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2010年8月29日 (日)

フェルドスタイン教授の日本への提案

 29日の朝日新聞朝刊に載った米ハーバード大学のマーティン・フェルドスタイン教授インタビューは、日本経済についての同教授の意見がとても興味深い。デフレと大規模な財政赤字に苦しむ日本経済に対するアドバイスである。

 消費税の増税を小刻みに「例えば、1%ずつ、3カ月や6カ月ごとに上げ、それを数年続ける。その一方で、その分を所得減税すればいい。」と言う。そうすれば、「財政赤字を増やすことにはならないし、家計には『消費増税で価格が上昇する前に買うべきだ』というメッセージを送ることができる」。その結果、内需が増え、物価も上がり、デフレ脱出につながるというわけだ。財政出動による内需拡大というバカの一つ覚えとは異なる政策オプションである。

 マクロ的に見ると、国民は膨大な預貯金を持ちながらも、それを取り崩して消費に充てようとはしない。だが、「物価が上がると思えば、人々はいまモノを買おうとする」。そうなれば、内需は増え、物価も上がる。結果として、デフレが解消する。国内経済は拡大し、税収も増えて、財政赤字は縮小に向かう――そうした波及効果が期待できるということなのだろう。

 目下、日本経済は円高にどう対処するかで大変だ。デフレは続いている。財政赤字は累増して、危機的な水準にある。このため、日銀はさらなる金融緩和に踏み切らざるをえない状況に追い込まれている。また、党総裁選をめぐる民主党内の権力抗争で、政治はほとんど停滞している。消費税引き上げ論議は封印されてしまったし、2011年度予算編成でも過度の国債依存が続きかねない。

 日本でも、かつて所得減税と消費税引き上げとをセットで導入したことがあるが、所得減税先行の形をとったためもあってか、国民の抵抗は少なかった。したがって、日本が長期のデフレからいまだ抜け出られず、しかも、累積財政赤字で動きがとれないという状況を踏まえたフェルドスタイン教授の提案は、日本経済の再生をもたらす可能性がある政策提言と言える。

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2010年8月26日 (木)

公務員・議員の給与・報酬引き下げ

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が専決処分を乱発しているとして、市民によるリコールが行なわれ、またまた市長選挙が行なわれそうだ。専決処分は最近の議会で片っぱしから否決され、県知事、総務省、そしてマスコミも市長の行き過ぎを批判している。また、市民税減税をかかげて当選した名古屋市の河村たかし市長は、市会議員の報酬を半減する条例案を市議会に提出し、否決されたが、河村市長を支持する側の市民は市議会の解散・選挙を求める運動を始めたという。民主、自民、公明の三党市議団は現在の年間議員報酬を約120万円下げて1400万円弱にする妥協案を固めたとの報道もある。

 地方自治体の公務員・議会議員に対する給与・報酬を引き下げようという動きはこれまでも散発的に起きている。その背景にあるのは、一つには自治体の財政難であり、いま一つは、地域住民の所得水準に比べて、あるいは公務員・議員の労働時間や成果に対して、給与・報酬が高過ぎることである。

 阿久根市の竹原市長が議会にかけないで副市長を決めたり、市役所職員のボーナスなどを引き下げたりしたことについて、その強引なやりくちが反発を買っているのは間違いない。しかし、市職員の給与やボーナスが地域住民の平均所得を相当に上回っているのを是正すべきだと思っている住民は少なくない。

 ことの本質は、公務員給与や地方議会議員の報酬額などが高過ぎることにある。そして、自治体職員および議員は、地方財政が窮迫しているにもかかわらず、地域住民の所得水準をかなり上回る給与・報酬等の維持を当然視しているのである。多くの首長は職員労組との関係等を優先しているので、結果として、公務員・議員天国が続いているわけだ。その分、例えば学校図書館の図書購入に回すはずの予算が減らされたりしている。暮らしが後回しにされているわけだ。

 民主党は、衆議院選挙のマニフェストで、国家公務員の人件費を2割削減すると公約した。地方公務員の給与水準は国家公務員に準ずるので、民主党政権がマニフェストを遵守すれば、地方公務員の総人件費も2割程度減るはずだ。マニフェストを実現すれば、国および地方財政の合計で5兆円以上の歳出が減る。2011年度の予算編成が財源不足で難航しているが、この公務員人件費カットは天の恵みとなりうる。

