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2010年1月30日 (土)

映画「マイレージ、マイライフ」を観て

 10数年前、東京で行なわれた米国の労働組合指導者のスピーチで、確か、米国の労働者の4人に1人が睡眠薬をのんでいると言っていた。同国では転職が盛んで、企業などは経営が悪化したり、人員過剰になれば、いとも簡単に解雇に踏み切るのが当たり前とされている。しかし、働く者のうち、少なからぬ人たちが、いつクビになるのかという不安におびえて眠れないのだということだった。

 日本では、第二次世界大戦後、大企業や中堅企業において長期雇用(終身雇用)が定着した。大企業では、労使協調を重視し、労務担当者の多くはその道一筋の、いわば労務のプロだった。労使交渉はお互いが相手の立場をわかってのやりとりであり、企業経営が悪化したときも、人員整理は最後の最後の手段であった。このように、10数年前の日本の労使関係は、米国とはかなり違っていた。

 しかし、日本経済の長期低迷で、大企業といえども、労務において米国型に移りつつあるところが増えている。労務担当役員に、労務を経験したことがない人が就くようになった。企業などの労務担当者が労使関係などを勉強するためのセミナーは閑古鳥が鳴くようになり、セミナーなどを主催していた協会が解散に追い込まれたりしているという。労使の団体交渉という対等な関係から、使用者側が労組の言い分を聞かず、一方的に経営方針を押し付ける上下の関係に変わり始めたという指摘も聞く。

 そうした変化の背景には、グローバル化や国内景気の低迷で企業経営に余裕がなくなったこと、他方で、労働組合の形骸化に伴い、働く人々の労働組合への関心が低下したことなどの事情がある。企業の業績が悪化すれば、非正規雇用を切り、さらに必要があれば正社員の人減らしにも踏み切りやすくなってきている。事実、NHKの報道によれば、「明日から来なくてもいい」と、いきなり解雇されるケースが起きている。

 映画「マイレージ、マイライフ」は、企業がリストラで解雇するとき、当事者である企業に代わって、労働者に解雇を通告するという“リストラ宣告人”の話である。解雇通告を受けたとき、誰もがショックを受け、怒ったり泣いたりする。解雇通告代行会社の社員である主人公は、新たな人生にチャレンジする機会だと解雇を前向きに受け止めるよう説得するのである。

 しかし、自殺する人もあるなど、仕事を失う人々の明日は決して明るくない。それがわかっているから、企業の労務担当者などは本来、自分たちがやるべき解雇通告を代行会社の人間にやらせる。クビ、というのはそれほど深刻なことだとわかる。

 もちろん、映画だから、米国において、実際に、どれだけ、そうしたやりかたが行なわれているのか、わからない。だが、仕事あっての暮らし、人生ということでは米国も日本も同じだろう。

 ところで、鳩山首相の施政方針演説(1月29日)は「はじめに」の最初のほうで「働くいのちを守りたい。」と言って、雇用の確保を緊急の課題と指摘した。そして、誰もが人との接点を持つ新しい共同体のあり方を考えていきたいと語った。まさに映画のインプリケーションである。

 ただ、首相はそこまでは考えていないかもしれないが、世界の動向をみたとき、正社員、長期雇用を保証しようという発想は時代錯誤だろう。それより、解雇されても、次の仕事に就くまでの生活を支え、かつ職業能力を高めることができる社会的な仕組みづくりが不可欠である。

 また、不思議なのは、施政方針で、いのちを守りたいと言いつつも、掲げる施策に必要な財源をどうやってひねり出すかが抜けている点である。しんどいことは、自分はやりたくないというのでは、映画の“リストラ宣告人”に委託するのと大して違わない。 

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2010年1月26日 (火)

政府の国家戦略室が財政再建策の検討会を発足

 政府の国家戦略室は25日に「中期的な財政運営に関する検討会」の初会合を開いた。財政再建の中期的な目標を設けるのと、11年度からの3年間の予算の大枠をコントロールする中期財政フレームをつくるのを目的としているという。検討会の組織自体は前政権までの経済財政諮問会議と似ているような気もするが、7月に参議院選挙を控えているため、検討会が財政再建策にどこまで具体的な内容を盛り込むことができるか疑わしい。

