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2010年5月31日 (月)

メキシコ湾岸の原油流出と宮崎県の口蹄疫

 人類は飛躍的な進歩を達成したが、驕ってはならない。そんな思いにかられたのが、米ルイジアナ州のメキシコ湾における原油流出と日本の宮崎県で起きた口蹄疫の流行である。

 海底1500メートルもの深さがあるところで世界の石油大手、英BPが石油を掘削・採取していたところ、海上石油基地が爆発事故を起こした。その結果、海底に近いところで破損したパイプから原油が海中に噴出し出した。この流出を止める対策はこれまでのところ皆、失敗に終わっており、流出量はいまや日量1.2万~1.9万バーレルに達するという。多い方の数字を年換算すると、100万キロリットル強に相当する。

 汚染で、漁業や観光施設、それにメキシコ湾の動植物など自然に与えている打撃はきわめて大きい。米国史上最大の環境汚染となっている。この対策でBPが負った支出は累計で9億3千万ドル(1000億円弱)とされる。これからも流出を止めるための新たな対策に取り組むが、最悪の場合、流出の量を減らすことはできても完全に止めることはできないという事態も予想される。

 20世紀は石油の時代であり、人類は地上で石油を掘削するだけでは足りず、海底油田を掘ってきた。それもどんどん深い海底に。21世紀になっても、その傾向は変わらない。輸入依存度が高まる米国は安全保障面からも海底油田掘削を進めようという流れにあった。ルイジアナ州沖合のこの事故は、技術に対する過信を戒める教訓である。

 ひるがえって、日本を見ると、牛、豚などの家畜を襲う伝染病の口蹄疫で、宮崎牛などで知られる宮崎県の畜産業は地域によっては壊滅的な打撃を受けた。多くの種牛まで殺処分せざるをえなかった。そして、いまなお、伝染病は終息していない。当初、こんなおおごとになるなんて、誰も予想していなかっただろう。

 いずれ、今回の大流行の原因が追及され、ある程度のことはわかるだろうが、今回の経緯から気付いたことがある。家畜を一ヵ所に集中して飼育するとか、畜産農家が特定の地域に集中すると、伝染病が発生したときに伝播しやすいのではないか。それには、人の移動、クルマの移動なども大きく関わっているだろうが、いずれにせよ、まだまだ人智の及ばないことがあるということを改めて思い知らされた。人間はもっと自然に対して謙虚でなければならない。

 鳥インフルエンザのことは忘れかかっているが、いつ本格的に流行し、人から人へと感染する時が来るかもしれない。ウイルスは生き物であり、治療薬ができたと思っても、変異で効き目がなくなる可能性が大きい。ウイルスとの闘いはいたちごっこなのである。

 一方、かつて、熱帯林の開発で人類にも広がったエイズは、当初、死の病と思われていたが、治療薬の開発により、天寿を全うするまで発症しないことが可能になった。神をも恐れぬ人類に与えられた罰かと思ったこともあるが、人類は科学の成果でそれを乗り越えたとも言える。

 とはいえ、人類は驕ってはいけない。自然の前にあくまで謙虚でありたい。自然の生態系の全体にせよ、地球温暖化のメカニズムにせよ、まだまだ、人類がわかっていないこと、できないことだらけなのである。虫1匹でさえ、人間は生命体を創造することが不可能である。 

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2010年5月29日 (土)

民主党に「国家財政を考える会」ができた

 鳩山内閣が普天間基地の問題をどう着地させるかがニュースの焦点になっている時期の今月26日、民主党内の議員連盟「国家財政を考える会」が初会合を開いた。報道の扱いは小さかったが、重視すべき動きだと思う。

 代表世話人は玄葉光一郎衆院議員(衆院財務金融委員長)で、出席した衆参議員は115人。ほかに代理出席者が65人いたという。ギリシャの財政破綻に端を発した世界的な経済不安の中で、日本の財政危機に目を向ける与党政治家が結集したという意義は大きい。

 普天間基地問題で国民の信を決定的に失った鳩山首相が居座りを続ければ、参議院選挙で民主党は相当の痛手をこうむる可能性が大だ。選挙の前かすぐあとに、鳩山首相が辞任せざるをえない局面がありそうだ。そういう情勢を踏まえ、「国家財政を考える会」を民主党内の勢力争いと関係づける見方もあるが、それよりも、財政問題の深刻さが民主党議員にようやく浸透してきたと理解するほうが素直だろう。

