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2009年5月 7日 (木)

世界的な自動車再編劇の進行

 イタリアのフィアット社が、破産した米国のクライスラー社を手に入れようとしている。フィアットは米国GM社の欧州子会社であるオペル社をも買収しようとしている。欧州の自動車産業の中で、どちらかといえば競争力が劣るとみられていたフィアットが、米国ビッグスリーの危機をチャンスに世界的な主要乗用車メーカーに飛躍しようという挑戦である。

 中国の吉利汽車(本社は香港)もGM系列のサーブ社(スウェーデン)を買収しようとしている。吉利は先に米フォード・モーターズ社の傘下にあるボルボ社(スウェーデン)の買収をめざしたが、色よい返事がなかったといわれる。BRICSの中でもめざましい経済発展をとげつつある中国、インドのうち、一足先に、インドのタタ・モーターズ社が昨年、英国のジャガー社およびランド・ローバー社をフォードから買い取っている。米欧日の自動車メーカーが中心だった世界の自動車産業地図が塗り替わり始めた。

 ドイツでは、ダイムラー社とBMW社が共同購入によるコスト引き下げなどを目指して提携関係に入ったし、フォルクスワーゲン社は大株主のポルシェ社との統合を発表した。

 このように、世界の自動車産業は大掛かりな乗用車メーカー再編成の波に洗われている。その背景には次のような事情がある。第1に、世界同時不況で先進国の自動車販売が極度に不振に陥ったままであり、しかも自動車販売金融もあって収益的にも資金繰り面でも苦しいメーカーが多い。そのため、政府の金融支援などが米、独などで行なわれている。日本でも、日産自動車などが販売不振で資金難に陥り、日本政策投資銀行から融資を受けたりしている。

 第2に、これとは対照的に、中国、インドなどでは自動車に対する潜在的な内需が強く、タタが発売した超小型車「ナノ」のように注文が殺到し、売れ行きが好調なメーカーもある。それに、これらの国のメーカーはかつての日本の自動車産業発展期と同様に、国内、海外での事業拡大志向が強い。

 第3に、先進国では、昨年の石油の急激な値上がりや、地球温暖化問題を意識する消費者の増大に伴って、小型車へのシフトやハイブリッド車など環境対策車の選好が進行している。米国では電気自動車や燃料電池車への関心が高まっている。やたら石油燃料を食うSUVのような車を収益源とする自動車メーカーのビジネスモデルは過去のものとなりつつある。

 世界同時不況からいつ、どのような形で経済が回復するか、まだわからない。景気が回復しても、先進国の乗用車需要は以前の7、8割にとどまるのではないかとの見方が強い。また、企業買収や合併は企業風土の異なるもの同士なので、成果が出るかどうか、出るとしても年月がかかるだろう。ただ、中国、インドといった後発工業国のメーカーが世界の乗用車供給に大きなシェアを占めるようになるのは確実と見てよかろう。

 ところで、現在の世界的な自動車産業再編劇に日本の乗用車メーカーは参加していないようである。日産はルノーと一緒に動く可能性はあるが、それ以外は受身にせよ、話題になっていない。欧米の外資を買収し、使いこなすという点で、日本の企業は中国、インドの企業よりも遅れていると言うべきか。 

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