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2009年9月13日 (日)

目からうろこが落ちる書物『日本産業社会の「神話」』

 『仕事の経済学』などで知られる小池和男氏(元法政大学教授)がことし2月に出版した『日本産業社会の「神話」―経済自虐史観をただす』を読んだ。目からうろこが落ちるとはこのことだと思った。

 日本の社会には、三種の神器(年功序列、終身雇用、企業内組合)が戦後日本経済の発展を支えたという見方が強い。あるいは、会社第一主義とか仕事優先など、集団主義の社会だとも言われてきた。しかし、近年、それらの特殊日本的なものを米欧のように改めなければグローバルな競争に勝てないという見方が強くなっている。実力主義だとか成果主義の導入だとかはその表れだ。

 しかし、日本は特殊だというそうした通念が本当かを海外諸国と比較検証したのが本書である。こうした分野のデータも研究者もごく一部に限られているため、著者自身、慎重な言い方をしている部分もあるが、海外のあちこちで教えたり研究したりした成果を踏まえたうえでの問題提起なので、とても刺激的な内容である。その一部をピックアップする。

 米国に比べ、日本のほうがはるかに広い範囲の人に査定が適用されている。査定の結果は分散しており、日本における集団内の個人間競争の激しさを示唆する。

 日本人の仕事に対する満足度は、米国人に比べ低い。会社への愛着度も低い。仕事以外を重視する人の割合が高い。総じて会社をさめた目で見ている。

 米国のホワイトカラーのサラリーも勤続に応じた右肩上がりであり、定期昇給も広く普及している。世界の傾向は、高度な仕事は中長期重視のサラリーであり、それが社内資格給という長期重視のサラリー方式になってきている。それなのに、日本は短期重視へと逆行しつつある。

 米国では、生産職場の職長に残業手当てがない。当然ながら、その上の人たちも手当てがない。大学新卒の正社員も最初から残業手当てがない。西欧の企業のホワイトカラーも同様。米欧とも、記録なしの残業、“サービス残業”をしている。

 ドイツなど欧州の多くは、法律上は労働組合でないが、実態は労働組合と同様の事業所従業員組織(1つの事業所に複数あることもある)を、法律で経営参加の組織として認めている。したがって、企業はそれらの組織の専従者や事務職員の給与や事務所費などを負担している。

 第一次世界大戦後、日本経済をリードした繊維産業では、政府のおかげなどという「神話」は何ひとつ当たらない。経営と技術ですぐれていたからだ。日本は研究開発では圧倒的に民間主導で、政府の経費分担割合は欧米に比べとりわけ少ない。創造的な研究開発ほどリスクが高いから、長い期間をもちこたえるには政府のカネをもっと投入しなければならない。

 真に創造的な研究開発は失敗のリスクが大きいから、そのコストは企業などの組織がとるしかない。成功したら、その担当者にはそこそこの報酬、失敗してもなお少ないながら昇給するという仕組みが欧米の製薬会社やシリコンバレーでとられている。巨額の成功報酬をというのは日本だけの話だ。

 高度な仕事をこなす人材を育成するには関連の深い業務分野で広く経験を積まねばならない。それにはおおまかな技能、仕事能力を反映する社内資格給が必須だ。それも範囲給が欠かせない。 

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