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2010年3月28日 (日)

シンポ「ワーキングプアを成長の原動力に転換させるには」

 「若年層を中心とした雇用、貧困対策を考える―ワーキングプアを成長の原動力に転換させるためには―」というシンポジウムが27日、東京で開かれた。東京市政調査会と日本経済研究センターの共催である。日本経済研究センターで昨年11月に提言をまとめたのを受けて、同センターの特別研究員(東京市政調査会の研究員でもある)と内閣府、京都府、連合の担当者が出席して議論した。

 昨年の提言は、①生活保護制度の解体・再編を中心に社会保障制度を改革し、ハローワークと福祉事務所の統合など行政組織を再編すべきだ、②若者自立支援事業や省令等による福祉施設に対する国の補助にはムダが多いので、効率的な配分をすべきだ、③公的な支援に基づく社会的企業を設立・育成して雇用を創出する―といった内容である。

 生活保護制度についていえば、生活支援として失業扶助と給付付き税額控除を導入し、給付の基準や実施等は国が行い、自立支援策という福祉サービスは自治体が行う、としている。また、職業紹介にからんで西欧などにあるパーソナル・アドバイザー制度の導入を求めている。失業者1人ひとりに特定のアドバイザーを付けて就職支援を行うものである。

 報告書の内容は日本経済研究センターのホームページに掲載されているから一読をお勧めしたい。

 シンポジウムでは、内閣府の山崎史郎・政策統括官が「いまの社会保障は高齢者中心。企業が社会保障の役を果たしていたのがなくなったため、若者の貧困・困窮者支援が大きな課題になっている。最近は新卒者の就職支援が深刻な問題になっている」など、政策課題への取り組みについて述べた。地域の雇用戦略については雇用・産業・文教政策の統合運用の重要性を挙げた。

 その点で、京都府商工労働観光部の山口寛士・雇用政策監が京都府・連合京都・京都経営者協会の三者共同で運営している総合就業支援拠点「京都ジョブパーク」を紹介したのは参考になった。「雇用と福祉が表裏一体になった」と言う山口氏は、ワンストップサービスで、相談窓口に行けば、カウンセリングや研修などから職業紹介まで行い、就職後のフォローアップまでも実施しているという。そのほかにも高校新卒未就職者緊急支援事業などいろいろ工夫している。他の自治体には参考になるのではないか。

 連合の山根木晴久・非正規労働センター総合局長は「労働者は日本を支える唯一の資源」なのに「労働市場の縮小と人材の劣化とが悪循環になっている」と指摘した。連合はアンケートと聞き取りとによるワーキングプア実態調査を実施し、現在分析中とのことだが、同氏は実態調査から見えたものとして、ワーキングプアになる原因を次のように述べた。

 ①家庭環境(貧困、離婚、病気などによる家庭の崩壊、および地縁・血縁からの断絶)、②教育機会からの排除または逃避、③都心一極集中(家賃など高い生活コスト、親元に戻りたくても戻れない)、④細切れ雇用(簡単にクビになるとか、長続きしない、なじめない)、⑤セーフティネットの不備の5つである。山根木氏も指摘したことだが、セーフティネットをきちんとするだけでは、ワーイングプア問題の根本的な解決にはならない。

 報告書作成にあたった五石敬路日本経済研究センター特別研究員は「地域がもっと新しい制度、雇用を作り出すようになってほしい。地域では議会が動かないが、もっと関与したらおもしろい動きがみられるのではないか」という趣旨の発言をした。

 また、内閣府の山崎氏も新卒者の就職難について「負のスパイラルに入った人を元に戻すのは大変。しかし、地域が育てれば、プラスになる。地域に、人の育成・教育に力を入れてもらうことが必要だ」と、地域への期待を述べた。

 山根木氏から、自治体による官製ワーキングプアについての指摘もあった。2時間のシンポジウムを聞いて、地域がもっと果たすべき役割があるという印象を受けた。

 

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2010年3月26日 (金)

役員報酬は高い? 安い?

