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2010年6月20日 (日)

太地町のイルカ漁を撮影した映画「ザ・コーヴ」

 映画館での公開に反対する活動もあって、注目されている米国のドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」を試写会で見た。和歌山県の太地町は古式捕鯨発祥の地とされているが、そこでのイルカ漁の実態を、地元の人たちの妨害を潜り抜けてひそかに記録したものである。

 今日、イルカは水族館などのショーで人気者である。愛らしいし、知的能力が高いので、さまざまな芸ができる。それに、人々はイルカと触れることで癒されることもあるからだ。しかし、イルカは海洋では1日に数十㎞移動するし、集団で行動する。それが水族館などに閉じ込められると、ストレスを感じ、病気になったり、時には自殺する(呼吸を止める)とリック・オバリーは言う。

 オバリーは1960年代に米国のテレビ番組「わんぱくフリッパー」でイルカの調教師兼俳優だった。彼はのちに、イルカショーがイルカを苦しめていることに気付き、イルカ解放運動の先頭に立つようになったという。太地町に来たのは、イルカ漁を止めさせたいという問題意識からで、米国の知人らの応援を得てイルカ漁の実態を撮影しようとした。しかし、イルカを網で海岸の入江近くに追い込み、ショー用に高く売れるものと、そうでない、食用に回すものとに分け、後者を銛のようなもので刺して殺す現場は外部の人間には隠されて見えない。そこで、ひそかにカメラを仕掛けて、撮影に成功する。映画の“007シリーズ”ではないが、どうやって撮影に成功するかが見る者をはらはらさせる構成である。

 銛のようなもので次々に刺殺するから、イルカがのたうち絶命する様子が見え、入江は血で赤く染まる。その映像は生々しい。おそらく、この映像が映画公開反対のポイントなのだろう。

 映画は、IWC(国際捕鯨委員会)が鯨類の一種であるイルカを保護する活動を全くしていない点を批判し、また、捕鯨やイルカ漁についての日本政府の官僚の発言を取り上げている。食物連鎖の頂点にあって水銀が蓄積されているイルカの肉を食べるのは健康を害するといった指摘もしている。

 この映画には、「くじら供養碑」がちらっと映っている。この映画を撮影、制作した米国人たちは、この碑の意味に気付きもしなかったようだが、そこに、この映画の問題点があるように思える。人間が生きていくうえで、動物、植物などの生命を食べざるをえない。だから、それらに感謝と原罪を感じ、日本人は慰霊碑をつくるのである。これに対し、動植物を人間が支配する対象としか見ないキリスト教世界は、哺乳類の鯨類だけは人間の仲間として、その他の動植物と分けて考えているようだ。そうした問題も改めて考えるべき時なのだろう。

 ところで、長い歴史がある捕鯨方式だとはいえ、それが今日の日本人の多くが賛成するものかどうかはわからない。それに、鯨やイルカの肉を食べる人はごく少数になっている。そういう時代の変化もこの問題を考える際の重要な視点である。

 

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