« 都道府県の債務は80兆円、市町村の債務は53兆円 | トップページ | 国家公務員の能力・業績主義評価が始まった »

2009年10月 6日 (火)

中国の労働事情を『階級のない国の格差』(増田英樹著)で知る

 「誰も知らない中国労働事情」の副題が付いた書物『階級のない国の格差』(増田英樹著、09年7月、教育評論社)を読んだ。中国については、貧富の格差がきわめて大きく、都市民と農民との戸籍(実質は身分)の違いによる格差や、沿海部などの都会に出稼ぎに来ている農民工がさまざまな差別を受けていることなどが知られている。

 中国の労働事情を紹介する本書は、中国には日本のような労働組合が存在しないことをはじめとして、日系企業が争議などに巻き込まれないようにするにはどうすべきか、などを述べている。

 同書によると、中国は社会主義の国だから、制度上、労使対立を前提とする労使関係なるものは存在しない。だが、賃金などに不満を持って山猫ストのような不法ストが起きることがある。そうしたストが起きたら、民主化運動などをおそれる政府や管轄の当局は労働者の側に立ち、日本企業には泣いてもらおうとするという。

 朱鎔基前首相の国有企業改革は鉄碗、つまり終身雇用を解体したが、その後の新しい労働契約法(08年施行)は終身雇用制を法律で定め、奨励している。一方、中国の労使関係には正社員の概念はなく、契約をベースとしている。契約切れで退職がスムースに行えるようにきちんとした評価制度をつくっておくことが重要である、と指摘している。

 同書の末尾にある「解説」は安室憲一大阪商業大学教授が書いており、中国の労使事情をコンパクトにうまく整理してある。それによると、もともと国有企業において、経営者側と労働者代表とが労働条件についての苦情を処理するときに社内の第三者委員会を介して話し合う。それが「工会」であり、工会は役員や社長はじめ全従業員が加入するというものだった。

 改革開放以降、「工会」を資本主義国の労働組合に見立てた。だが、朱首相の改革の結果、同じ企業の中に正規従業員と非正規雇用の農民工などが並存するようになり、非正規の従業員は「工会」によって護られないという「格差」が生じた。農民工などのブルーカラーが反乱を起こすと「工会」は無力化するという。

 安室教授によると、「世界の工場」というのは低賃金の委託加工にすぎない。だから、長時間労働など労働法を無視した労働強化が行われる。そこで、中国政府は委託加工モデルから労働者の熟練による高度製品の生産へと転換しようと考えているという。搾取をなくし、秩序ある法治主義の国をめざしていると指摘する。

 同書で、日本の労働組合と「工会」とは異質のものだとわかったが、日本における非・常用労働者の労働組合との関係と、中国の農民工などと「工会」との関係とは類似していることを知った。

 

|

« 都道府県の債務は80兆円、市町村の債務は53兆円 | トップページ | 国家公務員の能力・業績主義評価が始まった »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中国の労働事情を『階級のない国の格差』(増田英樹著)で知る:

« 都道府県の債務は80兆円、市町村の債務は53兆円 | トップページ | 国家公務員の能力・業績主義評価が始まった »