 「国家財政を考える会」の趣意書は、財政破綻のおそれがあることも否定できないとして、いまこそ財政規律を取り戻す必要があると指摘している。そして、財政の健全化と成長戦略、社会保障制度の再構築は密接不可分の課題だと述べている。

 玄葉氏は自らのホームページで、次の総選挙までに①3%の名目経済成長を達成、②ぎりぎりまでの無駄削減努力、③年金・医療制度の抜本改革および税制の抜本改革(消費税の引き上げを含む)の制度設計の完了、の3点を行い、総選挙を終えたら、直ちに税制の抜本改革を実行することが必要不可欠と言っている。

 しかし、「国家財政を考える会」が、鳩山政権のマニフェストにこだわって、次の総選挙までは消費税を上げないという立場を守っている点は物足りない。財政赤字問題に直面するEU諸国の中には、すぐさま社会福祉関係の歳出削減や増税に踏み出す国が少なくないのである。

 日本はいまでも危機的な状況にあるのだから、参議院選挙で財政健全化対策を正面から掲げて信を問うのが政党・政治家の責任である。普天間問題のように、国民においしいことを言えば選挙に勝てるというような、問題を先延ばししたり、隠したりする発想は、国民が愚かだという前提に立っているとしか思えない。

 また、「国家財政を考える会」に集う議員の皆さんは、議員報酬の削減や政党助成金の削減など、隗より始めるべきである。それなくして、国民に負担や犠牲を強いることはできない。

 国家財政の深刻さは与党のみならず野党も十分承知している。それゆえ、与野党こぞって財政健全化には賛同するはずだ。党派を超えて、財政再建議員連盟をつくる動きが出るのを期待する。同様に、年金制度など社会保障制度も、与野党がもっと国家的な見地に立って、長期安定的なものにする必要がある。

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2010年5月26日 (水)

世界のビジネストレンドに後れる日本企業

 20世紀後半のビジネスをウオッチしてきたが、21世紀のビジネストレンドの変容ぶりには目を見張る。

 石炭(原料炭)、鉄鉱石など資源の価格変動は実に激しい。長期取り引きは安定的な価格だったのが、スポット取り引きに近い契約形態に変わりつつある。1年ごとの価格見直しから、スポット契約の価格(市況)を反映しやすいように4半期ごとの契約にするとか、である。開発・供給に当たる売り手企業が合併・統合で寡占化し、価格支配力を強めている事情もある。BHPビリトン、リオ・ティント、ヴァーレなどがそうだ。

 これまで、日本の鉄鋼メーカーはオーストラリアなどの資源開発で15年とかの長期引き取り契約を結び、主原料を安定確保してきた。だが、中国の鉄鋼産業の発展で、原料を奪い合う環境に追い込まれ、鉱山側に価格主導権を奪われた。日本の鉄鋼メーカーは国内の自動車、電機業界との鋼材価格決定を、やはり4半期ごとに切り替えるよう求めざるをえなくなった。鋼材の需要業界もまた、コストがちょくちょく変動することを前提に経営することをよぎなくされる。玉突き的に、経済全体が価格変動に振り回されやすくなる。

 こうしたトレンドに対し、中国の鉄鋼業界では買収・合併で企業規模を大きくし、鉱山側の価格支配力に対抗しようとしている。世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロールに次ぐ巨大な鉄鋼企業集団が中国にいくつもできている。日本の普通鋼大手メーカーは高級鋼材に特化しつつあるが、研究開発費の負担などを考えると、さらなる合併・統合で事業規模を大きくする必要に迫られるかもしれない。石油などを含め、海外での資源開発にオールジャパンで投資する仕組みを工夫するのはどうだろう。

 鉄鋼などと同じことが、サムスン電子など韓国のエレクトロニクスメーカーに後塵を拝している日本のエレクトロニクス業界にも当てはまる。半導体、テレビなどの分野ではある程度集約が行われたが、サムスン電子などに比べると、企業規模、投資規模、意思決定などの点で後れをとり続けている。もっと合併・統合を急ぎ、経営陣も年功序列の従来型を脱する必要がある。日本の大企業の中には、社内公用語を英語とし、外国人を経営者に登用するところが出てきたが、もっともっと、グローバルな視点で多様な民族、文化などを経営革新に生かす努力がビッグビジネスに求められる。

