは「経済教室」において、日本の消費税に相当する付加価値税が北欧諸国では25%にもなっているのに、北欧諸国の所得格差は日本よりも小さいと指摘。「消費税と社会保障給付の組み合わせで所得格差は是正されるのである」と述べている。

 ただ、問題は消費税率引き上げのタイミングだ。吉川氏らは、不況克服後、速やかに上げないと、景気が下降して実施ができなくなることを懸念している。その意味で、景気回復がどうなったら引き上げるか、いまから条件を詰めておく必要がある。

 もっとも、自民党・公明党の連立政権が野党に政権を渡すことになれば、現政権の閣議決定もほごにされる。そのときは、社会保障政策は財源問題を含めて新しい政権のもとで見直されることになるが、いずれにせよ、吉川氏らの見解は見直しの際にも選択肢の1つになりうると思う。

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