 しかし、菅首相は公務員人件費2割削減には触れないし、また、マニフェスト遵守を掲げて9月の民主党総裁選に出馬すると表明した小沢一郎前幹事長も、全くこの公務員人件費削減というマニフェストを無視しているようにみえる。

 デフレの長期化で、給与水準が民間より高く、年金も多い、クビになる心配もない、仕事は楽で、適当にやっていればよい(戸籍上、百何十歳という国民が多数生きていることになっている、などというのはそのいい例)という公務員になりたい若者が増えている。それでは、日本の将来は明るくない。 

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2010年8月23日 (月)

奇妙な静かさ

 きょう23日は、昼間はあまりにも暑くて都心を歩くときは日陰を求めて歩いた。しかし、夜になると、涼しい風が吹いた。きょうは処暑、即ち、暑さがやわらぎ、朝夕、段々、冷気が加わってくる時というから、酷暑の終わりも近いと期待したい。

 円高は1ドル85円あたりでかんぬきが入ったようにも見える。日本の輸出企業の多くはいまのレートが長期化したら、収益がかなり悪化する。米、EU、中国といった主要経済圏は現状の為替レートを変えないほうが自国の輸出などに好都合なので、円高で日本経済が困っているなんてことには無関心だ。したがって、日本が、いまの円相場をもっと円安に戻すべきだという意思表示をしなければ、円高の是正は簡単には進まないかもしれない。

 菅首相はきょうから民主党の衆参1年生議員を呼んで、対話を始めた。9月の党代表選挙を控えた運動とされる。そして、同じ日、白川日銀総裁と電話で為替市場や経済情勢について話し合ったという。いまの円高が日本の産業、企業や国民生活に及ぼす影響を政策にどう反映するかは、現下の最重要政治課題である。そのためには、都内にいる両人が直接会って話さなければ、ベストの政治判断はできない。

 だが、菅首相は、電話で話し合うにとどめた。1年生議員との対話を優先したのである。菅首相は消費税に関する発言もいい加減だったが、為替動向について、その意味をろくに理解していないのではないか。1年生議員もまた、円高について菅首相に適切な判断と対応を求めるなんてこともしなかっただろう。

 民主党内の反菅グループ、つまり小沢支持派は、きょうの菅首相の対話集会に欠席するよう新人議員に働きかけたという。首相が声をかけても無視せよというのは、内輪もめもいいところだ。いま日本経済が厳しい状況にあるということなぞ、彼らの眼中になさそうである。私の周囲で、民主党を支持してきた人たちも皆、民主党の内部権力抗争にあきれかえっている。

 そして、一番、民主党に影響力のある労働組合のナショナルセンター、連合が民主党にひとこともモノ申さないことにも皆、あきれている。内向きニッポンもここまで来ているのだ。救いはないのか。

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2010年8月19日 (木)

ぞっとしない民主党“ゾンビ”の復活?

 猛暑というか酷暑というか、熱中症による死者が多数出ている今夏。少しでも涼しくしてやろうというのか、民主党の総裁(総理大臣)-幹事長をついこの間やめたばかりで、静かにしているはずの鳩山由紀夫ー小沢一郎のお二人がゾンビのごとく動き出している。確かに、ぞっとする。

 首相・党総裁を退き、政界からの引退を示唆した鳩山氏は最近、中国を訪問し、温家宝首相と会談した。19日には、軽井沢で開かれた鳩山グループの研修会に出席してあいさつ、あと、小沢グループの議員も参加したパーティーを鳩山氏の別荘で開いた。そこには小沢氏も顔を出した。小沢グループの主要なメンバーも加わっていて、あたかも反菅決起集会のようである。

 9月の民主党総裁選挙を控えて、党内権力闘争が本格的に始まったということだろう。小沢氏が名乗りを上げることを期待する議員が多いが、小沢氏が立たなければ、小沢グループないし鳩山グループから菅直人氏の対立候補が出てくるとみられる。

 だが、鳩山、小沢の両氏は政治とカネなどの問題で、国民が納得する説明を国会で行なうよう求められても、それに応じなかったことはまだ記憶に新しい。鳩山氏が首相・総裁を、小沢氏が幹事長から退いたというだけで、堂々と国民の前に大手を振って歩ける状況ではない。まして、常識的にみれば、グループを主宰することすら、おかしい。菅首相は国会答弁で、両氏が辞職によって責任をとったという解釈をしていたが、それに納得するほど国民は馬鹿ではないと思う。