 最近、レナウンに中国の山東如意集団が4割出資すると発表された。少し前には家電販売のラオックスがやはり中国系企業に買収された。日本の企業を買う中国企業の動きが目につくようになっている。中国の企業は自動車・同部品、エレクトロニクスなど開発や生産の技術などをねらって先進国企業の買収を進めている。日本ではリゾート関連の購入も行なっているという。現在の先進国のように、企業経営が不振で株価が下がると、企業買収が容易になる。20年も経済が停滞している日本では、これからもっと中国企業による企業買収の対象が増えるだろう。

 日本は中国よりも技術的に進んでいるというような言い方をする。しかし、日本企業を買収すれば、ノウハウなどをはじめとして簡単に手に入る。それを止めるすべはない。そう考えていくと、日本企業独自の強みは何かがあいまいになる。グローバルなビジネスであろうと、ローカルなそれであろうと、技術、品質、デザイン、価格、納期、販売手法、アフターサービスなどで顧客の心をつかむ製品・サービスを提供できる企業が強いということなのだろう。

 身の回りの事例だが、ビールの小売価格は銘柄ごとにまちまちだ。その中で、サントリーの「プレミアム」は一番高く、デフレの中で、発売当初よりも値上がりしている。他方、化粧品の小売価格は過去数年、値下がりを続けている。かつては資生堂、カネボウがほかより値引き率が小さかったが、いまでは全体に値引き率が大きくなり、かつ一律である。市場の選別で勝ち残れるだけの優位性、特長がある製品・サービスこそが決め手である。

 途上国が鉄道、水道、原子力発電所などの社会インフラを整備するためには巨額の資金を必要とする。そこで、先進主要国はそれぞれ自国の企業と一緒になって資金提供などの援助や施設設置などをパッケージで売り込む官民協調体制をとるようになった。国によっては軍事援助と組み合わせて受注するところさえある。日本企業には単品では国際競争力を持っているところが少なくないが、途上国の社会インフラ整備においては、国が先頭に立たないと相手にされない。

 日本経済が今後、成長路線に乗るためにも、政府は世界的な潮流を踏まえて、企業の輸出や競争力強化に手を貸さなければならない。今後、資源輸入費用が上がり、かつ日本企業が日本より有利な海外に工場などをシフトしていくと、貿易収支が悪化するという事態が予想されるだけに、政府は日本国内のビジネスを大事にすべきだろう。

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2010年5月22日 (土)

日銀が成長分野に新貸出制度だって?

 日本銀行が21日の政策委員会・金融政策決定会合で、成長基盤強化に向けた企業の取り組みを資金供給の面から後押しすること、および政府の政策運営と整合的にする方針を決めた。民間金融機関を通じて成長産業分野の事業に低利の資金を供給するもので、金融機関には政策金利(現在は年0.1%)で融資し、期間は原則1年という。

 この制度のポイントの1つは、日銀が成長分野だと認めた分野の事業に限って低利資金を民間金融機関を通じて供給する点である。いつの間にやら、日銀は経済産業省のような産業育成官庁になったらしい。第2次世界大戦後の“傾斜生産”では石炭、鉄鋼といった復興のカギとなる産業に復興金融公庫(のちに日本開発銀行になった。いまの日本政策投資銀行)から長期低利資金を供給した。今回は、産業育成に素人の日銀が、あそこが有望とか決めるらしい。

 政府は日本政策投資銀行の完全民営化を棚上げし、政策金融を担う政府系機関に逆戻りさせている。したがって、産業育成にもっぱら従事してきた政策投資銀行を通じて低利融資するのなら、理屈はわかるが、今回の日銀の決定はそうではない。

 なぜ、通貨の番人である中央銀行が、特定の分野の企業に対して民間金融機関を通じて低利融資に乗り出す必要があるのか。それに、そもそも、何が成長分野かを判定する能力が日銀にあると言えるのか。それらが説明されていない。

 一般論としては、環境分野だとか、エネルギー分野とかが成長分野とされるが、今後の日本経済を発展させる新しい分野が何かは机上の論議で決まるものではない。企業家精神を持つ事業家が新しい分野を創造し、発展させることで経済発展が進んできたのである。第2次大戦後のような発想は、画期的な新産業分野を生みだすことには必ずしもつながらない。

