« しどろもどろの鳩山首相答弁 | トップページ | 市場金利の上昇は財政悪化を加速する »

2010年2月11日 (木)

『「改革」はどこへ行った?』(竹中平蔵著)から

 竹中平蔵氏と聞いただけで、新自由主義だとか、小泉改革で格差拡大をもたらした元凶だとかと毛嫌いする人がかなりいる。同氏が09年11月に出版した新著『「改革」はどこへ行った?』(東洋経済新報社)は、同氏が政治家としてやってきたことへの“いわれなき中傷”に論駁し、日本経済は規制改革を進めないと成長できず、財政破綻などに向かうと主張している。

 同氏および同氏と異なる見解を抱く経済学者、エコノミストが一堂に会して経済政策論争をじっくりと展開してくれると、われわれ国民に非常に参考になるのではないか。総合雑誌などの編集者がそうした問題意識を持っていないことは、日本の未来を考えるとき、憂うべき状況だと思う。

 引用してみたいところが多々あるが、その中からいくつか同氏の主張を以下に紹介すると――。

 政策には「Policy  to  help」と「Policy  to  solve」の2通りある。例えば、失業者が増えるのは日本の企業の国際競争力が落ちているからで、競争力を回復させ、経済を成長させることが根本的な唯一の「solve」(解決)である。失業者を出さないように企業に補助金を出したりするのは「help」であり、その結果が「失われた10年」などである。今年度、来年度も「help」で大きな予算を組むと、財政赤字がどんどん膨らむが、経済はいっこうに強くならないという状況が続く。

 霞が関は非効率な企業にカネを与える「help」で官の領域を拡大させている。しかし、弱体化し、企業規模も世界的にみると小さくなった日本企業を集約し、強くするのが目指すべき方向である。

 霞が関は補正予算などを大きくし、使い切れないのでたくさんの基金をつくったりしたが、国民にカネを使ってもらおうというのなら、減税をすべきである。

 中途半端な民営化が既得権益者にとって一番都合がいい。郵政民営化では郵政ファミリーなどが喜ぶように中途半端な民営化に改悪しようとしている。

 地方自治体は財政が苦しいと言うが、高過ぎる地方公務員の給与を下げた自治体がいくつあるのか。下げないで、病院など切りやすいところから閉鎖・縮小している。

 これからも小さな政府を目指すという方向性を掲げ続けることが必要である。それは、消費税を十数%でとどめるか、25%以上に引き上げてしまうかの選択である。

 ワイドショーで政策評論する人で、実際に政策に携わったことがある人はいない。問題がどんどん難しくなっているのに、コメントする人はアマチュアなので、非常に幼稚な政策論議になっている。民営化で、郵便局ネットワークが破壊されたなどというが、全くの誤りである。実際には、郵政公社の4年間、毎年約50局の郵便局が閉鎖されたが、民営化されてから1年半のあいだに閉鎖されたのは1局だけである。

 地方分権を実現するには、地方自治体が自らの財源を持たねばならない。それには地域偏在のない消費税がふさわしい。消費税を社会保障財源とする、いわば実体的に社会保障目的税とする議論があるが、それだと、消費税は永遠に国税となる。霞が関は本心では地方分権をやる気がないのではと考えられる。

 日本経済を強くする政策として5つを提案する。①法人税減税、②ハブ空港・オープンスカイ、③東京大学民営化、④農地法改正、⑤インフレ目標の導入。

 改革を進め、経済を強くするには国の政治のリーダーが重要である。リーダーとなる人が政策の旗を掲げて行動すれば、政界再編が起こる。時代がリーダーを生みだす。時代がリーダーを求め、それに応えて大舞台で大化けする政治家が出てくるのだろう。

 ――共感するところもあるし、首をかしげるところもあって、この本はなかなか読み応えがあった。 

|

« しどろもどろの鳩山首相答弁 | トップページ | 市場金利の上昇は財政悪化を加速する »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/47542455

この記事へのトラックバック一覧です: 『「改革」はどこへ行った?』(竹中平蔵著)から:

« しどろもどろの鳩山首相答弁 | トップページ | 市場金利の上昇は財政悪化を加速する »