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2009年10月27日 (火)

美辞麗句を連ねた鳩山首相の所信表明演説

 26日に鳩山由紀夫首相が衆参両院本会議で行なった所信表明演説文を読んだ。戦後日本を牛耳ってきた官僚依存の自民党政治に対して決別を唱えるとともに、国民生活を優先する行政・経済・社会の確立を主張している。、「新たな志と構想力をもって、成熟の先の新たなる飛躍と充実の路を見いだして」いこうという姿勢には共鳴するところ大だ。

 演説を部分的に取り出せば、すばらしいと讃辞を送りたくなることばかりである。「戦後行政の大掃除」、「国家公務員の天下りや渡りのあっせん‥‥を全面的に禁止」、「硬直化した財政構造を転換」、「国民のいのちと生活を守る政治」、「目指すべきは‥‥新しい共同体のあり方‥‥『誰かが誰かを知っている』という信頼の市民ネットワークを編みなおすこと」、「国民の暮らしの豊かさに力点を置いた経済、そして社会へ転換させねば」、「日本経済を自律的な民需による回復軌道に乗せるとともに、国際的な政策協調にも留意しつつ持続的な成長を確保することは、鳩山内閣の最も重要な課題」、「内需を中心とした安定的な成長を実現することが極めて重要」、「『地域主権』改革を断行」、「地方の自主財源の充実、強化に努めます」、等々。

 ただ、これだけおいしいきれいごとばかりを並べ立てられると、ちょっぴり眉に唾をしたくなる。少なからず、世の中の裏表を見てきた者としては、どうやって実現するのか、の表明がないと信用できない。金持ちの良家のボンボンが庶民の実態を知らぬがまま、新聞などで社会の矛盾を知って、観念的にこうやれば世の中が良くなる、「無血の平成維新」だと作文した程度のもののような気もしてくる。

 日本の将来がどっちの方向に行くべきか。その理念には賛成する。問題は、総論、各論を合わせた整合的な改革プランを打ち立て、推進するという点が欠けていることだと思う。

 このほか、首相の所信表明で疑問に思ったことを挙げると、1つは、市場(マーケット)を軽視ないし無視していることである。国債の大量発行で国債価格が暴落するのではないかという点に関して、菅直人副首相はオオカミ少年だと評し、気にする必要はないと言ったらしい。しかし、オオカミ少年のお話の教訓は、いつかは必ずやってくるということである。市場をばかにするのは大きな誤りである。

 それとも関係があるが、大企業への言及がまるでない。「経済合理性や経済成長率に偏った評価軸で経済をとらえるのをやめよう」という見方からだろうが、国民生活の豊かさの源泉である付加価値を創造するには、欧米やアジアの国々と同じように企業の競争力を高める必要がある。日本だけが社会福祉など内需中心で豊かさを維持できるという鎖国的な発想をしていたら、日本経済はスパイラルに縮小するだろう。日本には、大企業を敵視する風潮がいまだにあるが、それを助長する政策だと、大企業の日本脱出、中小企業の破綻続出という最悪の事態も起きかねない。

 「フリーランチはない」。その当たり前のことが所信表明には欠けている。国民には自主、自立の精神を持ってもらうことが絶対に必要である。お金で人の心を買うような政策は下の下だ。

 財政危機の実態はきわめて深刻である。「長く大きな視野に立った財政再建の道筋を検討してまいります」と悠長なことを言っておられる状況ではない。もちろん、いまの景気状況を踏まえて財政・金融政策が景気を下支えすることは不可欠だが、“借金”が膨らみ、将来世代に負担になるという事実を国民にしっかりわかってもらわねばならない。

 所信表明は甘い蜜に満ち満ちている。それは亡国への道筋になる危険をはらんでいる。

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