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2009年5月25日 (月)

労組も温室効果ガス削減中期目標で経営側と足並みを揃えるのか

 21日の新聞朝刊で1ページ丸々を費やした意見広告「考えてみませんか? 日本にふさわしい目標を。」にはびっくりした。スポンサーとして、産業別労働組合の名前が日本経団連や産業別団体の名前と一緒に載っていたからだ。

 経済・産業団体59と産別労組7との意見広告に名前を連ねた産別労組は電力、鉄鋼、化学、紙パルプなど、エネルギー集約型の産業に所属するところだ。

 全面意見広告の主張は、日本政府が近く決める中期目標で、2020年時点での温室効果ガス年間排出量を2005年比4%減(1990年比だと4%増)にすべきだというもの。6つの選択肢のうちで、削減幅が最も少ないケース(選択肢①)にあたる。広告では、「国際的公平性」、「国民負担の妥当性」、「実現可能性」が確保されるのはケース①だと言っている。この場合、米・EUの目標と同等の費用負担になると注記している。

 より削減幅を大きくすれば、「日本のGDPの減少、失業率の悪化、また可処分所得の減少や光熱費負担の増大等、社会経済に与える影響、家庭での費用負担も大きくなります」とも表明している。さらに、「現在の日本では、年金、医療、介護、雇用、地域経済等、多くの重要な課題があり、温暖化対策の負担だけが突出するのではなく、バランスのとれた政策が必要です。」と言っている。

 政府による国民の意見調査では、ケース③(2005年比14%減、1990年比だと7%減)が一番多いそうだが、意見広告では、このケース③を選択すると、ケース①に比べ、失業率が0.2%~0.3%上昇する、可処分所得が世帯ごとに年約4万~15万円減る、光熱費が13~20%増えて世帯ごとの負担増が年約2万~3万円になるなどと強調している。

 しかし、ケース①を選ぶのは、すでに、このブログで経団連について指摘したように、あまりに内向きの発想である。それに固執したら、ポスト京都の温暖化対策をぶちこわしにする恐れさえある。気候変動の影響を考えれば、日米欧の先進諸国は大幅な削減目標で合意する必要があるし、中国、インド、ロシアなどに思い切った環境対策を実施してもらうためにも、主要経済国かつ環境先進国の日本としても乾いたタオルをさらにしぼる努力、犠牲を払うことも覚悟すべきだろう。

 もちろん、国益を踏まえることは当然だが、日本経済がガタガタで、政治も混迷状態だから、ここで野心的な目標を掲げて、グリーン革命を先頭に立って実現するぐらいの気概が、いまの日本には必要ではないか。政府は相変わらず、外圧にどう対処するかではなく、世界をどう引っ張っていくか、という姿勢に転換してほしいものである。

 いま、日本はそうした大きな曲がり角にさしかかっている。それなのに、労働組合までもが企業と歩調を合わせて、内向きになっているのは明らかにおかしい。労働者は市民であり、生活者でもある。そして、地球環境保全については、万国の労働者、市民、生活者と共通の利害を持っている。それを認識し、他国の労組とも協議して、日本の労働組合としての独自の見解を打ち出してもよかった。

 企業内組合だから、企業側と歩調を合わせたわけではないかもしれない。しかし、はしなくも、日本の労働運動の歪みが今回の共同意見広告に反映されたようにもみえる。 

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