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2010年3月28日 (日)

シンポ「ワーキングプアを成長の原動力に転換させるには」

 「若年層を中心とした雇用、貧困対策を考える―ワーキングプアを成長の原動力に転換させるためには―」というシンポジウムが27日、東京で開かれた。東京市政調査会と日本経済研究センターの共催である。日本経済研究センターで昨年11月に提言をまとめたのを受けて、同センターの特別研究員(東京市政調査会の研究員でもある)と内閣府、京都府、連合の担当者が出席して議論した。

 昨年の提言は、①生活保護制度の解体・再編を中心に社会保障制度を改革し、ハローワークと福祉事務所の統合など行政組織を再編すべきだ、②若者自立支援事業や省令等による福祉施設に対する国の補助にはムダが多いので、効率的な配分をすべきだ、③公的な支援に基づく社会的企業を設立・育成して雇用を創出する―といった内容である。

 生活保護制度についていえば、生活支援として失業扶助と給付付き税額控除を導入し、給付の基準や実施等は国が行い、自立支援策という福祉サービスは自治体が行う、としている。また、職業紹介にからんで西欧などにあるパーソナル・アドバイザー制度の導入を求めている。失業者1人ひとりに特定のアドバイザーを付けて就職支援を行うものである。

 報告書の内容は日本経済研究センターのホームページに掲載されているから一読をお勧めしたい。

 シンポジウムでは、内閣府の山崎史郎・政策統括官が「いまの社会保障は高齢者中心。企業が社会保障の役を果たしていたのがなくなったため、若者の貧困・困窮者支援が大きな課題になっている。最近は新卒者の就職支援が深刻な問題になっている」など、政策課題への取り組みについて述べた。地域の雇用戦略については雇用・産業・文教政策の統合運用の重要性を挙げた。

 その点で、京都府商工労働観光部の山口寛士・雇用政策監が京都府・連合京都・京都経営者協会の三者共同で運営している総合就業支援拠点「京都ジョブパーク」を紹介したのは参考になった。「雇用と福祉が表裏一体になった」と言う山口氏は、ワンストップサービスで、相談窓口に行けば、カウンセリングや研修などから職業紹介まで行い、就職後のフォローアップまでも実施しているという。そのほかにも高校新卒未就職者緊急支援事業などいろいろ工夫している。他の自治体には参考になるのではないか。

 連合の山根木晴久・非正規労働センター総合局長は「労働者は日本を支える唯一の資源」なのに「労働市場の縮小と人材の劣化とが悪循環になっている」と指摘した。連合はアンケートと聞き取りとによるワーキングプア実態調査を実施し、現在分析中とのことだが、同氏は実態調査から見えたものとして、ワーキングプアになる原因を次のように述べた。

 ①家庭環境(貧困、離婚、病気などによる家庭の崩壊、および地縁・血縁からの断絶)、②教育機会からの排除または逃避、③都心一極集中(家賃など高い生活コスト、親元に戻りたくても戻れない)、④細切れ雇用(簡単にクビになるとか、長続きしない、なじめない)、⑤セーフティネットの不備の5つである。山根木氏も指摘したことだが、セーフティネットをきちんとするだけでは、ワーイングプア問題の根本的な解決にはならない。

 報告書作成にあたった五石敬路日本経済研究センター特別研究員は「地域がもっと新しい制度、雇用を作り出すようになってほしい。地域では議会が動かないが、もっと関与したらおもしろい動きがみられるのではないか」という趣旨の発言をした。

 また、内閣府の山崎氏も新卒者の就職難について「負のスパイラルに入った人を元に戻すのは大変。しかし、地域が育てれば、プラスになる。地域に、人の育成・教育に力を入れてもらうことが必要だ」と、地域への期待を述べた。

 山根木氏から、自治体による官製ワーキングプアについての指摘もあった。2時間のシンポジウムを聞いて、地域がもっと果たすべき役割があるという印象を受けた。

 

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