 とはいえ、2010年度末に、国の借金(国債、借入金、政府短期証券)が973兆円、国民1人当たり763万円にもなろうとしているのだから、政府が財政の健全化に本気で、かつ早期に取り組むことは絶対に必要だ。

 そうした取り組みを促すかのように、格付け会社のスタンダード・プアーズ(S&P)が26日、日本の長期国債のアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。その意味は、中期的(6ヵ月ないし2年)に格付けが下がる可能性があるということだ。

 S&Pの発表は「日本の経済政策の柔軟性が縮小しており、財政圧力・デフレ圧力を食い止める対策がとられなければ、格下げになる可能性があるとみて」いるという。

 日本はS&Pの格付け先ソブリンのなかで一般政府の債務負担がもっとも重いグループに属しており、しかも、いまの政権の政策では、財政再建がS&Pの従来の予想より遅れる模様だとしている。一連の社会政策は中期的な経済成長見通しの向上を見込みにくいものであり、根強いデフレ圧力を勘案すると、一般政府債務残高は今後数年でGDPの115%に達する可能性が高いという。

 S&Pは「高水準の対外純資産残高、準備通貨としての円の地位、世界的な金融危機に対する耐性を示した金融セクター、多様化された経済」といった強みを評価して格付けを据え置いたが、「重い債務負担と人口の減少に鑑み、経済指標が弱さを示したまま、中期的な成長戦略がとられなければ、格付けを1ノッチ(段階)引き下げる可能性がある」としている。

 政府は税と社会保障の共通番号制度の導入に向けて近く検討会をスタートさせるし、特別会計の事業仕分けなどでムダを排除するという。また、成長政策にも目を向け出した。こうした改革が打ち出され、国家財政の悪化に歯止めがかかれば、格付けは現在のままで安定するだろう。しかし、大盤振る舞いを優先する鳩山政権に財政改革が実行できるだろうか。そこが最も心配な点だ。

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2010年1月23日 (土)

2010年度予算(一般会計)に見る財政悪化

 政府が22日に提出した2010年度予算案の中身を見ると、税収が大幅に減るのに、子ども手当などで歳出規模が膨らむため、税収をはるかに上回る新規国債と、特別会計からの剰余金召し上げなど“埋蔵金”とでカバーしている。

 予算の規模は92.3兆円。歳入面は、税収が37.4兆円しかなく、国債44.3兆円、その他収入10.6兆円でまかなう。国債依存度は48.0%に達する。一方、歳出面は、国債費(元利払い)20.6兆円、地方交付税等17.5兆円、一般歳出53.5兆円である。一般歳出のうち、社会保障関係費が27.3兆円と半分ちょっとを占める。その中で、医療費が9.5兆円である。公共事業関係費は5.8兆円で、09年度当初予算より1.3兆円少ない。

 国債の累積で、10年度末の普通国債の残高は637兆円程度となり、10年度の一般会計税収の17年分に相当する。国民1人当たり約500万円に及ぶ。一般会計の利払い費は約9.8兆円だが、これは極端な低金利が続いているおかげだ。長期金利が高かった1991年度(6.1%)並みの金利水準になったとしたら、利払い費だけで40兆円を超す。税収をすべて利払いに充てても足りない計算である。

 国および地方の長期債務残高は10年度末に862兆円程度(うち地方は200兆円)となり、GDP比が181%に達する。日本の財政悪化の度合いは先進国で一番だ。

 このように、鳩山新政権の10年度予算によって、日本の財政危機はさらに深まる。その先に明るい展望は皆目、見えない。

 先日、水野和夫氏の記者会見を聞いた際、財政破綻について警告を発していた。「日本ではデフレと超低金利とが共存している。しかし、中国の元の自由化が10~15年先に起きると、日本からの資本逃避が起きて、日本の長期金利が上がり、財政破綻する。日本が財政破綻を避けるには、10年以内に新発国債をゼロにするという目標を早く出すべきだ」と。

 いずれにせよ、現政権がデフレ脱却と財政健全化との2つの課題を一緒に解決しなければならないという問題意識を持ってくれないと将来の展望が拓けない。国会は補正予算案に続いて10年度予算案の審議に入る見通しだが、与野党とも、当面の景気対策と中長期の財政再建策とを踏まえた議論をしてほしい。

