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2009年7月15日 (水)

忘れ去られた社会保障制度のむだづかい

 「骨太の方針2006」によって、政府・与党は社会保障費の毎年1兆円程度の自然増を毎年2200億円ほど抑えてきたが、2010年度予算に関わる「骨太の方針2009」ではこの抑制方針が消えた。民主党のネクスト経済産業大臣の増子輝彦参議院議員も「毎年2200億円の削減で、地域医療は疲弊し、医師不足問題も深刻化しています」(言論NPOの政策討論会での発言)と1兆円程度の社会保障費増を当然視している。

 7月14日の日本経済新聞朝刊「経済教室」においても、上村敏之関西学院大学教授が「少子高齢化で増大する社会保障費をどの財源で賄うべきかは、来る選挙で問われる重要な政策課題である」と記している。

 少子高齢化に伴い、医療費を始めとして社会保障費が増加し続けることは誰しもが認めるところである。しかし、日本の経済が停滞し、税収が伸びるどころか、当面は減る公算が大であること、一般歳出に占める社会保障制度の割合が突出して大きいことを考えると、社会保障費を自然に増えるがままに任せておくのではなく、不公正を正し、ムダをなくす工夫・努力をすべきだろう。

 医療を例にとれば、昔から「社会的入院」が医療費を膨らませてきた。そこに政府が本気でメスを入れたことはないのではないか。診療報酬は開業医中心の日本医師会の意向にそって決められてきた。したがって、病院のほうが割を食い、勤務医の給与および労働条件は開業医より不利である。開業医の診療報酬を引き下げ、その一部を勤務医に振り向けることも考えていい。

 保険診療報酬請求にあたって、カルテを電子化し、完全にコンピュータ化することになっているのに、いまだに医師会の抵抗が続いている。一部の病院や開業医は不正請求を行なっているとみられるが、電子化すれば、不正請求など異常な報酬請求を摘発しやすくなる。また、診療報酬請求を審査する厚生労働者傘下の公益法人について、かねてレセプト審査の単価が高すぎるという批判があるが、いっこうに変わらない。天下り先を護る厚労省の態度が審査費用の引き下げを妨げているのである。

 医薬分業により、都会では病院の周りなどに薬局が何軒も開業している。医師の処方箋にもとづき薬を販売しているが、薬代のほか、情報管理料、指導料などさまざまな費用を患者に請求する。別の薬局に行っても、同様な費用を患者は払わねばならない。医師から薬の効能や飲み方の説明を受けているので、薬局では薬を受け取るだけで十分なことが多い。薬代よりも、その他の費用のほうが多いこともある。違う病院・医師が出す薬の複合作用を避けるには、薬局ごとの情報管理では不十分だ。そこにも改善の余地があり、それが即、医療費削減につながる。

 医療の保険制度は組合健保、国民健保などいくつもあり、保険料だけでは足りなくて税金の投入を受けている保険もあれば、後期高齢者医療制度に多額の拠出(寄付)を余儀なくされている保険もある。複雑怪奇で、保険によっては、加入者が医療費のごく一部しか負担していなくても、すべて自分たちの保険料で運営されていると錯覚することにもなっている。その分、過度に医療サービスを受けることにもつながっている。

 日本の社会保障制度は我々、市民にはほとんどわからないようになっている。それがムダを生みやすくしている。社会保障費が増えて当たり前だ、という発想は、ものごとの本質を考えない怠慢そのものである。

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