 金融庁は23日、企業内容等の開示に関する内閣府令の改正を公表した。3月31日以後の事業年度、つまり2010年3月期決算の有価証券報告書から適用になる。

 上場会社の役員(執行役員も含む)は会社からもらう報酬(賞与、ストックオプション、退職金を含む。連結子会社からの報酬も含む)を1人ずつ開示することになるが、但し書きで、1億円以上受け取った役員の名前だけに限って開示することが認められている。

 役員1人ひとりの報酬の開示を求めた内閣府令で思い出すことがある。いまから40年ほど前の話だが、日新製鋼の社長宅に取材で夜回りしたことがある。杉並区だったかの住宅街にある、やや大きめの二階家だった。想像していたような豪壮な邸宅ではなかった。でも、後日、その社長は「社長の家は、社員が将来、社長になって、あんな家に住みたいと思うようなものでなければならない」と私に言った。

 また、その頃、石川島播磨重工業の社長に聞いた話。当時、ソ連から来たミッションの代表が社長の報酬をたずねた。そこで社長は「新入社員の7倍ぐらい」と答えた。そうしたら、ソ連人は「それは絶対に嘘だ。そんなことはありえない。ソ連でさえ、はるかに多い。あなたは30倍以上もらっているに違いない」と言ったそうだ。

 第二次世界大戦前の日本企業では、役員の報酬はいままでの米国のように非常に高かった。しかし、戦後のパージで突然、社員から役員になった人たちの役員報酬は幹部社員よりちょっと多いだけだった。もっとも、交際費がふんだんに使えるなどのフリンジ・ベネフィットを大いに享受できた。

 しかし、近年の経営者は強いリーダーシップを求められる一方、フリンジ・ベネフィットは少ない。その割に、役員報酬は米国や西欧と比べ相当低い。だが、経営のプロとしてよりも、社員の中から階段を上がって役員になるというのが日本の企業社会だから、そこでは、日米の役員報酬格差に対してあまり違和感がないように見受けられる。

 そうした企業風土のもと、今回、内閣府令の改正で、役員報酬の個別開示の方向がはっきりした。情報開示が進むことに基本的に異論はない。ただ、一律に強制するのではなく、各企業の株主が必要だと思ったら、株主総会の議案にするといったやりかたの積み重ねのほうが穏当である。嫉妬、やっかみの強い日本社会で1億円以上の報酬を受け取っていると公表されると、本人だけでなく家族も、他人からいやみを言われたり、寄付を迫られたりといったことが起きかねないからである。

 役員としての能力、高密度・長時間労働、責任等や、業績向上への貢献等を考慮したとき、国際的に見て1億円どころか10億円でもいい、高額の報酬をもらってもおかしくない経営者がたくさんいるほうが日本経済の発展につながる。また、若者にビジネスでの夢を与えることにもなる。それなのに、会社の規模などを抜きに、一律に1億円以上という開示基準を設けると、会社や仕事の中身に関係なく、1億円以上の報酬はもらいすぎているといった奇妙な判断基準が定着しかねない。 

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2010年3月25日 (木)

一般・特別会計予算の純計は215兆円

 2010年度の国家予算が決まった。政府が1月に国会に提出した予算案が全く修正なしに09年度内に成立したのを鳩山首相以下の閣僚が喜んでいたが、何ともしらける感じだ。

 完璧な予算なんてありえない。衆参の予算委員会で長々と審議(?)すれば、おかしな点、改めたほうがいい点、などが浮かび上がる。そして、審議の結果、よりよい予算案に修正されると思うのが常識である。

 ところが、鳩山政権は予算案の手直しに一切応じなかった。マニフェストで約束したようには財源をひねり出すことはできなかったのに、子ども手当など、ばらまくほうはほとんど抑制しなかった。税収よりも国債新規発行額のほうがかなり多いという、財源を考慮しない予算編成はどうみても異常だが、予算審議でその点を指摘されても、数の力で押し切れるという姿勢で臨み、事実、そうした。

 このように、鳩山政権は国会での予算審議を単なる儀式としかみなさなかった。首相はじめ全閣僚が出席して、ただただ無駄に時間をつぶすというのは税金の無駄遣いもさることながら、民主党の名にふさわしくなかった。議会政治の空洞化はきわめて危険だ。

