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2010年3月26日 (金)

役員報酬は高い? 安い?

 金融庁は23日、企業内容等の開示に関する内閣府令の改正を公表した。3月31日以後の事業年度、つまり2010年3月期決算の有価証券報告書から適用になる。

 上場会社の役員(執行役員も含む)は会社からもらう報酬(賞与、ストックオプション、退職金を含む。連結子会社からの報酬も含む)を1人ずつ開示することになるが、但し書きで、1億円以上受け取った役員の名前だけに限って開示することが認められている。

 役員1人ひとりの報酬の開示を求めた内閣府令で思い出すことがある。いまから40年ほど前の話だが、日新製鋼の社長宅に取材で夜回りしたことがある。杉並区だったかの住宅街にある、やや大きめの二階家だった。想像していたような豪壮な邸宅ではなかった。でも、後日、その社長は「社長の家は、社員が将来、社長になって、あんな家に住みたいと思うようなものでなければならない」と私に言った。

 また、その頃、石川島播磨重工業の社長に聞いた話。当時、ソ連から来たミッションの代表が社長の報酬をたずねた。そこで社長は「新入社員の7倍ぐらい」と答えた。そうしたら、ソ連人は「それは絶対に嘘だ。そんなことはありえない。ソ連でさえ、はるかに多い。あなたは30倍以上もらっているに違いない」と言ったそうだ。

 第二次世界大戦前の日本企業では、役員の報酬はいままでの米国のように非常に高かった。しかし、戦後のパージで突然、社員から役員になった人たちの役員報酬は幹部社員よりちょっと多いだけだった。もっとも、交際費がふんだんに使えるなどのフリンジ・ベネフィットを大いに享受できた。

 しかし、近年の経営者は強いリーダーシップを求められる一方、フリンジ・ベネフィットは少ない。その割に、役員報酬は米国や西欧と比べ相当低い。だが、経営のプロとしてよりも、社員の中から階段を上がって役員になるというのが日本の企業社会だから、そこでは、日米の役員報酬格差に対してあまり違和感がないように見受けられる。

 そうした企業風土のもと、今回、内閣府令の改正で、役員報酬の個別開示の方向がはっきりした。情報開示が進むことに基本的に異論はない。ただ、一律に強制するのではなく、各企業の株主が必要だと思ったら、株主総会の議案にするといったやりかたの積み重ねのほうが穏当である。嫉妬、やっかみの強い日本社会で1億円以上の報酬を受け取っていると公表されると、本人だけでなく家族も、他人からいやみを言われたり、寄付を迫られたりといったことが起きかねないからである。

 役員としての能力、高密度・長時間労働、責任等や、業績向上への貢献等を考慮したとき、国際的に見て1億円どころか10億円でもいい、高額の報酬をもらってもおかしくない経営者がたくさんいるほうが日本経済の発展につながる。また、若者にビジネスでの夢を与えることにもなる。それなのに、会社の規模などを抜きに、一律に1億円以上という開示基準を設けると、会社や仕事の中身に関係なく、1億円以上の報酬はもらいすぎているといった奇妙な判断基準が定着しかねない。 

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