 昨年の総選挙で民主党が掲げたマニフェストは、政権をとりたいがために、与党を徹底的にくさし、バラ色の公約をいっぱい盛り込んでいた。しかし、政権の座に就き、国政を担ったら、無理な公約を取り下げ、あるいは修正するのが当たり前だ。そんなことすら、ろくにできないまま、党内の政権争いが続いているのが現在の民主党である。これでは、国民に愛想をつかされ、海外からは内向きで存在感がないため、無視されるだけだ。日本経済の危機は深まる一方である。

 しかし、以前にも書いたが、昨年の衆議院選挙で当選した民主党の国会議員は、このような国難にきわめて鈍感である。国政上の数限りない難題に対し、自分の限られた知識や経験だけで対処しようという低レベルの議員が多いからだと思う。要するにわかっていないのである。だから、○○グループなどという派閥に所属して、ボスの言う通りに動いている。猿山の猿のごとく、群れていると言ったら失礼にあたるか。

 民主党は政党が備える綱領すら持たない。要するに、政治理念や理想などを共有する政党ではなく、権力の座をめざすという一点だけで集まっている集団にすぎない。その本質がいま国民の前にさらけだされている。

 

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2010年8月17日 (火)

「平成21年度 医療費の動向」を読む

 厚生労働省が16日に発表した「平成21年度 医療費の動向」のデータを見ていると、興味深い傾向が読み取れる。全国の医療費は平成21年度に35.3兆円に達した。国の税収に近い。しかし、医療費のほうは毎年、1兆円前後増加しているから、デフレが続けば、数年のうちに医療費のほうが税収を上回りかねない。

 医療費は診療費と調剤に分けられるが、調剤は年々の増え方が速く、平成21年度には5.9兆円と医療費全体の16.7%を占めた。

 21年度の診療費は29.3兆円で、そのうち、入院が14.0兆円、入院外12.7兆円だった。また歯科は2.5兆円。外来(歯科は含まない)、つまり「入院外+調剤」だと、18.6兆円となる。全国医療費を100%とすると、入院が39.8%、外来が52.8%を占めている。

 受診延べ日数は微減傾向にあり、医科の入院、入院外ともに微減。法人の病院だけは入院受診延べ日数が増えている。しかし、大学付属病院や公的病院、法人の病院、診療所など医療機関別に見た概算医療費はどこも増加傾向が続いている。保険薬局の概算医療費は特に伸びが大きい。

 医科の入院1日当たり医療費は平成21年度に29240円(16年度25569円)。内訳を見ると、大学病院の入院だと55202円(同45935円)、公的病院では39594円(同33197円)などで、単位当たり診療費が年々高くなっている。これに対し、医科の入院外1日当たり医療費は7370円(同6584円)。大学病院に限ると14118円(同10827円)とほぼ倍近い。

 また、平成21年度の1人当たり医療費は平均27.6万円(平成16年度24.6万円)。70歳未満だけだと16.8万円(同15.7万円)にすぎないが、70歳以上だと77.6万円(同73.9万円)かかっている。さらに75歳以上にしぼると、1人当たり88.2万円にも達する。

 医療保険適用の医療費が70歳未満だと合計で18.1兆円なのに対し、70歳以上は15.5兆円に及ぶ。いずれにせよ、高齢化による医療ニーズの増加がそのまま医療費を押し上げていることが示されている。

 一方、都道府県別の概算医療費はどうなっているのか。受診者の1日当たり医療費が最も高いのは北海道で15991円、次いで沖縄県の15255円。それに石川県14808円、高知県14697円など地方が並ぶ。逆に最も低いのは佐賀県の12159円、次いで三重県12591円、埼玉県12714円、愛知県12761円と続く。

 以上に紹介したようなデータをどう解釈し、医療費のムダ削減、効率化を図ったらいいか。真剣に考える必要がある。高齢化に伴って増えるのは当然だという厚生労働省などの発想は無責任きわまる。

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2010年8月15日 (日)