 鳩山政権は日銀に対し、陰に陽に政府の経済政策に協力するよう圧力をかけている。これに対し、民主党が日銀総裁・副総裁人事に口をはさんできた経緯があるせいか、日銀はかなり神経質になっているようにみえる。今回の決定は、そうしたおびえが底流にあるからではないか。やらなくていいことをやって、かえって、政府につけいる隙を与えているようにも思える。

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2010年5月19日 (水)

勤労統計が示す賃金低下トレンド

 厚生労働省の毎月勤労統計調査が17日、発表になった。2009年度の確報も発表された。09年度における従業員5人以上の事業所の従業員1人当たりの現金給与総額は平均31万5311円で、前年度に比べ3.3%減った。3年続けて減ったことになる。現金給与総額は所定内賃金のほか時間外賃金や一時金を含めたもので、製造業では前年度より5.5%も減っている。

 就業形態別月間現金給与額で一般労働者をみると、従業員5人以上の事業所の場合、39万8652円で前年度を2.7%下回った。従業員30人以上の事業所では43万2231円で前年度より3.2%少なかった。

 時系列で賃金水準がどう推移してきたかを従業員5人以上の事業所の賃金指数(名目)でみると、1998年度以降、賃金は下がる傾向にあることがわかる。2005年平均を100とする賃金指数は1997年度の108.5まで上昇傾向にあった。それが翌1998年度から右下がりに転じた。一時、少し上がる年度が3年度あったが、ほかはマイナスばかり。2009年度は95.1まで落ちた。1997年度と2009年度を比べると、実に13.4ポイントも賃金水準が下がっているのである。

 名目賃金指数を消費者物価指数で除して算出する実質賃金指数も2009年度に95.0にまで下がった。2000年度に102.7に上がったあと、2005年度に一度だけ少し上がった以外は、下がりっ放しである。デフレで消費者物価が下がり気味だとはいえ、実質賃金はもっと低下しているわけだ。

 従業員30人以上の事業所の実質賃金指数だと、2006年度の100.7から2009年度は94.8にまで落ちている。また、これが製造業では100.9から93.5まで低下している。収入の減少にあえぐ労働者の姿が数字に現われている。

 これでは働く人々も元気が出ない。新聞を見ても、一面も社会面も暗い話ばかりだ。日本が活気を取り戻すのを期待したいところだが、いつの日のことか、と思ってしまう。

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2010年5月16日 (日)

国家公務員採用半減の荒っぽさ

 2011年度の国家公務員採用を09年度のおおむね半分にするという総務省の提案が、いくつかの省庁の反対で閣議決定できないでいる。

 鳩山政権は天下りあっせんの禁止など霞が関の人事のありかたを改める方針を打ち出した。その一環として新規採用をⅠ種、Ⅱ種については2割減、国税専門官など専門性の高い職種は5割減、地方に置かれている出先機関の職員は8割減とする方針を打ち出したところ、業務運営に差しつかえるという省庁が相次いでいるというわけだ。

 天下りがしにくくなった結果、従来なら早期勧奨退職していた年配の職員が定年までとか定年間近まで勤める可能性が高まる。一方で、定員数は決まっているので、新規採用の余地が狭まる。その結果、新規採用を抑えるしかないという理屈なのだろう。

 しかし、こうした単純な発想には疑問を抱く。なぜなら、第1に、定員数は同じでも、総人件費が増える。第2に、国家公務員の平均年齢が上がるうえに、若い世代が極端に少なくなるようだと、活力が低下するなどのひずみが生じる。

 公務員は国も地方も概して多すぎる。無駄めしを食っている役人はいまも相当にいるから、本来、減らすのは結構なことである。だが、今回の提案は定員を減らすということではない。

 官僚の定数、給与等については、次のような改革が必要である。まず、上は総理大臣から末端の職員まで賃金、ボーナスのカットを即時実施すべきである。民間に比べて公務員の待遇は高過ぎる。英国の新政権が即時に5%の報酬カットを決めたように、日本の財政状態を考えれば、公務員の賃金、退職金などを1~2割引き下げてもちっともおかしくない。

 民間の大企業では賃金カーブをみると、50歳ないし55歳を境に、ほとんどの社員の年収は3分の1程度下がる、というのが一般的。そして、以後はほとんど年収は上がらない。定年延長というのも、嘱託のような扱いが多く、年収は正規社員時代の何分の1かに減る。官僚の給与制度はそうした民間の実態を反映しておらず、官尊民卑の色彩が年々強まっている。