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2010年1月20日 (水)

でたらめ?だった日航の財務諸表

 19日に日本航空が会社更生法の適用を申請した。企業再生支援機構の支援のもとで、速やかに再建を図るという。

 連結決算方式で見たグループの負債総額は2兆3221億円(昨年9月末)で、債務超過額はことし3月末見込みで8676億円に達するとのことだ。

 しかし、ちょっと待って。昨年3月期の連結決算を見ると、営業収益1兆9512億円、経常損失822億円、当期純損失632億円。総資産1兆7507億円、負債1兆5539億円、純資産1968億円である。そして昨年6月24日の監査報告書(新日本有限責任監査法人)によると、日航の連結決算の有価証券報告書は、経営成績などの状況を適正に表示しているという。

 また、四半期決算の発表資料によれば、昨年9月末現在の総資産は1兆6827億円、負債は1兆5235億円、純資産1593億円である。株主資本は2464億円である。

 ところが新聞報道によると、会社更生法申請の際に会社が発表した資料では、昨年9月末の負債総額が2兆3222億円となっている。また、ことし3月末見込みでは、8676億円もの債務超過になるという。この極端な数字の違いは何なのか。昨年9月末現在で、株主資本が2464億円あったのが正しければ、昨年10月~ことし3月の業績次第だが、今回の更生法適用で100%減資はおかしいことになるかもしれない。

 確かに、会社がつぶれると、いままで稼働していた資産(機械など)であっても価値がなくなる。解散価値でみたら、相当の債務超過になるだろう。しかし、日航の場合、事業継続が保証されている。しかも、一番大きい資産である航空機(7236億円)は古くなったものが多いとはいえ、営業が続くので、スクラップにする機材は限られるはずだ。年金積立不足をこの際、ある程度解消するのかもしれないが、いずれにせよ、過去に公表された財務諸表から推定する限りでは、突如9千億円近い債務超過になるのは理解しがたい。

 となると、考えられるのは、これまでの財務諸表がインチキだったということである。以前から、日航の決算は実態の悪さを隠す粉飾をしているという噂があった。しかし、監査法人は日航の決算が適正だというお墨付きを出していた。もしも、巨額の粉飾決算をしていたとしたら、日航の経営陣や監査法人の責任がきびしく問われよう。メディアはこうした点から日航の破綻を厳しく追及することも忘れないでほしい。

 日本公認会計士協会は「Justice for  Fairness(公正を求める心)」を業界の合言葉にしている。「数字の背景に経営の本質を洞察し、様々な経済活動の成果の姿を限りなく透明化し、独立した第三者としてその正しさを保証する」という。しかし、機構は厳格な資産査定をしたら、大幅な債務超過になるという。裏返せば、監査法人の監査は厳格ではない、いい加減なものだったと言っているのではないか。日航問題を機に、会計士業界は反省を求められるのではないか。

 日航にはたくさんの個人株主がいた。彼らが入手できた直近の決算データでは100%減資というペナルティを受ける理由はない。いまの情報開示制度のもとで、「株主責任」という言葉を安易に使って個人株主に責任転嫁を図るのは問題があると思う。

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2010年1月16日 (土)

低い新卒予定者の就職内定率

 厚生労働省の発表(14日)によると、大学や高校の今年春新卒予定者の就職内定率(大卒09年12月1日現在、高卒11月30日現在)はかなり低い。大卒は73.1%(前年比7.4%ポイント減)、高卒は68.1%(同9.9%ポイント減)である。高卒の求人数が17.5万人と前年より43.7%も減っているように、経済不振が最大の原因だと思われる。

 ちなみに、短大(女子のみ)は47.7%(同9.5%ポイント減)と、半分の学生しか内定がとれない。一方で、高等専門学校(男子)は96.9%(同1.1%ポイント減)であり、ほとんど不況の影響を受けていない。

