« よそごとでないギリシャの財政破綻 | トップページ | 坂野元大蔵省証券局長が財政改革を訴える »

2010年4月30日 (金)

10年も前の本『なぜ日本は没落するか』(森嶋通夫)の鋭い指摘

 たまたま1999年に出版された『なぜ日本は没落するか』を読んだ。ロンドン大学教授だった森嶋通夫氏の著書で、2050年の日本を予想した内容だからだ。随所になるほどとうなづく指摘があるので、それをここで紹介したい。

・戦後学校教育は、子供に対し、大人の社会の将来の中心メンバーとなるのだという気概を植え付けなかった。子供は個人主義的、成績主義的、平等主義的などであるように教育されているが、大人の社会は集団主義、縁故主義などに固執している。

・戦後教育は誰をもひいきしたり、おとしめたりしないよう完全に無差別の原理に則って行われた。価値判断は排除されたので、日本人は価値判断を行う能力を失った。論理的思考は不得手で、意思決定力もすっかり弱くなった。大学教育を受けてもエリートにはなりえない。日本は儒教社会であり、国の存続のために知識人が主導的役割を演じるようにつくられた国家だから、これでは日本は頂点から崩れていく危険が大きい。そういう事態は21世紀中頃にやってこよう。

・あまりにも物質主義的な教育が行われ、そうした教育を受けた人たちには高次元の倫理へのおそれもみられない。したがって、倫理上の価値や理想、あるいは社会的な義務について何の関心もない。日本の教育環境は、およそ労働者が何か抽象的・超越的なものへの義務感や責任感を持つようになるのにはほど遠い。

・いまの日本人は創造性がなく、自分の意思を相手に伝える力を持っていない。政府も財界も官僚も皆お坊ちゃん集団で、自分の論理で相手を説得する迫力もないうえに、新たな構想を組み立てる論理的思考力もない。

・日本の雇用システムは戦争の遺物である。官僚や軍人の処遇の原理、すなわち業績は年功の結果だというものを戦争中に会社に導入したのである。給与だけでなく地位にまで拡大された年功序列制が大企業に定着したことが私企業の経営硬直化の原因である。これからの日本は不効率是正に伴う失業の時代である。それには高い地位に就く者を社内外から選ばねばならない。それには中高年者の転職を可能とする労働市場が形成されないと大変だ。

・大量の失業が生じた場合、あっせん所整備や財政支出などの政策だけでは足りない。国を挙げて、大量の仕事を生み出すイノベーションを起こさねばならない。大型のイノベーションは大きな風をつくり、日本経済という船を加速させる。その結果、高度成長し始めることもありうる。私の「アジア共同体」構想はそうしたものである。

・徳川末期に日本に来た欧米の使節は、日本人について、文化的にも経済的にも程度は高いが、政治的には無能だという採点を下した。いまも、日本は政治的に無能であることを世界にさらけ出している。政治家の質が悪ければ、その国が尊敬されることはない。

・西欧の民主主義政党政治では、総選挙で、公約(マニフェスト)と呼ばれる政治的企画ないしプログラムに対して投票するから、党首は党の企画に基づくカリスマを身につける。日本の政治家にカリスマがないのは、党が企画力を持っていないことの表れである。

・外国人が日本の政治を見れば「わからない国だ」と結論するに違いない。誰もわからない国を先進国だとは思わない。

|

« よそごとでないギリシャの財政破綻 | トップページ | 坂野元大蔵省証券局長が財政改革を訴える »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 10年も前の本『なぜ日本は没落するか』(森嶋通夫)の鋭い指摘:

« よそごとでないギリシャの財政破綻 | トップページ | 坂野元大蔵省証券局長が財政改革を訴える »