 成立した2010年度予算は、一般会計が92.30兆円(09年度は補正を含め106.85兆円)、特別会計が367.07兆円(同359.97兆円)である。単純合計は、459.37兆円(同466.82兆円)。重複を差し引いた純計では215.07兆円(228.28兆円)となった。

 内国債の10年度末見込み額は771.22兆円で、09年度末見込み額731.60兆円よりも約40兆円増える。08年度末と比べると実に約90兆円多い。世界的な経済危機という事情があったとはいえ、国債に大きく依存し続けるのはストップしたい。財政危機に直面したギリシャなどの財政対策を見習うべきである。

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2010年3月24日 (水)

ひどすぎる郵政見直し策

 亀井郵政担当大臣、原口総務大臣が24日、政府の郵政事業見直し策を発表した。いまのままでは経営全体の先行きが厳しいので、収益が比較的いい郵貯と簡保の事業を完全民営化せず内部に残して拡大するとともに、グループ内部の取引にかかる消費税を免除するという形で財政補助するというものだ。官業の露骨な保護拡大しか頭にないような内容には驚いた。

 さすがに、鳩山首相はこの見直し策の修正をほのめかしているし、他の閣僚からも異論が出ているという。当然だろう。鳩山政権は連立政権のせいもあって与党内で対立したり、また民主党として参院選挙の勝利をめざして露骨な利益誘導をやっていることもあり、改革志向が薄れて国民をがっかりさせる。どうも旧自民党政権との違いが定かでなくなってきたようにみえる。

 郵政事業見直し策は郵貯の預け入れ限度額をいまの2倍にするという。簡保もほぼ同様に拡大するという。しかし、本来、少額貯蓄を預かるはずの郵貯が、どうして2000万円までも預かるような金持ち優遇をするのか。その説明なしに、拡大を認めることはできない。まして、いまでも国債中心にしか運用できないのに、資金量がもっと増えたとき、どう運用するのか。増える国債新規発行の消化先にするつもりかもしれないが、そんなことをしたら、財政規律がゆるむ。また、民間企業の資金調達を難しくしてしまい、経済成長を阻害する。

 先日の記者会見で、亀井大臣は、高給をはんでいる天下り郵政OBを整理する、日本郵政グループの事業から利益を吸い取っているファミリー企業のうち不必要なものは切る、随意契約をやめさせ、競争入札に改める、などと述べた。24日に発表された事業見直し策はそうした改革に触れていない。改革は口から出まかせだったのか。あるいは法律改正とは別の話ということかもしれない。だが、これらの改革をやることで、どれだけ収益が改善されるかの試算が発表されていたら、郵政事業見直し策の中身も変わった可能性があるし、もうちょっと説得力があったかもしれない。

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2010年3月22日 (月)

法人税率引き下げに大塚副大臣が言及

 大塚耕平内閣府副大臣がテレビ朝日の番組で、参議院議員選挙のマニフェストで法人税率引き下げに言及したほうがいいとし、引き下げは少なくとも30%を切るところまで持っていきたいとの考えを述べた。「供給」側に対して無関心だった鳩山政権だが、最近は鳩山首相が国際的にみて高過ぎる日本の法人税率の引き下げに意欲をみせるなど、経済力強化の方向へ転換してきた。大塚副大臣の発言も、そうした流れに沿ったものだろう。歓迎したい。

 一方、大塚副大臣は消費税率引き上げについては、次期衆議院議員選挙までに議論すべきだとし、引き上げる場合には「10%台の半ばのどこかで決めないといけない」(22日付け日本経済新聞朝刊)と語った。仮に15%だとすると、いまの税率より10%アップとなる。軽減税率などのない一律アップ%だと、それによる税収増は単純に計算すると、年間25兆円前後になるだろう。当然、大塚副大臣は法人税率の引き下げによる税収減を考慮して発言していると思う。

 しかし、いきなり消費税を10%前後アップするのは政治的には極めて難しいのではないか。とすると、段階的に上げることにならざるをえまい。そうであれば、急速な財政悪化に歯止めをかけるために、いまから消費税の引き上げを参議院選挙のマニフェストに入れるのが政治家の良心だろう。おいしい話ばかりしておけば、選挙民は投票してくれると言わんばかりの民主党の姿勢には、「国民はバカだから」という蔑視がうかがえる。まことに不愉快である。

