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2010年2月 7日 (日)

苦しみが続く民間企業に出口はあるのか

 日本経済団体連合会が出した「経営労働政策委員会報告」に、世界経済に占める日本、米国、中国の割合を示すグラフがある。1994年に、日本は世界の名目GDPの17.9%を占めていたが、2008年には8.1%と半分以下に下がっている。

 その間に、日本のGDPは約4.8兆ドルから約4.9兆ドルへと横ばい。世界の大勢とはかけ離れ、全くゼロ成長のままで来たことがわかる。

 こうした経済の実態を紹介したうえで、報告書は「経済再生は企業の活力を最大限発揮させることによってなし得る」と強調。「企業活力を高めるための政策を推進することで、持続的な経済成長が実現し、新たな雇用の創出や国民の将来に対する安心感の醸成につながることが期待される」と指摘している。

 野村資本市場研究所の関志雄氏は、「失われた20年」について、政府が衰退産業に巨額を注ぎ込んで守ろうとしてきたこと、効率性よりも公平性を保とうとしてきたこと、その結果、「社会主義色がますます強くなってきた」ことを挙げている(2月7日付け朝日新聞)。

 民間企業の経営の苦しさは随所に現われている。そのいくつかを示すと、第一に大企業の経営トップが病気になって退くケースが増えていることだ。経営環境が厳しく、出口が容易に見つからないうえに、早朝から夜遅くまで猛烈に忙しいため、心身ともに参ってしまうからだろう。

 長期雇用の中で下から上がってくる人が選ばれてトップになるという経営風土では、50歳前後の若いCEOは誕生しにくいし、先輩などに遠慮しないような経営の荒療治は難しい。ファースト・リテイリングやソフトバンクのようなオーナー的な経営者と比べると、日本の大企業はなまぬるい湯につかっているようなものだ。主要株主(金融機関など)も社外取締役も、大胆な経営改革を求めない。

 第二に、従業員が概して従順で、型破りな人間が減っているとみられることである。昔から、上司の言うことに素直に従わない者は嫌われ、出世しなかった。雇用情勢が厳しくなった今日、その傾向は強まっている。しかし、知的労働が付加価値の主要な源泉となった今日、むしろ、常識を破る創造的な仕事のできる、言い換えればチャレンジ精神の強い労働者こそが求められる。そうした人が起業家にもなる。

 グローバル競争に太刀打ちできる人材の育成には、従業員教育や、人を生かしも殺しもする組織運営のありかたまで見直さねばならないと思う。とともに、若者を育成する日本の教育も知的労働にふさわしいものに変えることが望まれる。そして、さらに家庭の育児のありかたも変革が求められるだろう。日本の社会も若者も、横並びや内向き志向になっているのを変えていきたい。本当は、そこで政治の出番だ。それなのに、いまの政治を見ていると、選挙で勝つためには何でもやるということしか考えていないようにみえる。

 輸出で助かる企業もあるにはあるが、日本の大半の企業は出口のない不安に直面しているし、そこで働く人々も同様だ。そして、政治も国民に希望を与えてくれない。その先に何が起きるか。

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