 大学や高校を卒業しても、まともな就職ができない若者がたくさんいるのは社会の大きな問題である。卒業してすぐ就く仕事があるのとないのとでは、彼らの人生を大きく左右しかねない。まともな職場に入れば、あいさつの仕方、電話のかけかた、お客さんへの対応、仕事の進め方、組織人としての処し方、担当業務の基礎知識習得、等々、社会人としての基礎を座学やOJTで身に付ける。こうして基礎ができれば、転職しても通用する。しかし、まともに就職できず、パートなどを続けていると、よい仕事、収入になかなか恵まれない。

 若者は体力、エネルギーに満ちあふれている。その人たちが思うように働けないと、社会の損失であるばかりか、不満が鬱積し、犯罪、戦争といった危険な方向に走る心配がある。

 したがって、政府は雇用拡大につながる景気回復、経済成長に取り組むことが求められている。それとともに、長時間労働を減らし、若者をもっと採用するよう、年功序列賃金体系をもう少しフラットな賃金体系に修正するよう経済団体や連合などに要請したらどうか。経済界には近年、「企業の社会的責任」を自覚(?)した企業が増えているから、バブル崩壊以降に社会に出た世代に多少とも救いの手をさしのべるよう期待する。

 ところで、衆議院議員の石川知裕氏が政治資金規正法違反容疑で逮捕されたあとも、民主党の小沢幹事長は疑惑について、国民が納得するような説明をしていない。それなのに、鳩山首相は小沢幹事長を信じているとバカなことを言っている。民主党がこのように政治不信に輪をかけるような態度を続けていたら、失業者が多いなど不穏な社会情勢だけに、政治テロが起きるおそれがあるように思う。

 政府・与党は18日に始まる通常国会で2010年度予算などの早期成立をめざしているが、それならば、余計、鳩山首相が小沢幹事長の言い分だけを聞くような国民無視の姿勢を改める必要がある。

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2010年1月15日 (金)

小沢頼みの民主党は血迷っている

 政治資金疑惑で民主党の小沢一郎幹事長が検察に任意の事情聴取を求められているのに、拒否し続けている。同氏はメディアの取材にも応じず、沈黙を続けている。鳩山由紀夫首相は小沢氏について「二度と出ない個性を持った政治家。大変強い信念を持った政治家だ。政権獲得に大変な力を発揮してもらったし、これからも発揮してもらいたい」(15日付け日本経済新聞朝刊)と述べ、小沢氏の態度を是認している。

 また、同じ日経新聞の記事には、民主党執行部から「何が起きても幹事長は続投だ。ずっと検察と戦い続けたらいい。権力対権力の最終戦争だ」という声すらあがっているという。検察は正義の味方ではないし、政治的な動きをすることがあるが、小沢氏の政治資金をめぐる疑惑を解明するための捜査それ自体を民主党や小沢氏が非難したりするのは、民主主義のもとでの政党および政治家としては間違っている。

 前原国土交通大臣は15日、「疑惑に政治家自らがしっかり答えることが大変重要」と説明責任を強調したが、こうした正論がほとんど表に出てこない。前原氏のようなサムライが果たして民主党に何人いるのだろうか、とすら思う。

 民主党の新人議員の大半は、昨年の総選挙で当選できたのは小沢氏のおかげと思い込んでいるのだろう。政界の事情をろくに知らないから、小沢氏および取り巻きの人たちの指示にしたがって動いていればよいという段階かもしれない。以前からの議員も「物言えば唇寒し」で、小沢一派に干されることを恐れて、批判を口にしないといわれる。

 しかし、民主党の政権獲得は、民主党への積極的な期待もあったが、自民党にお灸をすえるという有権者の思いが強かったことは確かである。小沢マジックという見方よりも、自民党の「自壊」が政権交代を促した面がかなりある。有権者は民主党と自民党(?)が交代可能な二大政党制の実現を期待していたと思う。

 だが、現実の政治はそうした道を歩んでいない。敗北し、野党になった自民党は再生のための自己改革に手を付けておらず、凋落傾向にある。いずれ、野党再編の渦に巻き込まれる可能性がある。他方で、小沢氏らは自民党をたたきのめし、民主党の一党支配体制樹立をめざしている。

 政権誕生から100日を超えて、国民の民主党政権への支持率は落ちてきている。しかし、鳩山首相および小沢幹事長の政治資金問題や沖縄の米軍基地移転問題があっても、世論調査では、鳩山政権および民主党に対する支持率はまだまだ高い。それが、小沢氏らの強気を支えているように思える。