 話は変わるが、鳩山首相、小沢幹事長、小林千代美議員という民主党の政治家の政治資金疑惑に関して、3人とも「知らなかった」と判で押したような言い訳をしている。これなども、「知らなかった」と言えば、国民が皆、信じると思っているのだろうか。国民を愚弄するのもほどほどにしてほしい。

 週刊誌『アエラ』の最近号が「社会主義化する日本」という特集をしている。読むと賛成することが多いが、個人的に気になるのは、政治を支配する層が民衆をバカにしている点で中国と日本が共通していることだ。 

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2010年3月20日 (土)

日本郵政の非正社員→正社員化についての亀井大臣発言

 日本郵政グループは20万人を超える非正規労働者の正社員化を進めようとしている。正社員を上回る人数ともいわれる非正規労働者はローテーションにも組み入れられ、賃金は正社員の3分の1にすぎないとされる。この正社員化に関する亀井静香郵政・金融担当大臣の発言は興味深い。

 16日の記者会見で、亀井氏は人を安く使って、それが原価だというのは間違いだとして、「斎藤次郎日本郵政社長が日本のあるべき雇用形態のモデルをつくるべく努力してくれている」と語った。

 日本郵政グループでは「郵政OBがファミリー企業に張り付いて高給をとっている。そういうものを整理しなければならない」、「非正規社員は彼らの犠牲になって、安い給料で働かされているし、ノルマも課されている。日本郵政は年賀状販売のノルマを果たさないと非正規社員の雇用契約を切っている」などと指摘した。

 さらに「一部の正社員を守るために非正規社員が犠牲になっている。労働組合がおかしくなってしまっているのです。そういうものを直していかないとだめですね」とも言っている。

 また、日本郵政のファミリー企業について「小判鮫のように張り付いている企業が利益を吸ってしまっている。必要な企業は子会社にする、そうでないものは切ってしまうと、斎藤社長とも話している。いま、その選別に努めている」、「ファミリー企業とは随意契約だから、そこがもうかる。利益が吸収されていく。契約方式を変えないといけない」、「道路公団も同じだった。私は全部、競争入札にした。しかし、民営化したら、また随意契約に戻って、利益が契約企業にザーと行っている」といった趣旨のことを述べた。

 亀井氏は、資材の調達についても、中央で一括調達するのをやめて、各地方で調達するように変えると言っている。

 こうした亀井氏の方針について、原口一博総務大臣は「人間らしい働き方をめざすという考え方と同意見だ」とし、「正社員化で仮に年3千億円かかったとしても、それをしっかりと賄えるような経営体質を目指していくのを期待する」と語っている。

 郵政民営化は「自民党をぶっ壊す」という小泉改革の核であり、事実、今日みられるように自民党を事実上、崩壊状態にまで追いやった。そうした政治的な意味合いはさておき、郵政事業がさまざまな利権のかたまりであったこと、金融政策の外に巨大な金融機関が存在し、資金の非効率な運用がなされていたこと、など、改革が必要だったことは確かだ。

 その改革が始まったところで逆の流れになり、民主党中心の鳩山政権のもとで、国営事業としての道をたどり始めた。それが国民経済にとって本当に望ましいのかどうか。亀井氏の指摘にうなづける点もあるから、マクロ経済、ミクロ経済の両面から、多角的な再検討が必要だと思えてきた。

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2010年3月18日 (木)

子どもを国の資源として期待するデンマーク

 「さしあたり利用できる資源を持たない国だけに、子どもたちが人材として国の資源になって行くことを期待し、またそれが大人の役割である事にそれぞれが気がついている」―高福祉国家デンマークの実情について、同国在住の高田ケラー有子さんがJapan Mail Mediaの3月16日付け[JMM575Ex]で、主に子ども手当と子育て支援に関して紹介してくれている。

 18歳未満の子どもを持つ母親に、国が子ども手当を出している。年齢階層によって額が異なるが、一番多い0~2歳だと月額が日本円換算で約2.4万円、7~17歳だと約1.5万円だそうだ。学校は大学まで無料。出産に関わる費用の個人負担はゼロだという。出産後の母親が育児ノイローゼにならないような工夫、仕組みがつくられている。