 平均して、公務員総数の削減は可能である。どれだけ減らせるかは専門家に委ねるしかないが、キャリアなどアタマを使う職種以外は仕事の内容や仕方からみて大幅な削減ができるはずだ。それと、民間準拠から上方にかい離している賃金などを適正水準に引き下げたら、国民が納得する公務員制度になるだろう。こうした歳出の削減こそが鳩山内閣の掲げる公約をより多く実現可能にする。

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2010年5月13日 (木)

新党に頑張ってもらいたい

 7月に参議院選挙が行われる。何日になるか、まだ決まっていないが、もう2ヵ月かそこらで投票日である。しかし、世論調査では、鳩山内閣の支持率は下がり続けているし、民主党も凋落傾向。第2位の政党である自由民主党も党内がばらばら、離党者も相次いでいて、精彩を欠いたままだ。そうこうしているうちに、新しい政党がいくつか誕生した。二大政党制の変容ないし政界再編含みの動きで、日本の政党政治は新たな段階に入ったようにみえる。

 最近、新設ないしモデルチェンジした政党の名称は「日本創新党」、「たちあがれ日本」、「新党改革」、それに、地方議会を活動の舞台とする「大阪維新の会」である。一足先に結党した「みんなの党」は、民主党、自民党以外の小政党の中では公明党に匹敵する支持を得ている。新たに誕生した政党が可能な限り選挙協力を実施したら、民主党と自民党の双方に相当の影響力を持つ可能性もある。政党再編の引き金を引くことすら考え得る。そうなるためにも、すぐれた候補者を多数擁立することが期待される。

 民主党が単独で参議院も過半数を握ったら、この日本の将来は危うい。自民党は政権の座から滑り落ちたわけをいまもってわかっていないから、党の再生は困難である。したがって、今度の参院選挙は、民主党と連立を組んでいない小政党が全体として議員数を増やすことが望ましい。

 ところが、目下、日本創新党も、たちあがれ日本も、参院選の立候補者が10人にも達していない。新党改革は候補締め切りが15日であり、これからだ。それに、公認された候補者の顔触れをみても、強力なタマばかりではない。すぐれた人材をどんどん発掘してほしい。

 発足したばかりの政党のホームページを読み比べると、日本創新党が一番、立党の問題意識を明確に示している。同党の「立党宣言」は、①私たちはなぜ立ち上がるのか、②私たちは何をなすべきか、③党の基本理念、④「私の日本」を心から誇れる国に、と4つに分けて述べている。

 ②では、「成長と改革による経済と財政の再建」、「国民の安心の確立」、「現実主義に基づいた外交・防衛」の3つを挙げている。また、③では、「幸福は、自らの努力でしか得ることができないものである。与えられるものではない」、「幸福は、各自が自由に、誇りをもって、各々の天分を活かしきることのなかにこそある」、「真の幸福は、自らの天分を活かして他者を幸せにしたときにこそ得られるものである。自分だけで得られるものではない」と書いている。やや抽象的な部分もあるが問題意識と意欲が強く現われている。

 有名人を立てれば当選する、という発想は民主党にも野党各党にもみられる。それも人物次第でいちがいにいけないとは言えない。それはそれとして、新しい政党は、政党としての基本的なスタンスや主要な政策を整合的に打ち出すのが支持を得る王道である。そこに力を入れてほしい。 

 たまたま、英国ではつい最近、下院総選挙の結果、第三政党の自由民主党が伸びて、第一政党の保守党と連立を組むに至った。日本は英国の選挙制度を真似て、二大政党制が定着するのだろうとみられていたが、今度の参院選挙の結果いかんでは、二大政党制とは言いにくい状況になることもありうる。民主主義議会政治の制度といっても、いろいろある。そしてどれも一長一短がある。今度の参院選挙を契機に、日本の制度も見直していいのではないか。

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2010年5月12日 (水)

業績低迷なのに、みずほFGがまたも大型増資へ

 長く株式市場を見てきた経験では、増資と言えば、普通、設備投資など事業拡大に充てる資金の調達が目的である。事業の発展で収益が拡大する見通しがあるからで、株主もそれによって利益を享受する見込みが高いから増資払い込みに応じる。