 では、透明性に欠ける、小沢幹事長ら民主党幹部が内閣を牛耳る“党高政低”状況にチェンジをもたらすものはあるか。それは、まず民主党や鳩山政権に対する国民の支持率低下が起きることが考えられる。支持率が下がれば、小沢マジックへの幻想が薄れ、彼の神通力が弱まる。

 社会民主党が政治資金の透明性を求め、それが通らなければ、連立政権から離脱するかもしれない。政権与党の一角に坐しても権力の魅力に取りつかれていないならば、である。

 そして、いま一つは、検察が自らの使命に徹して、小沢逮捕に踏み切ることだ。小沢幹事長に頼り切っている鳩山首相にしてみれば、指揮権を発動してでも逮捕を免れさせたいと思うだろうが。

 いまの民主党に必要なことは、民主主義国家における議会政治とは何か、を議員一人ひとりが考えて、自由に発言する百家斉放である。 

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2010年1月11日 (月)

沈む日本航空

 実質大幅債務超過に陥っている日本航空の再建策が大詰めの段階に来ている。普通の会社ならとっくの昔に倒産し、新会社で再スタートできたとしても、こじんまりとしたものになるだろうが、同社は政府のつっかい棒によって再生の道を歩むことになりそうだ。

 経営再建でいま論議になっているのが減資だ。企業再生支援機構などは100%減資を主張しているというが、一部には99%減資といった案もあるようだ。東証上場を維持するため、かつ、たくさんの個人株主の保有株式を紙くずにせず、将来にわずかの希望を残すため、である。

 私の記憶では、1960年代半ばごろまでは100%減資はせず、株主にかすかながら希望を残していた。100%減資して、株券がふすまに貼るしか何の価値もないようになったのは、その後のことだ。株式の本質から言えば、100%減資は当たり前だが、では、日本の株式・資本市場で株主がリスクに見合う配当などを受け取っているかというと、否である。グローバル化に伴う企業買収への不安から、にわかに株主重視に転じた日本企業もあるが、欧米に比べ、株主軽視は明らかである。これでは、日本株は上がらないし、間接金融から直接金融へのシフトもなかなか進まない。

 再スタートする新・日航のCEOに稲盛和夫京セラ名誉会長(77)の名が上がっているという。民主党を支援する経済人として知られる稲盛氏は小沢一郎民主党幹事長と親しいから、そうした線から出てきたのだろう。この話で、その昔、ジャンボ機が御巣鷹山に激突したあと、日航再建のために伊藤淳二カネボウ会長が日航会長にかつぎだされたことを思い起こす。

 伊藤氏は日航に一人で入り、再生に本気になって取り組んだが、社内外の勢力の抵抗のため、途中で追い払われた。そのときの伊藤氏よりも稲盛氏ははるかに歳をくっている。引き受けたとしても、難題が山積している日航を引っ張ることはまず不可能だろう。経営再建のプロ集団に全面的にゆだねるのがいいのではないか。

 ところで、日航といえば、長い間、大学新卒の就職志望先ランキングの上位にあった。特に、女子学生にとってはあこがれの職場だった。しかし、国策会社の状態が長く続いたうえ、航空行政のしばりが強いため、純粋の民間会社になっても、国際競争に勝てる経営体質にならなかった。社内の権力抗争、たび重なる合併(大きな含み損を引き継いだことも)、経営多角化の失敗、労働組合問題がそれに輪をかけた。

 知人などと話すと、日航への同情は聞かれない。社員は高給で、機長、スチュワーデスなど乗務員をハイヤーで送り迎えするなど、コスト意識が欠けているなどと言う。近年、実際にはかなり変わっているようだが、そうした一般の人たちの認識はなかなか変わらない。一方で、たくさんの賞を得た映画「沈まぬ太陽」は多くの観客を集めたが、観た人たちは日航にいい感情を持たないのではないか。

 正月の利用客数が全日本空輸と対照的だったのは、そうした一般の心情と、経営危機が安全に影響しかねないという顧客の不安とが響いたような気がする。日航を真に建て直すには、過剰な規制や政治家、官僚などからの介入をなくし、すぐれた経営のプロたちのもとで、社員が一致団結するようになることが求められる。