 生後6カ月から保育園、デイケアマザーに預けることができる。3歳児から公立幼稚園に預けることができる。一部には施設不足もあるが、自治体政府は何とか市民の要望に応えるようにしているらしい。

 同国では、国民が有給休暇を1年に最低5週間とるよう義務付けている。親が子どもの学校の休みに合わせて休暇をとれない場合、親が子どもを職場に連れていっても文句を言われない。

 また、電車やバスに大きな乳母車を持ち込める。身障者の車いすや赤ちゃんのバギーのための「welcome車両」がある。

 同国の高福祉社会は、子どもが好きで、かつ大切にする国民性と男女平等の意識が強いことによるが、もう1つ、多額の納税負担が支えていることを忘れてはならない。平均的な所得税率は46%、消費税率は25%だという。デンマークの高福祉社会は高い税率という高負担があってのことである。

 高田さんの記事で教えられる1つは、日本の社会には子どもを国を支える資源として大切にする意識が不足していることである。子殺しの事件がひんぱんに起こるのは異常な社会である。子どもの幸せを中心に、日本の経済社会や労働、暮らしのありかたを見直す必要がある。

 もう1つは、日本政府が始める子ども手当の金額はデンマークよりも多いのに、日本の消費税などの税負担がはるかに低いことだ。子ども手当の導入はデンマークなどを真似たものだろうが、大幅な増税などで財源をきちんと確保することも合わせて学ばなかったとすれば、政治家はお粗末きわまる。

 

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2010年3月17日 (水)

日銀の新型オペ拡大

 日本銀行が17日の金融政策決定会合で、昨年12月に始めた金融機関向け新型オペを10兆円程度拡大し、20兆円程度にすることを決めた。期間3カ月、年利0.1%の固定金利である。市中資金を増やし、金利の引き下げを図るためという。

 菅直人副首相兼財務相ら政府は日銀にデフレ対策に協調して取り組むよう求めている。政府は国債をもっと買うことを望んでいるようだが、それを避けたい日銀は、代わりに協力の姿勢を示すために、今回のオペ拡大に踏み切ったのだろう。

 しかし、日本経済がひとり長期低迷を続けている状態は、こんなことでは変わりそうにない。銀行が預金を貸付に充てる割合は下がってきており、国債の保有を増やしている。そういうときに、新型オペの拡大で金融機関の融資が増えるとはとても考えられないのである。

 先頃、中前忠氏(中前国際経済研究所代表)が日本経済新聞に書いた景気対策の主張は、デフレの主な国内要因として過剰な供給力、競争過多を挙げている。バブル崩壊以降の財政金融政策は製造業などにおける過剰な供給力を存続させ、日本経済の長期停滞を引き起こしたとみる。

 この過剰な供給力を整理する一方で、国内産業の育成に必要なのは規制改革であると同氏は述べる。「必要な施策は財政支出を減らし、非製造業を中心に民間経済を拡大することであり、金融の過剰を削減し、金利機能が働く水準まで金利の正常化を図ること」である。「規制改革によって、資源配分をより市場機能に委ね、硬直化した国内の非製造業を解放し、他方で、金利機能を復活させることが何よりも重要なのである」(3月5日付け日経「経済教室」)。

 金利の上昇は過剰の整理を促進し、貯蓄を持つ家計の支出を高める。そこは中前氏が繰り返し強調してきた点である。

 中国などアジア諸国の経済の活況ぶりに日本経済が貢献し、依存する一方で、内需型産業をもっと活性化し、発展させることがこれからの日本の生きる道だと思う。日本政府も日銀も、そのあたりをもっと詰め、デフレ脱却の望ましい処方箋を書いてほしい。

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2010年3月14日 (日)

「動物園生活が長くなると、ジャングルでは生きていけない」

 12日に東京経済大学主催の「次の10年」を考えるシンポジウム「東アジア時代の日中経済」(東京・六本木ヒルズ)を聞いた。中国経済が急成長を続けているのに対し、日本経済は停滞したまま。その違いが論議のテーマの1つになった。

