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2010年5月26日 (水)

世界のビジネストレンドに後れる日本企業

 20世紀後半のビジネスをウオッチしてきたが、21世紀のビジネストレンドの変容ぶりには目を見張る。

 石炭(原料炭)、鉄鉱石など資源の価格変動は実に激しい。長期取り引きは安定的な価格だったのが、スポット取り引きに近い契約形態に変わりつつある。1年ごとの価格見直しから、スポット契約の価格(市況)を反映しやすいように4半期ごとの契約にするとか、である。開発・供給に当たる売り手企業が合併・統合で寡占化し、価格支配力を強めている事情もある。BHPビリトン、リオ・ティント、ヴァーレなどがそうだ。

 これまで、日本の鉄鋼メーカーはオーストラリアなどの資源開発で15年とかの長期引き取り契約を結び、主原料を安定確保してきた。だが、中国の鉄鋼産業の発展で、原料を奪い合う環境に追い込まれ、鉱山側に価格主導権を奪われた。日本の鉄鋼メーカーは国内の自動車、電機業界との鋼材価格決定を、やはり4半期ごとに切り替えるよう求めざるをえなくなった。鋼材の需要業界もまた、コストがちょくちょく変動することを前提に経営することをよぎなくされる。玉突き的に、経済全体が価格変動に振り回されやすくなる。

 こうしたトレンドに対し、中国の鉄鋼業界では買収・合併で企業規模を大きくし、鉱山側の価格支配力に対抗しようとしている。世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロールに次ぐ巨大な鉄鋼企業集団が中国にいくつもできている。日本の普通鋼大手メーカーは高級鋼材に特化しつつあるが、研究開発費の負担などを考えると、さらなる合併・統合で事業規模を大きくする必要に迫られるかもしれない。石油などを含め、海外での資源開発にオールジャパンで投資する仕組みを工夫するのはどうだろう。

 鉄鋼などと同じことが、サムスン電子など韓国のエレクトロニクスメーカーに後塵を拝している日本のエレクトロニクス業界にも当てはまる。半導体、テレビなどの分野ではある程度集約が行われたが、サムスン電子などに比べると、企業規模、投資規模、意思決定などの点で後れをとり続けている。もっと合併・統合を急ぎ、経営陣も年功序列の従来型を脱する必要がある。日本の大企業の中には、社内公用語を英語とし、外国人を経営者に登用するところが出てきたが、もっともっと、グローバルな視点で多様な民族、文化などを経営革新に生かす努力がビッグビジネスに求められる。

 最近、レナウンに中国の山東如意集団が4割出資すると発表された。少し前には家電販売のラオックスがやはり中国系企業に買収された。日本の企業を買う中国企業の動きが目につくようになっている。中国の企業は自動車・同部品、エレクトロニクスなど開発や生産の技術などをねらって先進国企業の買収を進めている。日本ではリゾート関連の購入も行なっているという。現在の先進国のように、企業経営が不振で株価が下がると、企業買収が容易になる。20年も経済が停滞している日本では、これからもっと中国企業による企業買収の対象が増えるだろう。

 日本は中国よりも技術的に進んでいるというような言い方をする。しかし、日本企業を買収すれば、ノウハウなどをはじめとして簡単に手に入る。それを止めるすべはない。そう考えていくと、日本企業独自の強みは何かがあいまいになる。グローバルなビジネスであろうと、ローカルなそれであろうと、技術、品質、デザイン、価格、納期、販売手法、アフターサービスなどで顧客の心をつかむ製品・サービスを提供できる企業が強いということなのだろう。

 身の回りの事例だが、ビールの小売価格は銘柄ごとにまちまちだ。その中で、サントリーの「プレミアム」は一番高く、デフレの中で、発売当初よりも値上がりしている。他方、化粧品の小売価格は過去数年、値下がりを続けている。かつては資生堂、カネボウがほかより値引き率が小さかったが、いまでは全体に値引き率が大きくなり、かつ一律である。市場の選別で勝ち残れるだけの優位性、特長がある製品・サービスこそが決め手である。

 途上国が鉄道、水道、原子力発電所などの社会インフラを整備するためには巨額の資金を必要とする。そこで、先進主要国はそれぞれ自国の企業と一緒になって資金提供などの援助や施設設置などをパッケージで売り込む官民協調体制をとるようになった。国によっては軍事援助と組み合わせて受注するところさえある。日本企業には単品では国際競争力を持っているところが少なくないが、途上国の社会インフラ整備においては、国が先頭に立たないと相手にされない。

 日本経済が今後、成長路線に乗るためにも、政府は世界的な潮流を踏まえて、企業の輸出や競争力強化に手を貸さなければならない。今後、資源輸入費用が上がり、かつ日本企業が日本より有利な海外に工場などをシフトしていくと、貿易収支が悪化するという事態が予想されるだけに、政府は日本国内のビジネスを大事にすべきだろう。

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