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2010年1月 8日 (金)

デフレを止めようと勝間和代氏が会見でぶった

 8日、日本記者クラブ主催の会見に登場した勝間和代氏は70分にわたって反デフレ論をぶった。日本では、いま女性が元気だといわれるが、勝間さんはまさにその代表的な人物だと実感した。

 デフレのしわ寄せは弱い立場にいる失業者や、若者や女性に向かい、彼らの雇用に深刻な影響を及ぼしている。日本の少子化問題や男女共同参画問題も、デフレでは決して解決しない。勝間さんは、デフレはモノに対しておカネが不足する状態で、企業活動、雇用などに対して百害あって一利なしだという。国の財政破綻を回避するための条件である、「名目経済成長率が名目公債利子率を上回る」というドーマー条件も満たさない。

 そこで、デフレを解消するには、通貨供給を増やし、日本経済が1~3%程度のインフレになるようにすべきだという。ものさしとなる物価指数はコアコアCPI(消費者物価指数)をとるべきだと語った。

 勝間さんは日銀の政策が国際的に見て歪んでいると指摘する。米英の中央銀行が通貨供給を3倍、欧州中央銀行が2倍に増やしているのに、日銀は5%しか増やしていない。円高も国際市場における円の不足によるものだという。そして、政府と日銀がデフレ克服のためのアコード(政策合意)を締結し、共通目標の設定および達成期限を国民に示すなどを提案している。アコードが実現できれば、半年でデフレは解消できるという。

 このほかにも、勝間さんの片言隻句は興味深いものがあった。「民主党もばらまきをし、既得権益と切れていない」、「欧米の中央銀行の幹部は経済学の博士号をとった人ばかり。日銀は法学部出身で欧米の金融の常識がわかっていない」、「内需依存は無理。35兆円の需給ギャップのうち、30兆円は輸出の落ち込みによる。経済回復は製造業を基本にすべきだ」、 「労働生産性が低い国は、同じ付加価値を生むために長時間労働になる。これが男女共同参画を妨げる最大の要因」。

 財政危機については、「日本政府はGDPに匹敵する480兆円もの金融資産を保有しており、国債残高からこれを引くと約300兆円。GDP比でみて、OECD加盟国の中程度であり、問題はない」。

 経済学者やエコノミストとは異なって、公認会計士、コンサルタントの経歴を持つ勝間さんは、ミクロつまり企業の段階から積み上げた議論をするから、マクロの視点だけの立論より現実味がある。それに、まま女性にみられるのだが、こうと思ったら、すぐ行動に移し、まっしぐらに進む。じかに話を聞いて、今後、要注目との感想を持った。

 

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2010年1月 5日 (火)

巨大邦銀の増資の金額には驚く

 日本経済新聞の5日付け夕刊に、三井住友フィナンシャルグループが月内にも8千億円規模の普通株増資を実施することで最終調整に入ったという記事があった。同社は昨年6月に約8600億円もの普通株公募増資をしたばかりだから、記事通り、新たに増資が行なわれると、わずか1年以内に株主資本として1兆6千億円余もの巨額を株式・資本市場で調達することになる。

 一足先に、三菱UFJフィナンシャル・グループは08年末と09年末とに合わせて1兆4300億円程度を普通株増資で集めたし、みずほフィナンシャルグループも昨年6月に普通株増資で約5300億円、調達した。国際的に活動する銀行には自己資本比率規制を強める流れになっていることが背景にあるからだが、邦銀のこうした増資には釈然としないものを感ずる。

 第1に、これだけ巨額の増資をすると、1株当たり利益などが希釈化され、既存株主の利益を侵害することになるのではないか。銀行側としては、自己資本を増やさないと自己資本比率規制の強化に対応できないという理屈があるのだろうが、株主の利益を守るという基本的な認識が経営陣に欠けているように感じられる。

 第2に、わずか1年以内に巨額の増資を二度も実施するという非常識である。三井住友で言えば、株主資本を1年以内で5割以上も増やす計算だ。これでは株式市場の足を引っ張る。失礼だが、ホリエモンのライブドアが手品のようなやりかたで株主資本を増やしたのを思い起こした。それと同列には論じられないが、行き過ぎた会社本位の態度には疑問がある。