 安斎隆セブン銀行代表取締役社長は「市場経済は失敗を伴う。そこで公(おおやけ)が出る。立ち直ったら、また市場経済に戻す。それが市場経済だが、日本では、失敗を認めないし、対策もチビチビとしかやらない。そのため、経済が活力を喪失する」と述べた。それに加え、「公の介入が長期に、固定的に行われるので、皆、公の介入を待つようになる」、「国債を減らす、低金利を上げるのが必要」、「不平等是正は最初は同世代間でだった。それが大量国債発行に依存して、後世代に債務を残すようになった。いまからでも遅くはない。是正しなければならない」などと語った。

 また、「日本では飢餓感がない。政府が手を差しのべる。役所とか安全な企業に就職させたがる」、「日本では失敗するとバカだ、チョンだといわれる。挑戦を褒めねばいかん。マスコミも悪い」、「韓国では大統領が国民に対し、一人ひとり自立していけと言い、小学校で英語とパソコンを学ばせている」とも述べた。

 関志雄野村資本市場研究所シニアフェローは、中国の改革開放が漸進的改革、即ち、実験から普及へ、部分的改革から全体の改革へ、既得権益を尊重しながら易しいものから難しいものへというやりかただったと説明。「旧体制の改革より新制度の育成に力を入れる」という特色があると述べた。そして、ここから得られる日本への教訓として「悪平等を助長する制度を改め、努力する人に夢を与えるべきだ」と強調した。

 同氏は、日本に留学した中国人が日本社会に満足し、帰国しても起業する人が少ないことを紹介し、「動物園生活が長くなると、ジャングルでは生きていけない」との比喩を挙げた。

 シンポジウム後、パーティで会った、中国事情に詳しい公認会計士は、①中国の製造業などは日本よりも競争力がある分野がいくつもあるのに、日本企業の中堅幹部の多くは中国に行ったことがないなど、中国の経済産業事情に疎い、②中国では、海外の大企業で働いた人たちや留学生が次々に国に帰って起業したりしている、③日本の企業も、経済関係団体も、トップが年寄りばかりだが、40歳、50歳代に若返らないと、国際競争についていけない、④日本のメディアは内向き、欧米中心で、中国の経済関係の情報をほとんど報道しない、などと訴えていた。言われてみると、確かにそうだと思ったのは、中国の企業会計ルールや公認会計士・監査法人に関する報道がなされたか、ほとんど記憶にない。

 広大な国土、多数の民族、急速に拡大する経済・産業・企業、消費生活、環境破壊などなど、中国の全体像を的確につかむには、日本のメディアはいまの何倍もの記者を中国に配置する必要がある。それは日中関係を深め発展させるために欠かせないと思う。

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2010年3月11日 (木)

「自由民主党」-「自由」=「民主党」

 二大政党制が確立すると日本に民主政治が定着するということで、多くの識者が民主党への政権交代を支持した。だが、民主党を軸とする連立政権が成立してほぼ半年、事態は識者たちの思い込みとは異なる展開をみせている。

 メディアの中で、最も民主党への政権交代を推進した朝日新聞は、ことしに入ってから、民主党批判の色彩を強めている。指摘している点はおおむねもっともなことばかりだ。11日の朝刊の社説では、「コンクリートから人へ」と政権公約でうたったはずの民主党が、高速道路建設の促進へと舵を切るのを批判している。それも、一般会計ではなく、高速道路会社の予算に組み込むため、国会のチェックが効きにくいという。

 コラム記事では山岡賢次・民主党国会対策委員長を取り上げて、2年前、参議院で額賀福志郎財務相の証人喚問を与党(自民党)欠席のまま多数決で決めたのに対し、今回、疑惑の程度がはるかに深刻な小沢一郎幹事長らの証人喚問を拒否したのはおかしいと指摘している。その記事では、鳩山由紀夫首相、菅直人副首相の名を挙げて、自らの志を失ってはいないか、とも批判している。

 社説では、割引財源の建設費への転用を促した小沢幹事長に対し、前原誠司国土交通相は反発したが、結局、党側の圧力に押し切られたととらえている。鳩山、菅、前原といった民主党の看板政治家は、選挙対策という名の利益誘導を黙認しているのである。選挙に勝つには何をしてもいいというような政党なら、革新政党でも何でもない。

