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2009年12月 5日 (土)

診療報酬引き上げは安易な発想だ

 全国知事会が医師不足に悩む地域の医療再生のため診療報酬引き上げを求めている。知事会のみならず、診療報酬引き上げをという声があちこちであがっている。しかし、診療報酬の約半分が人件費であるにせよ、1%とか2%とかの引き上げで医師不足が解消するだろうか。

 行政刷新会議のWGは、①病院に比べて高い開業医の診療報酬を引き下げて病院の診療報酬引き上げに充てる、②診療報酬が高い眼科、皮膚科などについて引き下げを行ない、小児科、産科などの診療報酬引き上げに回す、という方向を打ち出している。既得権益を奪われるところの抵抗は強いだろうが、最低限、これらをやりぬくことが政府の役割だろう。国の財政が最悪だから、八方まるくおさまる解決策はとりようがないことをわきまえねばならない。

 開業医はきちんと休日をとり、夜間診療をしないところが多い。一方、病院には患者がのべつまくなしに訪れる。それなのに、診療報酬は、診療所のほうが病院よりも高い。医師個人の収入も、病院の勤務医よりも開業医のほうが多い。労働条件で比較すると、開業医が病院の勤務医よりもはるかに有利である。これが医師不足の背景にある問題点である。

 かつてのように、国の財政が豊かで、保険料引き上げを国民が問題なく受け入れることができる時代なら、病院の診療報酬を診療所のレベルまで引き上げることが可能だが、未曾有の財政危機のもとではそれは考えられない。

 また、診療科目によって診療報酬の単価が異なる。医療過誤リスクなどを考慮しても、開きすぎている。このため、低い診療科の医師をめざす学生が減っているといわれる。したがって、高過ぎる科目の単価を引き下げて、低すぎる診療科の単価引き上げに充てることは妥当だ。

 来年の春闘にあたって、連合は賃上げ要求をしない方針を決めた。デフレで民間労働者はボーナスの削減は当たり前。年収が軒並み前年比マイナスになっている。そうした時期に医師不足対策ということで、もともと高収入を得てうらやましがられている医師がさらに年収アップするという話は、いかにも国民の多くの気持ちを逆なでする。診療報酬単価が据え置かれても、デフレのいま、実質は1~2%のアップに相当する。それらを考慮すれば、開業医から勤務医へ、高い診療科から低い診療科へ、というやりくりこそが合理的な解決だと思う。

 地域医療問題を解決するには、忙がし過ぎる病院の医師の業務を減らすために、看護婦に一部、医療行為を任せる、病院と診療所が連携して医療にあたる、など、さまざまな対策をとる必要がある。診療報酬を上げればことは解決するような幻想は許されない。 

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