日本再生の道はあるか

 日本経済団体連合会の月報『経済Trend』8月号と経済同友会の月刊誌『経済同友』7月号を読んだら、日本の現状に対する危機意識と改革の提案がいっぱいだった。日本経済はずっと低迷しているが、そこからどうやって脱するか。靖国参拝の是非を云々するのもいいが、国の根幹である経済の立て直しにもっと真剣にならねばならない。以下は参考に供すべきと思った部分の引用。

 ・岡本行夫(外交評論家)=日本の力はこのまま下がり続けるのか。「いまがその分岐点だ」と言いたいところだが、残念ながら、そのポイントは過ぎてしまった。政治は迷走し、外交は目標を失い、日米関係は不安定化し、財政は悪化し、競争力は後退し、国としての覇気もなくなっていないか。国際会議で「日本」という名前が言及される時は、「衰退しつつある」とか「下降の続く」といった形容句付きのことがしばしばだ。日本の最後のよりどころは、企業の競争力だ。‥‥(中略)‥‥要は、現状に妥協するのではなく、「必ず前に進むのだ」という意思を国全体が持つことだ。

 ・土居丈朗(慶応大学経済学部教授)=我が国では、依然として、企業に重税を課しても本社や生産・営業拠点を我が国に置き続けることに疑いを持たない国民が多数いる。しかし、現実はそうではない。

 ・岩井克人(国際基督教大学客員教授)=会社のあるべき姿についての正解は、誰かが教えてくれるものではない。‥‥(中略)‥‥いま、経営者に求められるのは、ヴォルテールが言うように「自分の畑を耕していくこと」にほかならない。“違い”が利益を生み出すという資本主義の単純で本質的な原理に立ち返って、自社の畑を耕していただきたい。【以上は『経済Trend』から】

 ・石原邦夫(東京海上日動火災保険取締役会長)=(日本は)いたずらに悲観するのでなく、政府は、いばらの道でも「こういう方法に進むのだ」という方向を示さなければなりません。5~10年先の将来像を示し、構成員のやる気を引き出すという点では、企業経営と同じです。

 ・前原金一(経済同友会副代表幹事・専務理事)=企業も、「もう1人採用運動」をするなど、若者の雇用に取り組むべきだと思います。‥‥(中略)‥‥財政健全化のためには、国民が等しく分かち合うことを覚悟しなければなりません。‥‥(中略)‥‥一方で、国の支出が多すぎるという問題もあります。地方空港はその最たる例でしょう。

 ・新浪剛史(ローソン取締役社長CEO)=財政問題や、経済成長でポテンシャルのある分野を伸ばすことも大切ですが、まず根本的に大切なのが若返りではないかと思っています。そのためには、「老」、「壮」が安心してリタイヤできる、もしくは起業や、NPOや社会的企業などで活動ができるような仕組みを整えていくべきでしょう。‥‥(中略)‥‥今のままでは高齢化とともに、企業のカルチャーも保守的になって、ますますチャレンジしない状況になります。

 ・小林栄三(伊藤忠商事取締役会長)=アジアの成長を取り込むことによるわが国の金融・資本市場へのメリットは大きいと考えます。まず、国内の余剰資金が有効に活用されます。配当・利子などの所得収支(黒字)や経常利益も改善します。またアジア向け金融ビジネスも活性化します。‥‥(中略)‥‥これには世界最高水準の市場の「質」を目指すことが重要です。‥‥(中略)‥‥企業は異なった国籍、性別、文化を持つ多様な人材が尊重し合い協働できる環境整備を加速させなくてはなりません。

 ・佐藤龍雄(東日本高速道路会長兼社長)=こうした閉塞感の背景には、日本の雇用の流動性や多様性が確保できていないという、柔軟性の低さが一因とも考えられます。これが、企業や社会の活力を削ぎ、社会の活性化の足を引っ張っていると言えるでしょう。‥‥(中略)‥‥現在は低成長時代ですから、成熟産業から余剰人員が出てきます。‥‥(中略)‥‥産業構造を変える、成長するなどによって、働く場所を多く創出することが大切です。‥‥(中略)‥‥労働力が有望産業へ移動する道をつくることが大切で、(それがないと)いくら「行ってください」と旗を振っても、誰も怖くていけません。

 ・萩原敏孝(小松製作所相談役・特別顧問)=企業経営では、あらゆる戦略・計画の基本は現実を直視することから始まる。国の戦略の策定も変わらない。‥‥(中略)‥‥わが国のGDPに対する輸出依存率は17%程度と決して高くない。このことは、日本経済は、いまでも相対的に大きな内需に支えられて成り立っている、ということではないか。‥‥(中略)‥‥内需が飽和状態にある中で、外需依存の脱却を声高に言われても違和感がある。【以上、『経済同友』より】