 しかし、みずほフィナンシャルグループ(FG)が6月にも8000億円もの普通株増資を行う方針を固めた(日本経済新聞)というのを、同様に前向きに評価できるのだろうか。日経によると、①国際的な資本規制強化の流れに沿って財務基盤を強化する、②アジア向けなど新戦略に沿った成長投資に振り向ける財源を確保する、というもっともらしい説明がなされている。

 それとともに、前田みずほFG会長、斎藤みずほコーポレート銀行会長、杉山みずほ銀行会長の3人の会長が退く方向で調整に入った、と妙な書き方になっている。

 08年のリーマン・ショック以降、米国の銀行がいち早く収益を回復したにもかかわらず、日本のメガバンクは収益力が低い。それにもかかわらず、大規模の増資をするため、株式希薄化で株価は下がり気味だ。なかでも、みずほFGは株価が一段と低迷している。

 資本規制に対応するための増資はやむをえないが、それで得た資金を活用して収益を高めるのが経営者の責務である。さもないと、株主の利益を損なう。そうした視点で、みずほFGを見たとき、経営に問題が多い。第一に、富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行の3社が02年に合併して1社になったはずなのに、人事などで旧3社の垣根をいまだに残している。今度退くとみられる3人の会長はそれぞれ富士、一勧、興銀の出身である。対等合併だからといって、旧3社間で均等な人事を行うなどというのは時代遅れもはなはだしい。

 第二に、持ち株会社の下に法人向けの業務を行うみずほコーポレート銀行と、個人顧客を対象とするみずほ銀行と分けているが、グループの収益力を見れば明らかなように、法人、個人と分けているのは管理部門が重複してコスト増を招いていると思われる。2つの銀行が一緒になれば、コスト引き下げが可能だし、FG内部での内向きの競争が減るだろう。

 第三に、ものをいう大株主が存在しないため、横並び経営がいまも続いていて、経営革新を推進すべきだという圧力がかからない。日本人ばかりが年功で経営者になっているので、めまぐるしい世界の潮流から取り残されている。まず改革で着手すべきは、経営トップを外部から引っ張ってくることである。ソニーや日本板硝子のように外国人経営者をトップに据えるのもいい。行員にも、外国人を大量に採用して、実力主義の社風に変えるべきだ。

 第四に、いまも多い株式持ち合いをすっぱりとやめることだ。また、国債を大量に抱えているのをごくわずかにすることだ。価格下落リスクが大きいことを知っていながら、保有し続けるのは背任的な行為である。

 第五に、いまだに土地などの担保を受けて融資するというビジネスが多い。かつてのように、人を見て、あるいは事業の将来を見て融資するか否かを判断するように担当者を鍛えねばならない。

 いまの政府は郵便貯金を国有事業として強化拡充しようとしている。銀行界はそれに反対しているが、自らの収益力を高める経営戦略を打ち出すこともなく、ただ反対と言っているのでは、国民から銀行支持の声も出てこない。みずほFGに最も言いたいことだが、メガバンク、しっかりせよ。

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2010年5月10日 (月)

3月末の国債残高は720兆円に

 財務省が10日に発表したことし3月末の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によると、内国債が720兆4890億円(前年比+40兆0408億円)、借入金56兆4063億円(同-1兆1598億円)、政府短期証券106兆0281億円(同-2兆4545億円)で、それらの合計は882兆9235億円(同+36兆4265億円)だった。

 内国債のうち、普通国債は593兆9717億円(同+48兆0360億円)、財政投融資特別会計国債が122兆2253億円(同-8兆8248億円)だった。たった1年の間に48兆円もの国債が上積みされたというのは驚くべきことだ。国民1人当たり約40万円もの“借金”を新たに負った計算である。国民の1人として、「そんなことを承知した覚えはない」と言いたくもなるような話である。

 実は、上記の債務882兆円のほかに、政府保証債務現在高として46兆5960億円(同+1兆1667億円)がある。それを足すと、トータルの債務は929兆5195億円(同+37兆5932億円)にまで膨らむ。

 いまの政府首脳は一部を除いて巨額の債務に不感症になっているようだが、市場の信任を失えば、いつ金利が上昇してもおかしくないところまで財政悪化が進行してしまっている。