 第3に、巨大邦銀は、図体だけはでかくなったが、いまもってグローバル化が遅れたままだ。国内の預貸業務中心というビジネスモデルは変わっていない。取引先の株式をいまだに大量に保有しているから、株価変動の影響を受けやすい。また、国債をたくさん抱えているので、今後、金利が急激に上昇したりすれば、国債暴落で大きな損失をこうむるおそれが大きい。

 信用秩序を保つため、政府・日銀は巨大銀行の破綻を避けてきた。また、証券、保険などの業務分野に銀行が進出するのを段階的に認めてきた。その結果、巨大邦銀は厳しい自己改革の努力を怠り、もっぱら国内の金融諸分野に手を広げて「お山の大将」になることをめざしてきた。このため、グローバルな競争力は依然弱い。

 三井住友は今回の増資資金を海外での企業買収に使うことを視野に入れているという。それが主目的なら、社債で資金を調達するという選択肢もあるのではないか。株式・資本市場を育成するうえでも、株主の利益を踏まえた経営が巨大邦銀に求められる。

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2010年1月 1日 (金)

元旦の新聞紙面

 元旦の午後、東京・池上にある日蓮宗大本山、本門寺に初詣に行った。本殿に参拝する人々の長い行列にびっくりした。こんなにたくさんの人が来たのは珍しいことではないか。新しい年を迎えたものの、日本社会の沈滞ムードを吹き飛ばす明るい材料がない。そこで、皆さん、苦しい時の神頼みということだろうか。

 例年、元日朝に全国紙を買いそろえて読む癖になっている。きょうも読売、朝日、毎日、日本経済、産経、東京の6紙に目を通した。いわゆる特ダネ記事で1面トップを飾るという紙面づくりはとっくの昔になくなった。経済活動が停滞を続けているため、あっと言わせるような大ニュースはきわめて少ないからだろう。これに対し、企画記事やキャンペーン記事が1面を大きく占める傾向がずっと続いている。

 ことしは「ガバナンス 国を動かす」(毎日)、「常識革命」(東京)、「ニッポン 復活の10年」(日本経済)、「日本前へ」(朝日)、「巨竜むさぼる」(産経)という連載が始まった。長期低迷にあえぐ日本だが、連載のいくつかは、混迷を脱する新しい芽があるよ、と元気づけるための読み物のように思われる。

 読売は1面トップに「小沢氏から現金4億円」を載せ、大きなスペースをとった社説で『「ニッポン漂流」を回避しよう』と訴えた。他紙とは違う紙面づくりである。

 第一部についてだが、各紙とも、ページを繰っていっても、さっぱり読みたくなるような記事にお目にかからなかった。社会面も同様に精彩がない。この国に活力がなくなっているのを反映しているのだろうか。とはいえ、新聞には、この国の窮状を脱する方向に手を貸す社会的使命があると思う。1面の企画記事のようなものを質量ともに充実してほしいものである。

 日本の国民にとって、目下の最大の課題は、日本経済の復活である。どうして日本経済だけが長々期にわたって停滞しているのか、どうすれば潜在成長力に見合う経済成長が可能になるのか。それすら、きちんと解明がなされていない。報道機関として、真正面から取り組んでほしいテーマである。

 昨年の元旦の新聞もそうだったが、今日の世界をトータルにとらえて、それがどこに向かっていて、どうしなければいけないか、を分析でき、かつ、わかりやすく語れる人がことしの元旦付けの新聞にも登場していない。大体の知識人とか学者・研究者は専門分野のことしか語れないので、そうした人たちの意見に頼っていては群盲象をなでるようなものである。

 苦しい時の神頼み?か。安上がりの時間つぶし?か。初詣でいろいろお願いごとを念ずることで、本当に救われるわけではないと思う。現実は失業率や生活保護者数などに見るように深刻さを増している。

 新聞の使命とは何か、それを現役のジャーナリストの皆さんに考えてもらいたいなと思う。1年前も同じことを思ったが‥‥。新聞の衰退を押しとどめるうえでも、それは大事ではないだろうか。

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