 ほかにも紹介したい部分がある。それらを含めて、議会、政府が十分な論議を通じて、具体的な各論を形成し、実行するを求めたい。とともに、経営者自身に突き付けられた課題もある。それらへの問題提起として読んでほしい。 

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2010年8月12日 (木)

15年前には1ドルが79円台まで下がったことがある

 ドル安円高が進んでいる。東京市場では11日、12日に一時1ドルが85円を切って84円台にまで円高になった。さらに円高が進行する可能性があり、政府、日銀も神経質になっている。円高というと、思い出すのは、15年前の1995年4月には1ドル79円75銭まで円高が進んだことである。

 その当時、いまも強く記憶に残っているのは、国内銀行の大手さえもが個人の外貨預金を危険なものとみなしていたことである。1995年、1ドル80円台半ばの頃、ドル預金をしようと支店に行ったら、「ドル預金は危険です」、「お客さまは皆さん、リスクを承知しているとおっしゃいますが、ドル預金して損をすると文句を言ってこられます」、「当行にはドル預金よりも安全で有利な貯蓄商品がございます」と言い、ドル預金するのを認めなかった。ドル預金を取り扱っているはずなのに、ドル預金の受け入れを拒否したのである。

 当時、すでに国内定期預金の金利はあってなきがごとき低さだった。また、80円台の円高は行き過ぎで、長続きしそうになかった。したがって、リスクはあるが、ドル預金はかなり有利な投資だと思った。しかし、銀行は従来型の金融商品を売ることで十分もうけられるため、また、リスクに対する顧客の認識は乏しいと決めつけていたため、外貨預金を積極的に取り扱おうとしなかったのである。

 いまはドルの先物取り引きで、元手の何倍も投資できる。もちろん個人で。また、外資系だけでなく、日本の銀行も個人相手に、外貨預金をまともに扱うようになっている。米ドル以外に、ユーロ、豪ドルなどの預金も扱っている。近い将来には、銀行は個人向け預金として中国元も取り扱うようになるだろう。

 しかし、ドル安円高が今後、どこまで行くかはさておき、いまのような円高を利用してドル預金する個人はあまり増えていないようだ。銀行はもっと円預金からドル預金への切り替えを勧めていいと思うが、そんな気配はない。

 日本の個人金融資産(約1400兆円)は圧倒的に元本保証の円預金(貯金を含む)および生命保険に集中している。そうした状況はこれだけグローバル化が進展しても大きくは変わらない。しかし、いまのようなドル安円高のもとで、個人が円を売ってドルを買うというドル預金にどんどんシフトすれば、極端な円高は多少なりとも是正されるに違いない。

 日本の民間銀行、ゆうちょ銀行や保険会社、かんぽ生命などは、集まってくる預貯金の運用先に困って、日本国債をせっせと買いこんでいる。海外に投融資する能力を欠いているからでもある。それが結果として、日本政府の放漫財政を許し、財政破綻への道に拍車をかけている。いずれ起きることだが、日本国債の価格が暴落すれば、民間の銀行や保険会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命などはたちどころに経営が行き詰まる可能性が大きいのである。

 円高がどこまで進むか、予測しがたい。だが、国内にただカネを貯めておくしか能がないというお粗末さを克服できたなら、もう少し違った展開になるのではないか。 

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2010年8月 9日 (月)

事実は小説よりも奇なり

 何年も前、高校の同窓会で、「皆さんは(100歳を超える)きんさん、ぎんさんは双子だと思っていたでしょう。実は三つ子だったのです。もう一人の老女の名前はどうさんです。それが4月1日付けの新聞の一面トップで報じられました」――まじめな顔で、新聞を見せながら、そんな話をしてくれた先輩は昨年暮れに逝って、もういない。これまで、日本は長寿命を誇っていたが、そうしたプラスの価値観が突如ひっくり返るような事実が明らかになった。