 OECDのバリー・アンダーソン公共政策・地域開発局長は「信頼に足る財政再建プランの策定や公表は、インフレや通貨の不安定化の可能性を減じるという点で経済の回復に有効と言える。信頼に足る財政再建プランが無ければ、市場の要求する公債リスクプレミアムは拡大し、確実に景気回復の足枷となる」と指摘している(1月19日開催の国際コンファレンス「危機後の財政政策の課題」=「ファイナンス」4月号)。

 同局長が言うように、明らかに、現在の財政赤字のレベルを持続可能なレベルにまで引き下げる「出口戦略」の策定と公表が必要である。それは政府の信用を高め、ひいては、出口戦略を実行するための手段を多様化させる。

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2010年5月 7日 (金)

菅副総理の会見発言

 菅副総理兼財務大臣兼経済財政政策担当大臣は4月30日の定例記者会見で、「ニュース的には、他の問題のほうを皆さん方報道されるのはそれぞれの立場ですから仕方がありませんが、(中略)この問題(財政健全化)のほうが、国民的には、扱いを間違うとより大きなマイナスを受ける問題だと思っておりますので、そこに全力を集中することが今の私の立場」だと語った。

 財務省詰めの新聞記者も、小沢幹事長の政治資金問題や鳩山首相の普天間基地問題に関して菅副総理の見解を問うので、そんなことよりも財政再建のほうが取材上、重要なテーマではないのかと切り返したやりとりである。

 この日の会見の前段で、菅副総理は「日本という国自体がこの(財政健全化の)対応をしっかりしないと、それこそギリシャのような状況に陥りかねない」、「この問題にしっかり対応できるかどうかが最も問われている」と述べている。

 財務大臣という立場になって、日本国の財政がいかに深刻な事態になっているのかを初めて認識したのだろう。鳩山首相が総理大臣になって、初めて日本にとっての沖縄の米軍基地および日米安全保障条約の役割・意義を認識したのと似ている。

 野党時代には、無責任な約束手形を発行しまくることができたものの、政権を握り、日本の運命を左右する権力者になった以上、鳩山政権は国民の将来を真剣に考えて、「良薬は口に苦し」だろうと、最適の政策を掲げ、実現していく義務がある。その意味で、菅発言を一歩前進と受け止めたい。

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2010年5月 3日 (月)

変動金利型住宅ローンにひそむ恐怖

 歴史的とも言うべき日本の超低金利がこれからもずっと続くのか、それとも財政破綻によって近い将来、高金利に転じるのか。住宅ローンを借りる人たちは、そのどちらになるのかによって大きく影響を受ける。

 住宅金融支援機構の民間住宅ローン利用者実態調査によれば、ことし2月には、変動金利型ローンを利用した人の割合が54.2%だった。金利固定期間選択型ローンの利用者は29.9%、全期間固定金利型ローンの利用者は15.9%だった。それ以前の1年間をみても、変動金利型が5割前後、全期間固定金利型がおおむね10数%、金利固定期間選択型がおおむね30数%である。

 このように変動金利型を選ぶ人が多いのは、いまも続く超低金利を反映して、元利合わせた月々の返済額が少なくてすむからだろう。そして、多くの人が返済能力ぎりぎりまで目一杯借りていると思われる。

 だが、日経のホームページに住宅コンサルタント、平賀功一氏が書いている『変動金利に忍び寄る「未払利息」の恐怖』を読むと、長期金利が上がり出したら、住宅ローンの返済ができなくなって、住宅を手放さざるをえない人が続出することが予想される。

 金融機関が提供している元利均等返済の変動金利型住宅ローンは5年ごとに月々の返済を一定額に決める。そこが曲者だ。5年間の途中で市場金利が上がろうと、返済額は変わらない。しかし、金融機関は適用金利を6ヵ月ごとに市場金利に合わせて変動させている。したがって、月々の利息支払い額は6ヵ月ごとに変動する。そして、返済額から利息支払い分を引いた額を元本返済に充てる。

 つまり、月々の返済額は5年間変わらないが、その間に市場金利が上がれば、月々の利息支払い額が増える。月々の返済額からこの利息支払い額を差し引いた残りが元本の返済に充てられるのだから、金利が上がると、当然、月々の元本返済額が減る。

 金利上昇によって利息支払い分のほうが月々の返済額を超えることもありうる。そのときは、未払い利息がたまって、返済元本に上乗せされる。当然、それをもとに次の5年間の月間返済額を決めることになる。超低金利が是正されていけば、月々の返済額は猛烈に膨らむことになる。

