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2009年4月11日 (土)

鈴木亘著『だまされないための年金・医療・介護入門』は優れた啓蒙書

 日本の社会保障制度は、現役が高齢者を支える「賦課方式」となっているが、高齢者/現役比率は2008年に33.6%、つまり高齢者1人を3人が支えている。これが15年後の2023年には50.2%、即ち、高齢者1人を現役2人で背負う見通しである。2040年では67.2%なので、高齢者2人を現役3人で支えることになる。このままでは、後の世代になるほど保険料などの負担が重く、給付による受益が少なくなる。

 社会保障制度の財政を考えると、これは容易ならぬ事態である。しかも、今後、少子化対策が成功して出生率が上がったとしても、30~40年程度の間は、社会保障財政改善への貢献はあまりない。持続不可能なことが明らかな現在の年金、医療、介護の保険制度をどう改革すべきか、それに真っ向から挑み、素人にもわかりやすく書かれた本が『だまされないための年金・医療・介護入門』である。

 以前にもこのブログで書いたことだが、厚生官僚は経済学を学んでいないから、社会保障制度を自由競争とか効率とかいった経済的な観点から見ない。「措置」、つまり貧しい人とか、病気で苦しんでいる人を国のカネで面倒みてやるという発想で政策を組み立てる。また、先輩たちが始めた政策を抜本的に改めるのは失礼だという意識が強く、問題が起きたとき、その場しのぎの対症療法しかとらない。それに、政策の決定にあたって、国民にあまり情報を公開しない。そして、医師不足や介護士不足などの問題が起きると、すぐ規制強化に走る。

 本書は、そうした政府の社会保障政策を批判し、「最初で最後の社会保障抜本改革」を提示している。その基本は「賦課方式」から「積立方式」への移行である。年金改革については、同時に税方式に移行するよう主張している。

 とにかく、いまは、高齢者であるほど、年金であろうと、医療であろうと、介護であろうと、負担(保険料、自己負担)<受益(給付)となっている。したがって、高齢者に対する給付を減らし、負担を増やす方向に制度を変えないと、若い世代ほど負担の重さにあえぐことになる。いまの社会保障制度のもとでは、若い世代にとっては未来は非常に暗いのである。

 人数も多く、かつ選挙にもたくさん行く高齢者のご機嫌をとるほうが、政治家は当選しやすい。官僚も、従来路線を変えないほうが苦労がないし、天下り先維持などにも好都合である。そして、年金、医療などには既得権益を守ろうとする組織や人が一杯いる。しかし、それらを放置すると、若者の未来を暗いものにする。日本の衰亡である。

 ことさら国民にわかりにくい仕組みばかりにしてきたと言いたくなる社会保障制度。その内容と問題点、改革策、それらを同書は相当に理解しやすく書いている。優れた啓蒙書である。

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