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2010年7月25日 (日)

菅首相の指導力がみえない予算編成

 政府の予算編成シーズンに入った。だが、参議院選挙で思わぬ敗北を喫したせいか、菅首相の指導力は全くうかがえない。これが1年弱前に自民・公明政権を打倒し、政治主導を高らかに宣言した新政権か?と疑いたくなる。

 国の一般会計、特別会計を通して、当該年度において、どのような政策を実施するか。そのための財源をどこに求めるか。それが政府の予算編成の基本である。その際、その前提として、国内外の今後を展望して、日本国をどのような国家、社会にしようと考えているのか、国民生活や経済のあるべき姿をどのように描いているかなどを明確に示し、その実現のための行程表および2011年度分として予定している内容を明らかにする必要がある。もちろん、それらは全体として整合性がなければならない。

 そうした点から見ると、菅内閣が進めている予算編成は問題だらけであり、それは新聞等でも指摘されている。

 しかし、ここで、改めて予算編成に関して注文したいのは、財政健全化への取り組みを予算編成において片時も忘れないことである。各省庁の政策経費を原則1割削減するなどというのは自民党政治そのままだが、それは予算編成を各省庁の官僚に依存しているからだ。それでは削るべきものも削れない。

 歳出面で政権の掲げる政策を実現するには、自民・公明連立政権下の経済財政諮問会議のようなもので予算編成の基本方針を決定することが望ましい。そうしないと、政治主導にはならない。その点で、国家戦略局構想を説明もなしに廃棄したのはどう考えても納得できない。

 第二に、国債費を除いた一般会計の歳出を71兆円と今年度並みに抑えるというと、いかにも財政健全化に即した予算のように聞こえるが、実際には、税収の2倍近いのである。不足する財源をまかなうためには、巨額の国債発行、ないし埋蔵金の取り崩し・流用が必要で、日本国の財政がいっそう悪化することを見落としてはいけない。

 第三に、一般会計の歳出のうち、最も大きいのは社会保障関係予算である。しかも毎年1兆円以上増えている。しかし、菅政権はそこにメスを入れようともしない。医療であろうと、介護であろうと、社会保障関係予算には、実にムダ遣いが多い。ただ、専門家にしても、それをうっかり口にすると、四方八方から叩かれるから黙っているようにみえる。

 例えば、医者に行ったことがある人の多くは、医師が処方したクスリを使わないで捨てた覚えがあるだろう。また、薬局で支払うクスリ代の内訳をみたら、何で、こんなことに、こんなにおカネを払うの?、という疑問が生じるだろう。保育所と幼稚園の制度一本化がいまだにできないのも、予算のムダ遣いである。いまの政権には、社会保障関係の歳出が増えるのは当然という単純な思い込みがうかがえる。そんなことをしていたら、ますます財政破綻に近付く。

 菅首相は参議院選挙まで消費税の引き上げが必要だと主張していたのに、選挙後は黙ってしまった。しかし、IMFは日本政府に対し、消費税を早期に引き上げるよう求めているし、最大野党の自民党は選挙で消費税引き上げを掲げて、当選者を増やした事実もある。したがって、ねじれ国会を踏まえ、民主党は財政健全化のために、消費税引き上げおよび関連する年金制度改革などについて自民党などと協議を始めるべきだろう。

 民主党の党内政治ばかりを気にして、国政をおろそかにしているようにみえる菅首相。いまこそ、国民のため、将来のため、主要な政策課題について議論し、結論を出すよう、国会で論戦を始めるべきではないか。リーダーシップを発揮してほしい。 

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