 あるいは、名だたる政治家が節操を失ったのは、権力の座にいるうまみ、心地よさにとりつかれたのかもしれない。ボディーガードが付き、また、蜜にたかるように利権、カネを求めて業界、地方政界などから先生、先生と言い寄ってくるため、ついついお偉いさんになったうれしさが、志を忘れさせてしまったということもありうる。国会の委員会審議で、閣僚が遅参したり、居眠りしたり、ふざけた答弁をしたりするのは、そうしたおごりと無関係ではなさそうだ。

 一方、下野した自由民主党は、執行部の交代を求める与謝野馨氏の主張も出て、解体の方向に行きつつあるようにもみえる。自民党の再生をめぐる党内外の議論はさかんになる一方だろう。それにひきかえ、民主党は「物言えば唇寒し」で、閣僚であろうとなかろうと、国会議員の「言論の自由」はないに等しい。こじつけだが、党名の「民主党」には「自由民主党」と違って「自由」がない。名は体を表しているのである。

 二大政党制が望ましい姿になるとしても、しばらくはかかるだろう。その間の状況は日本の危機でもあるが、それを早く突き抜けるには、国民一人ひとりが自分の問題として政治に積極的に関わっていくようになることが欠かせないと思う。

 

 

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2010年3月 6日 (土)

地域が活性化するには

 (財)東京市政調査会が6日、都内で主催した公開講座「地球温暖化! 自治体はどう応えるか」を聞いた。パネルディスカッションで発言したパネリストからは、参考になる発言が多々聞けた。

 岩手県葛巻町の鈴木重男町長は「ミルクとワインとクリーンエネルギーの町」になった経緯を語った。86%が山林の僻地である葛巻町には、ゴルフ場もなければ、スキー場もない。温泉もない。鉄道も通っていない。そうした中で、自分たちにはどんな資源があるのかを知り、どういう町にしたいかという夢を持ち、住民の理解と合意を早く取り付けて、それを実現してきたという。いやなもの、きらいなもの―強風、畜産の糞尿など―も見方を変えれば宝物だということで、風力発電など有用な資源として活用してきたと述べた。

 鈴木町長は、人口減少が一番の不安だと述べたあと、森林資源の供給、食料の供給、環境の保全などといった山村の機能を都市の人々によく理解してもらうことが必要であり、都市と山村の連携を図ろうと訴えた。いままでは、都市と山村とは取り引きをするという関係であったため、山村は疲弊した。そうした関係を改めようというものである。

 岐阜県恵那市から来たNPO法人地域再生機構の駒宮博男理事長は、エネルギー自給が地域再生の大きな柱だと述べ、地域の固有の資源に着目することを強調した。その1つとしてマイクロ水力発電に着目しているが、さまざまな規制があって、実現がきわめて困難であると語った。また、日本では中央集権的な技術体系になっていて、政治も強い中央集権国家になっており、この中央集権をどう緩和するかというガバナンスの問題に突き当たるという趣旨の発言をした。

 駒宮氏は、知人が中国のある都市で体験した話として「走っているバイクは電気バイクばかり。電気のほうが、石油に比べ圧倒的にコストが安い」と紹介した。

 水質汚濁の霞ヶ浦を再生しようと取り組んできたNPO法人アサザ基金の飯島博代表理事は、さまざまなステークホルダーをネットワークに組み込み、「市民による公共事業」を推進してきた。行政も参加しているが、行政はネットワークの中心に来ないようにしているという。制度論、仕組み論のような枠組みをもとに考えてはだめだとも指摘した。また、地方自治体の地域振興局は各課から人が集まっているので、その行政がNPO化すればいいと語った。

 パネルディスカッションは、表題の「自治体はどう応えるか」とは論点がややずれていたように感じたが、地域で実績を挙げている人たちの話はよかった。

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2010年3月 3日 (水)

巨額の財政赤字に対する危機感の違い

 作家、村上龍さんの「専門家たちに聞く」(jmm@jmm.co.jp)の3月1日号(Q.1052)は「現在の巨額の財政赤字は、次世代にとって、具体的にどのような負担となり、どのような苦境が待っているのでしょうか」という質問への10人の回答を載せている。経済学者、評論家、それに証券・生保など金融機関関係者である。

