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2010年4月17日 (土)

中国のモンゴル人大虐殺の歴史を『墓標なき草原』で知った

 副題に「内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録」とある楊海英著『墓標なき草原』(09年12月刊、岩波書店)の上下巻を読んだ。中国は漢民族といくつもの少数民族から成る多民族国家だが、チベット、ウイグルなどの民族が多く住む地域では、それらの少数民族が独立ないし真の自治を求める活動が起きている。

 中国国内でモンゴル人がたくさん住むのは、内モンゴル自治区以外に、1969年に自治区を分割して黒龍江省、吉林省、遼寧省、甘粛省などにくっつけた地域である。しかし、モンゴル族の人々がチベット族などと同じように独立などを求めて活動しているという話は聞いたことがなかった。本書によって、その理由がわかった。中国共産党や人民解放軍は独立や真の自治を願うモンゴル人はすべて分裂主義者とみなし、リーダーとなるような人たちを次々に残酷なやりかたで虐待し、惨殺してしまったからである。

 そもそも同じ民族のモンゴル人がモンゴル人民共和国と中国の内モンゴルと分けられたのは米ソ首脳らのヤルタ会談による。それが悲劇の始まりだが、毛沢東の中国共産党は、草原地帯に農民を送り込んで、モンゴル人の割合を引き下げようとした。また、ソ連・モンゴル人民共和国との戦争に備える中国共産党・解放軍は、内モンゴルのモンゴル人を敵方に通ずるおそれがあるとみた。それに、漢民族に比べ、遊牧民族のモンゴル人を野蛮人、劣等な人種とみなした。そんなこんなで、文化大革命が起きると、共産党・解放軍・現地の漢人たちは、陰謀をめぐらしてモンゴル族のリーダー的な人たち、および女、子ども、友人らを犯罪者に仕立て、片っぱしから虐待して死に至らしめた。そのすさまじさ、おぞましさは本書を読んでいただくとよくわかるだろう。

 中国は帝国主義の侵略から独立しようとし、念願がかなったが、自国の少数民族が漢民族支配から自立しようとすると、民族分裂活動だと言って弾圧する。二枚舌である。こわいのは、こうした中国の二枚舌を中国国民が疑問に思わないことだ。

 『墓標なき草原』というタイトルは、10万人ともいわれるモンゴル人虐殺で、遺体は草原に投げ捨てられ、まともな墓もつくられなかったことに由来する。文革後、大虐殺は中国共産党で多少、行き過ぎがあったという総括があっただけで、誰一人、党・軍・一般漢人は責任を問われなかったという。

 本書を読んでいると、いまの中国共産党・人民解放軍や漢人の発想や行動がよくわかる。チベット蜂起のときには、モンゴル人の軍隊を派遣して鎮圧させたなど、自分の手を汚さずして、巧みに支配するところは、かつてのイギリスの植民地支配の手口をそっくり真似ているように思える。中国のアフリカ進出などを理解するうえでも、本書は大いに参考になる。

 今度の大地震で、中国首脳が急ぎ現地入りするというのも、少数民族への支配が揺るがぬようにとの観点からだということがよくわかる。

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