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2010年7月 2日 (金)

消費税引き上げが参院選挙の争点になったが

 菅直人総理大臣が参議院選挙の演説などで消費税の引き上げを積極的に訴えている。鳩山由紀夫氏が首相のまま選挙戦に入っていたら、消費税引き上げは自民党が取り上げても、民主党が無視し、選挙の争点は全く異なるものになっていただろう。

 これまで、選挙民にいやがられるとして、各政党は消費税引き上げに真っ向から取り組むことを避けてきた。しかし、ギリシャの財政破綻を契機に、国の債務がはるかに重たい日本が、これ以上、財政悪化を放置できないことは明々白々である。自民党のマニフェストに呼応して、菅首相が民主党内の論議抜きに、消費税引き上げを与野党で論議しようと問題提起したことはよかった。

 ただし、年収200万~300万円以下の低所得層には消費税を還付するとか、300万~400万円以下の層に還付するとか、演説のたびに内容がころころ変わるのはいかにも思い付きで、いただけない。まして、年収350万円以下の家庭が4割に達するという計算もある。気易く還付と口にするが、そのための制度づくり、そのコストがいかに大変なものか、菅首相は全くわかっていない。下手に各論に触れ、国民におかしな予断を与えると、財政を含む諸改革の実現が難しくなる。野党時代のように実務を知らないまま勝手にしゃべるのは百害あって一利なし、ということを自覚すべきである。

 消費税引き上げを与野党で一緒に議論しようと呼びかけている一方で、引き上げの具体的な内容について菅首相が一方的に、ああする、こうする、と言うのは理屈に合わない。総理大臣になったら、日本が目指すべき道を大枠で示し、各論は大臣以下に任せたらいい。国を預かるという重さをじっくりかみしめてほしいと思う。

 ところで、消費の引き上げによる税収を社会保障の充実に振り向けるという主張を政党、政治家から聞く。しかし、これは日本財政が巨額の国債などの債務を抱えているのを忘れているか、軽視している主張である。財政破綻を回避するには、まずプライマリーバランス(PB)をトントンにすることから始めねばならない。トントンになっても、債務は減らない。財政危機はそれほどに深刻なのである。

 2010年度の予算ではPBの赤字が20兆円を超す。計算上、消費税を9%近く上げねば、トントンにならない。いまの制度のまま、社会保障をもっと充実するには、さらに増税が必要である。

 しかし、国際比較をすると、所得税の課税最低限を引き下げて、所得税を納める人数を増やさねばならないし、所得税の最高税率を引き上げる必要がある。そして、一方で、法人税の引き下げが欠かせない。それらを実施していくためにも、段階的にせよ、消費税の大幅引き上げが求められる。税の面から見ると、そうせざるを得ないが、いまの歳出には相当に節減できる部分がある―ことに社会保障分野で―ことも事実だ。財政健全化には、それらのすべてを国民に受け入れてもらわねばならない。半面、経済成長の実現策も大事である。現在の政治家はそこまでの理解と覚悟をすべきだ。

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