 最近、東京都足立区の111歳の高齢者が実は30年以上も前に亡くなっていたという報道をきっかけに、自治体の調べで、都内や他の道府県においても、何年も前に、家を出たきり所在不明とか、すでに死亡している、などといった100歳以上の高齢者がかなりの数にのぼることがわかった。新聞社の社会部記者でジョーク好きだったこの先輩がいまも元気だったら、この深刻な事実をどう料理して私たちに話すだろうか。

 親子や兄弟姉妹が音信不通で何十年もたつ、などというのは家族崩壊そのものである。地方では、大家族で高齢者が生き生きと暮らすことが可能だが、大都市では、核家族化し、かつ貧しい家庭も少なくない。高齢者を支える条件が家庭にも地域コミュニティにも乏しい。そうした事情に加え、地方自治体も国も、法で定められたことさえしていればよい、という典型的なお役所仕事しかしない傾向が強い。このため、とっくに亡くなった高齢者に年金を支給し続ける(家族が不法に収受する)、などといった財政のゆるふんが発生したりもするのである。

 第二次世界大戦後の日本は、経済、社会、暮らしなどが絶えず変わってきたのに、行政はそれに柔軟に対応することができなかった。長寿化などというが、寝たきり(寝かせっきり)や痴呆状態になっていて、家族のほうも医療や介護で無理に長生きさせていることに疲れ果てる話も聞く。事実は小説よりも奇なり、というが、長寿国家、日本の実態は、寒々しい限りである。

 原口総務大臣は記者会見で「行政的な手段だけでは対応できないような劣化が日本の社会に起きているとしか思えない」、「パーソナルサポート、人に寄り添う仕組みをしっかり作っていこうと考えている」と優等生的な答弁をした。それも大事だが、ほかにもいろいろな問題点がある。駄目な行政が安易にしゃしゃり出るのも考えものである。

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2010年8月 6日 (金)

民主党政権の本質は早くから見抜かれていた

 暇なとき、手元にあった『鳩山政権の100日評価』(工藤泰志編、2010年1月31日発行)をパラパラ繰っていたら、興味深い記述があった。「鳩山政権はいつまで続くと思いますか」というアンケートに対する回答は、「2010年7月の参議院選挙まで」というのが40.1%で最も多かった。次いで「2010年7月の参議院選挙から、衆議院の任期満了まで(の間=引用者)」と答えた人が31.2%だった。今年の年初において、すでに鳩山政権が短命に終わると予測する国民が沢山いたのはすごいと感心する。

 民主党を中心とする連立政権が発足して間もない時期に、国民は民主党の問題点・欠陥を見抜いていたのである。参議院選挙の敗因を、民主党の多くの議員は菅首相が消費税引き上げを唐突に言い出したことに求めているが、それが全く見当違いであることが『鳩山政権の100日評価』を読むとはっきりする。

 アンケートの「政党としての民主党の今後に期待できますか」という設問への回答は、「非常に期待できる」4.3%、「どちらかといえば期待できる」25.3%にすぎず、「全く期待できない」13.3%、「どちらかといえば期待できない」31.2%、「どちらともいえない」22.8%である。

 「全く期待できない」、「どちらかといえば期待できない」と答えた人に理由(複数回答)をたずねると、「連立の枠組みに縛られすぎていること、さらに党内も右から左まで立場が様々であり、政策実行の統合力に疑問があるから」が41.7%、「政策の方向は選挙対策色が強く、ポピュリズム的な対応が目立つから」が41.0%の2点が多く、次いで、「政党として日本の将来や成長政策に向けた構想力に乏しく、政策立案能力に疑問があるから」が34.0%となっている。

 また、「党内の政策決定プロセスが確立しておらず、政策発言も個人のパフォーマンスで成り立っている傾向が強いから」、「政府と党との関係がわかりにくく、不透明感を覚えるから」がそれぞれ25%前後となっている。

 鳩山首相と小沢民主党幹事長の退陣と菅政権の誕生で、民主党の問題点が一部改まったことは確かだ。とはいえ、多くの問題点は相変わらず残っている。

 アンケートでは「現時点で、民主党政権が進めようとする選挙時のマニフェストの内容をどう判断しますか」とたずねている。それについては、23.1%の人が「全面的につくり直すべきだ」と回答、60.5%の人が「部分的に修正すべきだ」と答えている。つくり直し・修正が必要な理由をたずねる(複数回答)と、「約束した財源確保に成功しておらず、国債増発に頼るしかなくなっているから」が39.9%と一番多かった。

