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2009年5月31日 (日)

“大文字”の言葉と“小文字”の言葉

 佐野眞一著『目と耳と足を鍛える技術』(筑摩書房、2008年11月)を読んだ。「初心者からプロまで役立つノンフィクション入門」という副題が付いている。古手のジャーナリストが読んでも教わるところが多々あった。その中で一番グサリときたのが「大文字と小文字」、「語って説かず」の個所である。

 「“大文字”の言葉とは、日本列島の津々浦々で通用する便宜的な用語という程度の意味」、「“小文字”の言葉とは、世界を説くことはないかわりに誰の胸にも届いて感動を呼び起こす肉声といった程度の意味」だという。“大文字”言葉は聞いたときはわかったような気にさせるが、あとから考えると、よくわからない。それに対して、“小文字”言葉だと、活字だけで世界がくっきり浮かびあがる。著者はそう語る。そして、ノンフィクションは後者であり、「語って説かず」が要諦だと言う。ブロガーとして反省しきりだ。

 5月29日の経済財政諮問会議は、「安心実現集中審議・その4―とりまとめ」が行なわれた。民間議員4氏が資料として提出した「安心と活力が両立する社会の実現に向けて」を読んでいたら、佐野氏の言う“大文字”の言葉の羅列のような気がしてきた。抽象的な言葉の羅列ばかり。数値も何もないので、さっぱり頭に入ってこない。どうみても、きれいごとに終始している。単に会議の資料にすぎないというのかもしれないが、情報公開する以上、国民の多くが理解できるのが望ましい。(以下は、読み飛ばして結構)

 その資料は「1.基本方針」、「2.取組みにあたっての原則」、「3.安心社会実現の時間軸と目標」などで構成されている。「1.基本方針」は5項目あるが、その第1は、「「社会そのものの持続可能性と活力」のために、格差固定化の防止、ひいては、少子化傾向の反転等に向け、次代の日本を担う若者世代・子育て世代の支援・育成を強化していくこと」とある。その第2は、「意欲ある全ての世代の人々が働ける環境づくり(「雇用の安心」)を「安心と成長」という両輪を回す「主軸」として位置づけること」という。

 基本方針の第3は、「分断された社会保障政策及びその関連分野の有機的連携を図り、安心の五つの領域(雇用、医療・介護、年金、少子化、教育)が互いに正の相乗効果を発揮するような施策を講じていくこと」とある。さらに第4として、「国民の信頼回復のためにも「社会保障制度の綻び」の修復は、それに要する負担の費用について安定財源を確保することと併せ、最優先で行なっていくこと」とし、第5に、「経済状況の好転につれて一時避難的な安心から自立できる安心へと重点を移していくこと」を挙げている。

 次に、「2.取組みにあたっての原則」では、「取組原則1 透明性向上や“みえる化”」、「同2 努力するほど報われることが可能となる制度設計」、「同3 国民本位の制度横断的な対応」、「同4 「サービス・給付」と「財源」の一体的検討と同時実行」、「同5 行政体制・執行の担い手の見直し」の5つを挙げている。そして、それぞれについて各論を2~3項目ずつ述べている。

 そして、「3.安心社会実現の時間軸と目標」で、いつまでに(時間軸)、どうするか(目標)を3つの段階に分けて記述している。即ち、①2009~2011年度頃の安心再構築フェーズ(目標=優先課題の着実な実施と安心基盤の設計)、②2011年度頃~2010年代半ばの安心回復フェーズ(目標=安心回復に向けた優先課題と安心基盤づくりへの取組)、③2010年代半ば~2020年代初頭の安心充実フェーズ(目標=全世代・全生涯を通じた「切れ目のない生活安全保障」の構築)を掲げている。それぞれのフェーズに関して目標内容を簡単に挙げている。

 これらを読めば読むほど、きれい事に終始した文章のように思えてくる。国民に日本経済・財政が直面している現実の厳しさをはっきり伝えないで、ばら色の日本の将来を描いてみせている。財政改革についても、「持続可能な財政構造の確立」とか「安定財源」という言葉で増税をほのめかしているだけだ。総選挙の前だからと、国民に厳しい現実および未来を隠すのは、政治家・政党みずからが民主政治=衆愚政治と思っているからだろう。

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