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2009年9月29日 (火)

「派遣」についてのアデコ(日本)会長兼社長の話

 派遣ビジネスなどの人材サービスで世界のトップクラスにあるアデコグループ。その日本法人であるアデコ(株)のマーク・デュレイ会長兼社長の講演を聞いた。アデコのフランス、米国のビジネスと日本でのビジネスとを比較しながらの話は参考になった。

 3国とも、人材派遣ビジネスが売り上げの9割前後を占めるが、フランスは派遣の売り上げのうち86%が製造業だという。ちなみに日本では事務系の派遣が80%に達し、製造業は7%にすぎない。

 また、派遣による就業期間の平均をみると、日本が17.5ヵ月であるのに、フランスは0.5ヵ月と短い。フランスでは1日だけという派遣が26%で、2日~1週間の派遣が35%だという。そして、派遣スタッフの募集のやりかたが、フランスではもっぱら派遣会社の店頭に張り出される求人情報とのこと(日本の街の不動産屋が張り出している物件広告を想像したらいい)。パリなどでは街のいたるところに張り出されているという。ロンドンでも同様だそうだ。

 フランスでは均等待遇原則が1981年に立法化されており、派遣先の社員と同一労働同一賃金が認められている。加えて、同年に労働組合と派遣業界団体が締結した労働協約により、職業訓練や年金積み立てなどとともに、住宅ローンが組めるようになったという。

 さらに、失業保険の給付期間が過ぎても、あるいは保険に加入していなくても、国庫が全額負担して失業手当を6ヵ月給付する、という二重のセーフティネットが敷かれている。

 こうしたフランスや米国の雇用システムを踏まえて、デュレイ氏は日本について、次のような指摘をした。①いま論議されている方向だと、製造業は海外に移転し、国内は空洞化する。IT化などにより、同じ仕事を一生続けることはできなくなるから新しい能力を身につける必要があるし、親の介護などで毎日働くことはできなくなることもあるから、それに合わせた仕事が必要になる。

 ②労働者派遣法を変える前に、正社員を中心とした雇用システムを変える必要がある。雇用形態、年齢、性別による差別、格差をなくし、同一労働同一賃金に改めるべきである。社会保険には2ヵ月未満の業務であっても即、加入するようにさせねばならない。そのためには社会保険番号をもとに手続きを自動化すべきである。エンプロイアビリティを高めるために、誰にも職業訓練の機会を提供する必要があるし、労働者も「受けたくない」などとわがままを言わないようにさせなければならない。

 デュレイ氏の講演は流暢な日本語なので話がわかりやすかった。彼が本論から脱線して話したことの1つは、「正規雇用」と「非正規雇用」というのは正しくない言い方という点。法律を守っていたら「正規」である、正しくは「常用雇用」、「非・常用雇用」と表現すべきである、と。また、日本語の「人材派遣」(英語だとヒューマンリソース・ディスパッチ)と英語の「テンポラリー・スタッフィング」とは意味が違う、と。

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