« 「08年度 国の財務書類」から | トップページ | 消費税引き上げが参院選挙の争点になったが »

2010年6月30日 (水)

“カンジアン”神野良彦氏の税・財政論

 菅内閣の税制調査会は閣僚だけで構成されている。同会の下に設けられている専門家委員会の委員長である神野良彦東大名誉教授は菅首相の税・財政のブレーンなので、ケインジアンをもじった“カンジアン”の有力な1人とみられている。専門家委員会が最近まとめた「議論の中間的な整理」をもとに、同氏が税制改革のあるべき姿について、自らの見解を6月30日の記者会見で語った。その中から、印象に残った点を私の解釈を含めていくつか挙げる。

 「強い経済→強い財政→強い社会保障→強い経済‥‥」の好循環を創り出すという同氏の主張の背景には、産業構造が短い間に変わるようになったのだから、企業も働く人々もそれに対応できるような社会にせねばという問題意識がある。男が働き、女が家庭を守るという第二次産業中心の時代と違い、いまは女性労働力が前面に出てきたうえ、産業構造が10年もすれば大変わりするような時代である。したがって、国民が新しい産業で働き、かつ暮らせるように、新産業に必要なスキルなどを身につける教育・研修の場を提供する必要がある。人的能力の高い人は雇用されないはずがない。[かつてブレア英国首相が就任したときに「一に教育、二に教育‥‥」と言ったのを思い出す。]

 変化の激しい社会で、経済成長と雇用確保および社会的正義(所得の平等な分配)を実現するためには、セーフティネット(生活保障・活動保障)をきちんと張り、企業も働く者も安心して産業構造の転換にチャレンジしやすいようにせねばならない。そうしたセーフティネットが「社会的トランポリン(安全網)」である。

 しっかりとした「社会的トランポリン」を張ること、つまり「強い社会保障」を実現するには、国債発行などの借金に依存せず、経済成長や消費税率引き上げなどで税収を増やす「強い財政」が必要である。

 以上、「強い社会保障」があれば、企業も働く者も、産業構造の転換に積極的に取り組み、経済成長、雇用確保、所得の平等な分配を実現しやすい。それが「強い経済」をもたらす。「強い経済」は税収増加によって「強い財政」を支える。そして「強い財政」は「強い社会保障」を可能にしてくれるというわけだ。

 1929年の世界恐慌では、金本位制のもとで価格メカニズムが働き、産業構造の転換が一気に進んだ。しかし、現在は管理通貨制度で、恐慌が起きないようにとどめている。その間に産業構造の転換を図らねばならない。衰退する産業から次の産業へと転換させるのは金融の役目である。

 日本は西欧諸国に比べると、消費税率が低すぎる。上げる余地(タックス・ルーム)が大きい。しかし、余地をなくせというのは反対だ。すべての税金で、わずかずつ上げるやり方が賢い。いつ何が起こるかわからないから、上げる余地があるのはいいことだ。

 法人税(引き下げ)について、峰崎財務副大臣が国際的な協調を呼びかけた。それは必要である。社会保障についても、その内容について国際的な協調を行なうべきだ。さもないと、政府の責任が果たせないおそれもある。環境関係の税も国際的な協調が必要である。

 日本政府の予算編成のやりかたはおかしい。外国では年度初めに予算編成方針、どういう政策価値を実現するかが示されるのだが、日本にはそれがない。しかも、予算案をめぐる審議が閣内でも、国会の予算委員会でも、ほとんど議論されない。

|

« 「08年度 国の財務書類」から | トップページ | 消費税引き上げが参院選挙の争点になったが »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/48762853

この記事へのトラックバック一覧です: “カンジアン”神野良彦氏の税・財政論:

» 雇用契約書 書式 [雇用契約書 書式]
雇用契約書 書式についての情報です。 [続きを読む]

受信: 2010年7月21日 (水) 15時59分

« 「08年度 国の財務書類」から | トップページ | 消費税引き上げが参院選挙の争点になったが »