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2009年8月15日 (土)

構造改革とは何だったのか

 民主党、社民党、国民新党の共通政策が発表になった。ここでも、「小泉内閣が主導した市場原理・競争至上主義の経済政策は、国民生活、地域経済を破壊し、雇用不安を増大させ、社会保障・教育のセーフティーネットを瓦解させた」と、いわゆる構造改革を槍玉にあげている。

 小泉政権が推進した構造改革という問題提起は、そんなに悪いことだらけだったのか。記憶が定かでないので、佐和隆光著『日本の「構造改革」』(岩波新書、2003年)を読み直してみた。以下、私なりの要約である。

 日本の市場経済は「人にやさしい」という利点を持つが、不自由、不透明、不公正に過ぎる。そこで経済の仕組みを自由、透明、公正なものに作り替えるのが同氏の定義にいう経済構造改革である。もっとも、自由、透明、公正の三つの公準がトレードオフの関係になることもあるから、どのように組み合わせるかが問われることもある。そして、ポスト工業化社会に移行するためには、「否も応もなく、日本型制度・慣行すなわち日本の構造を、抜本的に改革せざるをえない」としている。

 しかし、構造改革は必要にして不可欠だが、それだけでは十分ではない。なぜなら、市場改革一本槍だと、「倒産、失業、所得格差の拡大、公的な医療・教育の荒廃、犯罪率の高まり、将来への「不安」による自殺や精神疾患の増加、勤労意欲の低下、等々の悪しき「副作用」をもたらす」ので、弱者に住みづらい社会になるという。したがって、構造改革と同時に、平等な福祉社会をつくる「第三の改革」を実行すべきだと主張している。

 市場主義改革を最優先にすると、失業など「排除」される人々が生まれる。したがって、働く人の技能を高めること、すなわち、労働力の「質」の向上という「ポジティブな福祉」を目指すべきである。それが「第三の改革」で、経済成長に貢献すると指摘する。

 「ポジティブな福祉」の役割は、「自分という人的資本への投資の原資を提供すること」である。それはまた、福祉にお世話にならねばならない人をできるだけ少なくするために福祉を用いるのが、福祉財政の破たんを未然に防ぐ最善の策だという考えに基づく。

 著者は、小泉政権が進めていた構造改革は「財政改革に尽きる」と言い切っている。だが、「日本の構造はインサイダーにとっては快適きわまりないが、アウトサイダーにとっては不公正きわまりない」として、本来の構造改革の必要性を主張してきたという。そして、構造改革に伴う痛みを抑えるには、好景気のときに構造改革を実施すべきだと述べている。

 ところで、最近、「セーフティネット」という言葉にお目にかかるが、本書によると、サッチャリズムの福祉政策を指すのだそうだ。すなわち、「能力の乏しい人、生産性が低いような人には、働いてもらう必要はない。最低限の生活費を国が支給するから、セーフティネットの上で惰眠をむさぼっておいてもらったほうが、社会的コストは安くつく」というものだという。おもしろいと思った。

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