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2009年5月10日 (日)

温室効果ガス排出の中期目標設定は行政任せではいけない

 2012年までの京都議定書のあと、温室効果ガス削減対策はどうあるべきか。年末のコペンハーゲンの会合に向けて、日本政府は2020年をターゲットにした中期目標設定の作業を行なっている。5月9日に地球環境戦略研究機関が催したセミナー「コペンハーゲンに向けて日本の中期目標はどうあるべきか」を聞きながら、感じたことを以下に。

①先に、政府の「地球温暖化問題に関する懇談会」の「中期目標検討委員会」(福井俊彦座長)が6つのシナリオを報告した。技術、助成策、規制、税制などのいろいろな組み合わせによる積み上げで計算したものである。だが、「どういう目標を立てるかまで外に丸投げした」(末吉竹二郎氏)と評されるように、気候変動という人類が直面している最大の問題に対する国家の積極的な取り組み姿勢が感じられない。これではコペンハーゲンで日本が世界を引っ張っていくどころか、孤立化しかねない。またまたNPOから“化石”と評されるかもしれない。

②温暖化問題はこれからのおよそ10年間に温室効果ガスの排出量をピークアウトさせないと、突発的にどんな異常事態が起きるかわからないという。いかんせん、そうした恐怖感を日本の立法府の政治家は持っていない。政治家は、将来の世代のために、日本をどうするか、という問題意識をを欠いている。したがって、温暖化が進めば、将来の世代に大きなつけを残すのはほぼ確実だが、行政府の立場としては、国民のコンセンサスがない以上、日本の国民・企業に過度の負担を強いる政策はとりにくい。

③日本の企業には、まだ温暖化対策を負担としかとらえないところが多いが、西欧などには、今回の経済金融危機を機に、グリーン・エコノミーをめざそうという企業が相次いでいるようだ。そうした企業は、リスクはチャンスでもあるという複眼的思考に立っていて、国が削減目標の設定やその実現のためのスキームを早く設けることを歓迎しているという。そういう変わり身の早さを日本の企業も得意としていたのになあ‥‥。

④検討委員会がまとめた6つの選択肢は基本的には技術進歩と、それを取り込んだ製品の普及策(設置義務付けや税制優遇・補助金など)がほとんどである。これまでの資源・エネルギー多消費型および経済成長優先の経済・社会・生活構造を基本的に保持するという前提に立っている。しかし、有限の地球資源のもとで、技術革新だけで気候変動のもたらす影響をなくしたり、適応したりすることは難しい。ライフスタイルの抜本的見直しやクルマから自転車へシフト、などが必要ではないか。今回の選択肢では、国民の多くは地球温暖化に対して、正しい理解と対策の重要性を認識しないままに終わるのではないか。

⑤6つの選択肢は経済モデルを使って計算したものだが、そのモデルについて、いくつか問題点があると知った。モデルは過去のトレンドをひきずっている。経済を大きく転換させるべきなのに、新たな政策の導入(例えば炭素税の導入)や内発的技術革新効果がモデルには反映されていない。また、主要な産業の生産量だとかが以前のままに固定されているので、経済金融危機の激変を踏まえた結果にはなっていない。そうした問題点があるにもかかわらず、6つのうちからどれかを国の方針としてコペンハーゲンで表明することになる可能性が高い(民主党政権に替わったら違うかもしれない)。

⑥ETC車なら千円で高速道路走り放題とか、凍結していた道路建設計画を復活したりとか、目下、日本国政府は国債大量発行で大盤振る舞いに狂奔している。いずれにせよ、このままでは、「環境立国」の名がすたる。

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