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2009年8月12日 (水)

マニフェストの受け止め方

 総選挙の本番入りを前に、各党のマニフェスト(政権公約)が争点になっている。8月9日には21世紀臨調が主催したマニフェスト検証大会で、9つの団体が自民党と民主党のマニフェストに対する評価(点数)を発表した。9つの団体は、民間の各種シンクタンクのほか、経済同友会、全国知事会、連合などである。

 その中には、明らかに一方の政党とつながりの深い組織があったりするので、評価点数をそっくり鵜呑みにはしがたいが、概して点数が低いのは、マニフェストの中身に問題があるからだろう。すなわち、日本の今後を占ううえで重要な論点が欠けているとか、全体として整合的な政策体系になっていないという点である。さらには、何をいつまでに実現する、それに必要な財源はどうやって調達する、といった工程表を示さずに、やたらおいしい約束を振りまいていることもある。

 マニフェストを修正する政党も出てきた。一部の公約について批判の声が出たので、当初のマニフェストにうたっていた政策を引っ込め、公約を変更したわけである。絆創膏ではあるまいに、政党の公約をさっさと貼り替えるということは、党内で十分に検討したものではないばかりか、そもそも、きちんとした政策体系が欠如していることを意味しよう。

 自民党も民主党も、相当に細かい分野にわたって公約を書き連ねている。だが、細かく書けば書くほど、選挙民一人ひとりにしてみれば誰に投票するか、どこに投票するか、悩むことになる。この問題については○○党の政策がいいが、あっちの問題は△△党の政策のほうがいい、ということになるからだ。

 マニフェストの書き方の問題でもあるが、日本が直面する主要課題(少子化、社会保障、財政改革、安全保障、企業の国際競争力強化、地域主権など)についての大まかな改革方向を示すのが先ではなかろうか。それらのいずれも、一気に方向転換すれば混乱や摩擦を引き起こす。したがって、民主党が政権の座についても、拙速に舵を切るのではなく、細かく政治の実情を把握してから、マニフェストの実施に着手するぐらいの慎重さが望ましい。

 いままでの長い自民党支配がもはや賞味期限も消費期限も過ぎたことは多くの国民の実感するところだろう。マニフェストの中身のよしあしを超えたところで国民は自民党離れをしてしまっていると言えよう。いまも、政策や実行力などとは関係のない見てくれだけで好印象の候補者にムード的に投票する国民もたくさんいるだろうが、二世議員の多い自民党には、見てくれで投票したい候補者すら少ないのではなかろうか。

 民主政治において、マニフェストの果たす役割は大きい。しかし、マニフェストを過度に重視すると、政権の座に就いたとき、重要な情勢変化に即した政策の変更ができなくなる。それに、野党にしてみると、政権を握って初めてわかることが多々ある。マニフェストに反する政策をとることが国民にとってよいことになるかもしれない。

 ことしはマニフェストという言葉がメディアにしょっちゅう登場している。だが、マニフェストとは何かを知らないままにマニフェストが一人歩きすると、国民の不信を招きかねない。政党も、メディアもマニフェストと言う場合、もっと慎重でありたい。

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