 そうした住宅ローンの仕組みをローン利用者は知っているのだろうか。ローンを提供する金融機関は金利が上昇した際のこうした返済リスクをきちんと利用者に理解してもらっているのだろうか。米国のサブプライムローン問題同様、ローン返済ができなくなってマイホームを手放すという事態が近い将来、起きる危険があるように思う。

 住宅ローンの期間は30年とか長期にわたる。これからの10年、20年、あるいは30年間、過去の超低金利がそのまま続く確率はきわめて低いと見ざるをえない。であれば、変動型の住宅ローンを、利用者が十分に理解しないままに、金融機関が提供するのは、利用者の自己責任を考慮に入れてもなお問題があるのではないか。

 政府もこれを放置しておいてはいけない。

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2010年5月 2日 (日)

坂野元大蔵省証券局長が財政改革を訴える

 大蔵省証券局長、日本化薬社長などを務めた坂野常和氏から「我が国の財政は大丈夫か!」と題する文書が送られてきた。

 「これまで国債の安定消化の基礎と考えられてきた1450兆円の家計金融資産も、負債400兆円を差引けば残りは1000兆円余りであり、それは預け先の金融機関や証券会社等を通じて、大方は国債等の長期債務の消化に充てられていますから、依然経済大国であるとはいえ、日本の余力はかなりギリギリに来ていると考えるべきでしょう。このような状況の下で民主党は4年間消費税を上げないというが、果たして大丈夫なのか」。

 「今、大切なことは、歳出削減を第一にしつつも税制改革も同時併行して進め、危機を脱する姿勢を示すことではないか、と私は思います。それでないと市場や格付機関がしびれを切らしてしまわないか、心配で仕方ありません」。

 坂野氏は友人の五十畑隆氏(産経新聞客員論説委員)からいただいた論文を多くの人に読んでもらいたいと、そのコピーを添付している。その論文は「財政再建を最高の政策課題に――目標年次を設定し消費税の増税を――」というものである。以下に、五十畑論文のさわりを紹介する。

 「周知のように日本の財政は、すでに破綻同然であり現状のまま放置すると数年もへずに国債価格ひいては円相場が大暴落し、国民経済が大混乱し大打撃を受けるはずである。‥(中略)‥国民の側からの積極的な改革実行のための提案・要求が必要である」。

 「民主党政権は間もなく2011年度予算編成の基本方針づくりに着手するが、その際まずは国債発行額を国債の償還と利払いとに充てる国債費(2010年度は20兆6491億円)以下と決めるべきである。いわゆるプライマリバランスの回復である。それを実現してこそ政府が財政再建に踏み出した、ということになる」。

 「現状で2012年度に財政再建を実現するのは不可能である。そこで次の総選挙の年となるだろう2013年度、つまり3年後に実現すると公約してはどうか」。(前の項とこの項とのつながりがいまひとつわからない=引用者)

 財政再建をいかに進めるべきか。「まず一にも二にも、財政支出を削減することである」、「最大限の歳出削減の努力なしには増税など不可能であることも国民は知っている」、「2011年度予算の編成では、歳出の全項目について前年度比マイナスとしなければならない」、「昨年夏の総選挙で約束したマニフェストによる歳出増を伴う政策を廃止または抜本的修正をし、歳出増を抑え込めば良い」。

 「政治家は及び腰であるが、実は多くの国民は歳出削減と埋蔵金発掘に全力をあげたとしても財政再建が不可能である、と正しく理解している」、「政府は、いますぐに増税を伴う税制改革を断行しなければならないのである」。

 福祉政策や法人税減税、地方に消費税収入の一部を回すことなどを踏まえると、「段階的な増税になるとしても消費税率は15%以上に上げざるをえない、と政治家よりも国民が認識する必要があろう」。

 「日銀がゼロ金利で資金を供給し金融市場の混乱を防いでいるが、要するに日本の国債は供給過剰なのである」。「市場の反乱は爆発寸前になっているのではないだろうか。数年先を展望すると、いまや日本の財政・金融は、あの第二次世界大戦での敗戦時のような大混乱を迎えようとしている。まさに市場の反乱である。‥(中略)‥危機感をもつことと坐して死を待つことは同じではない」。

 論文の締め括りは大きな文字で「国民の力で政治家を動かし、直ちに正真正銘の実効ある財政再建に踏み出し、日本沈没を未然に防ごうではないか」となっている。

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