 次いで、「政策間の整合性がなくばらばらで、何が優先されているのかわからないから」31.7%、「選挙の約束は『ばら撒き』リストになりがちであり、特に今回はその傾向が強いから」31.4%、「党として目指すべき社会、そのための政策の体系と優先順位を示せていないから」が29.2%となっている。

 そして、主要マニフェスト42項目の中で、「実施すべきではない」の回答が特に多かったのは、「高速道路の段階的無料化」(59.3%)、「派遣労働者の常用雇用を拡大し、製造現場への派遣を原則禁止する」(41.0%)、「戸別所得補償制度の創設」(37.7%)などだった。

 一方、「公約通り実施すべきだ」との回答が多かったのは、「国が行なう契約を適正化するため、情報公開を義務付け、契約の事後検証等を行なう『監視等委員会』を設置する」が70.1%、「年金手帳を加入者全員に交付する」が68.5%、「温暖化対策を強力に推進し、新産業育成を進める」66.7%、「特別会計をゼロベースで見直し、必要不可欠なもの以外は廃止する」64.2%、「実質的に天下り先となっている公益法人は全廃し、公益法人との契約関係を全面的に見直す」60.2%、「企業・団体による献金とパーティー券購入を禁止する」60.2%などである。

 この『鳩山政権の100日評価』は言論NPOが実施したもので、外交安全保障政策の評価は11点/100点にすぎないなど、民主党の政権奪取後100日の評価を細かく実施している。同書を読むと、半年以上前において、民主党政権の本質は国民に見抜かれていたのをつくづくと感じる。

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2010年8月 4日 (水)

歳費返納の法案成立

 7月の参議院選挙で初めて当選した議員らは26日にその職務に就いたのに、歳費はまるまる1ヵ月分もらう。たった6日間、職務に就いていただけなのにだ。それはおかしい、という意見が強まった。そこで、歳費を日割り計算し、議員それぞれが25日分を自主返納できるように国会議員歳費法を改正する案が4日の衆議院本会議に緊急上程され、全会一致で可決された。6日の参議院本会議で可決、成立する見込みという。

 廃止が法律で決まっていた社会保険病院、厚生年金病院を存続させる法案も4日、衆議院を通過した。これも6日の参議院本会議で可決、成立する見込みという。

 衆議院と参議院とのねじれで、国会運営のゆくえが注目されているが、この2つの法案の成立は、法案をめぐる与野党のありかたを示す良い例だと思う。もちろん、与野党の足並みがそろうケースは滅多にないだろうが、与党と、いくつもある野党とが議論のうえで妥協すべきところは妥協して、民主政治を実現するのが、国民にとって望ましい。

 国土交通省成長戦略会議座長の長谷川閑史武田薬品工業社長は4日の記者会見で、「ねじれというのは英語でdivided(分かれている)ということ。英米の政治ではそんなことは当たり前。英国や米国では、両院で構成する委員会などで解決するメカニズムがある。日本もそうすべきだ」と指摘した。合わせて、同氏は、議会開催をめぐって思惑が働く日本の国会を批判、「各国の議会は通年国会。日本もそうすべきだ」と述べた。

 ねじれ国会における衆参両院の予算委員会審議を部分的にテレビで見た限りだが、菅首相らの答弁は、野党の議員の質問・追及に対して、ほとんど真正面から答えていなかった。質問時間が限られているので、野党の質問者は1つの問題だけで徹底的に政府を追及しにくい。それをいいことに、菅首相には、答えたくない質問にははぐらかし的な答弁が目立った。民主党公認で革マル派のJR総連出身者が参議院議員になっているのをめぐる追及や、鳩山、小沢両氏の政治資金をめぐる説明不足についての追及などはその典型だったように思う。ねじれ国会の審議はどうあるべきか、閣僚たちはまだわかっていない。数で押し切る意識を払しょくしなければならない。

 野党が予算委員会を拠点にして政府を攻めるのは、長年の慣行である。しかし、各委員会で、それぞれ徹底的に重要な問題を審議する方式に変えたほうがよいのではないか。そのほうが、それぞれの分野での課題を深堀りできる。全閣僚の出席を求める予算委員会の審議は無論、欠かせないが、いかにも、閣僚の時間を浪費している。議会もまた、事業仕分けの発想に立って、ムダ追放を真面目に実行する必要がある。

 

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