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2009年4月 9日 (木)

「新経済対策」を斜めに見ると

 政府・与党は新経済対策を10日に決定するという。それを財政面から裏付ける09年度補正予算(案)は15兆円を超え、事業規模では総額57兆円弱というから、これまでにない大規模なものだ。

 たまたま株価が回復してきているが、国内経済はまだまだ雇用悪化や企業倒産増が予想される。したがって、補正予算を組むのは必要だが、首相が「追加経済対策を」と言えば、待ってましたとばかりに真水が15兆円超もの大規模な補正予算(案)が出てきたのにはいささかびっくりする。

 09年度予算案をつくったあと、経済情勢の悪化で、上乗せが求められる状況になっていったから、各省庁は内々、追加対策の準備をしていたのだろう。それに、日本の官僚は政策をひねり出してカネを使うのは得意中の得意である。たちどころにもっともらしいメニューを取り揃えたというわけだ。天下り批判などで最近は逼塞していた官僚の皆さんにとっては、久しぶりにわが世の春だと言えよう。

 しかし、カネを使うことが経済対策だと思い違いしている議員や官僚が、いまこそチャンスと、普段なら絶対通らない予算要求を次々に出し、それらがそのまま認められたというのは遺憾千万だ。子育て、安心・安全、環境、農業、地方などというキーワードを用いれば、予算がとりやすいというのが見え見えである。

 GDPの落ち込みの多くは自動車、電機などといった輸出産業の輸出減による。その落ち込みを内需の増大でまるまるカバーしようと財政がフルに出動するのは間違いだ。例えば、にわかに道路予算を増やしたら、次の年はそれをやめれば、また内需が落ちるから、簡単にやめるわけにいかない。その次の年も同様で、いったん道路予算を増やしたら、ずっと続けざるをえなくなるおそれがある。こうした政策は、自ら借金王と称した小渕恵三内閣の過ちを繰り返すことになる。

 自動車の輸出も内需も、回復したとしても、元通りには戻らない。多くの人が言うように、せいぜい7~8割だろう。したがって、その程度でも利益が出るように経営を改革するのが企業の課題である。それに対して、政府・日銀がやることは雇用調整や資金繰り、さらには技術開発面などで企業を支援することにとどまる。ゆるやかに縮小均衡できるようにだ。もちろん、一方で、政府は成長産業を支援する必要があるが、これからは暮らしの質を重視し、これまでのような、国として何が何でもGDPを縮小させないという発想はもうやめにすべきだと思う。

 新経済対策では国債を10兆円ぐらい発行することになりそうだ。09年度予算(当初)では33.3兆円(うち赤字国債25.7兆円)の国債発行を予定しているから、合計で44兆円ぐらいの国債を発行せねばならない。一方で、09年度予算は46.1兆円の税収を見込んだが、いまの見通しではそれを4、5兆円は下回りそうだという。そうだと、税収<国債という、かつてない状況になる。財政危機、ここにきわまれりだ。

 先のG20で各国が財政出動を約束したが、これほど早く財政拡大を表明するのは日本ぐらいだ。それも、政治家が自ら政策を主導するのではなく、政策の多くを官僚などにおんぶしているからだと思う。それにしても、財政危機が世界で最も深刻な日本が、巨額の債務のことを忘れて、一番乗りで大盤振る舞いの財政出動をするのは、とちくるっているのではないか。

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