 そのうち、財政再建が喫緊の課題と考えていない回答者が4人もいたのには驚いた。マクロ的に見ると、国債などの国の債務の大半が国内の金融機関などの国債保有などで賄われている点をとらえて、「日本国民の間の借りたり、貸したりで何の債務債権関係もないという極論も成立する」(三ツ谷誠氏)、「課税や分配の公平性さえ保てれば、債務残高の大きさに必要以上の恐れを抱く必要はない」(杉岡秋美氏)と書いている。

 また「長期金利や為替レート、何よりもインフレ率を見ると、日本の政府の債務に対してはまだ十分な需要があり、財政再建は「喫緊の課題」ではないと思いますが‥」(山崎元氏)という意見もある。ただ、同氏は「将来のリスクを縮小する意味を含めて、累積財政赤字を縮小する方策を考えておくことはいいでしょう」と付け加えているが。

 一方、財政改革を求める意見では、土居丈朗氏が、巨額の財政赤字による債務返済負担の問題とともに、経済活動に悪影響が波及する点を強調し、「今日、生きる世代ができる限り多く返済負担を負う政策に早期に同意すること」、それが将来世代への責任を果たすことになる、と述べている。

 また、津田栄氏は「これまでの延長線では解決できない」として、経済成長戦略を求め、「リーダーが痛みを負っても積極的に改革を行う覚悟がないと解決できない」と断言している。

 我が国の累積財政赤字は世界一だが、マクロ的、事後的に見ると、国内の個人貯蓄でそれを賄っている格好だ。しかも、民間の資金需要が乏しいため、超低金利状態が続いている。

 民間企業の活力が高まれば、資金需要が出て、長期金利が上昇に転ずるはずだが、そうなると、国債相場が下落して、国債をたくさん保有する金融機関などの経営危機につながるおそれがある。国債発行のコストもはね上がる。その意味では、日本経済が停滞を続けることが国債の大量発行を許容する唯一の道である。

 しかし、高齢化、人口減により、貯蓄率は低くなっている一方で、税収低迷や社会保障支出増大のため、大規模な財政赤字を繰り返せば、国債市況の暴落など経済混乱に直面しよう。そうした予測が市場に広がれば、投機が動き出し、国債先物の売り叩きも起きるに違いない。

 いままで何とか回ってきたのだから、これからも何とかなるのではないか、という甘い楽観論に決別すべき時ではなかろうか。

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2010年3月 1日 (月)

亀井金融相が「日銀が直接、国債を引き受けたらいい」と発言

 3月1日の衆議院財務金融委員会で、亀井静香金融相が財源確保策として、日銀が市中から国債を買い上げるだけでなく、国から直接、国債を引き受けたらいいとの考えを述べたという。これは、禁断の木の実であり、後世、振り返ると、財政破綻に向かって踏み出した新たな一歩だったということになるのをおそれる。

 財政法によって、日銀の直接引き受けは原則禁止されている。だが、同法第5条但し書きには、特別の事由があり、かつ国会が議決した金額の範囲内なら日銀引き受けを認めている。鳩山政権はばらまき政策の財源をこの日銀直接引き受けで調達することを選択肢の1つとして考えているという疑念を抱かせる。

 国債を日銀に直接引き受けさせると、国(政府)は財政規模をいくらでも膨らますことができる。政府にとっては、打ち出の小槌である。だが、結果として、通貨(日銀券)が大量に出回るので、インフレを起こす。インフレの度合いが激しいほど、国・地方自治体の債務は軽くなる。半面で、おカネの値打ちが急激に下がるので、預貯金などの価値はゼロに近くなる。国民経済・暮らしの混乱・破壊もすさまじいものとなる。

 これは第二次大戦直後に日本が体験した出来事である。もう一度、同じ経験をさせられても、日本は復興するだろうか。日本人にはそれだけのエネルギーがあるだろうか。私たちは歴史の教訓に学び、日本経済を破壊に導く日銀引き受けを許してはならない。

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