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2010年9月 1日 (水)

「政治主導」のこの1年の現実

 民主党総裁選挙が始まった。現在の党総裁である菅直人首相と小沢一郎前幹事長との一騎討ちで、かつ党内が二分して権力抗争に夢中になっている様子は滑稽きわまりない。だが、国会を開かず、日本が直面している重要な課題をそっちのけにしているのを見ると、亡国という言葉が思い浮かび、なんとも悲しい気持ちになる。

 鳩山由紀夫前首相は小沢氏と一緒に辞めたとき、「次の衆議院選挙には出ない」と言っていた。それが最近、妙に張り切っているのも異様である。菅首相の続投を支持すると言った、その舌の根も乾かないうちに「首相にしてもらった恩義があるから小沢さんを支援する」などと、やくざが言いそうなセリフを吐く。「トロイカ+1」などと、まだ自分が党の指導者だと言わんばかり。頭がいかれているとしか思えない。そんな人を鳩山グループの指導者として仰いでいる民主党国会議員も同類か。

 小沢氏は総裁選でまたぞろ政治主導を口にしている。衆議院選挙に向けて打ち出したマニフェストはろくに実現していないが、それは政治主導が徹底して行なわれなかったからだというのが小沢氏の主張らしい。ばら撒き的な公約の財源も、政治主導でムダを省けば出てくるというのである。

 一般会計、特別会計を合わせた207兆円の中にはムダがあることは確かだ。だが、それを個別に指摘して予算をスリムにすることができなかったのが民主党政権である。それなのに、小沢氏はどうやって財源捻出を実現するのか。政治主導、政治主導、‥‥と念仏を唱えるだけでは無理だ。

 民主党政権は過去1年、政治主導を掲げて行政を行なってきた。しかし、事業仕分けでは人気を博したが、それ以外には目立った成果がみられなかった。その理由は、第一に、民主党としての国政についての理念(つまりどういう日本にしたいのか)、およびそれを実現するための詳細かつ体系立った政策を持ち合わせていなかったからである。このため、縦割りの政策づくりにとどまり、時代の変化に対応した整合的な政策を打ち出せずにいる。

 第二に、政治主導なるものの意味があいまいだ。閣僚および各省庁の政務三役だけで政策などを決めることと解釈した大臣もいた。いまもいる。官僚は政務三役の指示に黙って従っていればよいというわけだ。異議を唱えた官僚は左遷されるケースもある。そうした省庁では幹部の士気は沈滞している。また、行政の範囲は非常に広く、政務三役だけでカバーすることは不可能なので、変化に即した行政の対応が遅れ遅れになっている。

 一方で、政務三役と官僚との関係が割合にうまくいっている官庁もある。それは、政務三役だけでは所管の行政すべてをこなすことはできないという現実を踏まえ、官僚の組織、人材を使って運営しているからである。しかし、よくみると、これらの官庁の大臣、副大臣、政務官は大半が官僚の巧みな説明、プレゼンテーションにのせられているみたいだ。消費税反対だった菅氏が財務大臣になって消費税引き上げ派に変わったのも、税・財政政策について民主党が体系立った政策を組み上げていなかったせいである。

 主要な政党は野党時代に、政権を握ったときに備えて、日本の将来の姿を詳細に描き、それに合わせて影の内閣を用意しておかねばならない。野党時代の民主党は影の内閣こそ決めたが、日本の将来ビジョンを体系的に組み上げ、それの実施体制まで設計するところまではいっていなかった。与党を倒し、政権を握ることだけに傾注していたといってもよい。その欠陥が政権を獲得したいま露呈している。

 米国には政策を研究、分析、評価する民間シンクタンクが多数ある。それらの中には、民主党系とか、共和党系とみられるシンクタンクもある。日本は官僚機構が巨大なシンクタンクみたいなものだが、省庁の壁に阻まれ、官僚機構の保守性を突き抜ける政策の提示は期待しても無理である。政治主導を現実化するには、霞が関を叩くだけではなく、政党が基本的な政策の立案やその実現方法などについて党独自の立案ができる道を用意する必要があるのではないか。 

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