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2010年9月26日 (日)

中国の「世論」って何?

 中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視船にぶつかってきたとされる事件について、中国は船長釈放後も、日本に謝罪と賠償を要求している。26日の朝日新聞は1面トップの記事に、「日中続く緊張」、「船長釈放後も謝罪・賠償要求」、「妥協許さぬ中国世論」という見出しを付けている。北京特派員の記事だ。

 見出しを見ると、何となくわかったような気がするが、記事は中国政府が強硬な態度をとっているのは、中国の世論が厳しいからだと言っているように読める。核心部分を引用すると、日本大使館に抗議した反日デモが「次に向かったのが(中国)外務省だった。同省関係者は「強硬論を唱える世論の圧力に従わざるをえない」と打ち明ける。」と書いている。それを真に受けると、中国外務省としては不本意ながら、厳しい態度で日本に臨んでいるという解釈にもなる。

 だが、本当にそうだろうか。18日の反日デモは政府が抑えたとはいえ、さほどのものではなかった。また、朝日の同記事には、中国外務省が強気の姿勢に終始し、メディアに対日圧力をかける記事を載せるよう働きかけたという記述もある。さらに「温首相は対日強硬路線の保守派長老や軍幹部らから突き上げられ」、対日政策の転換をよぎなくされたとの北京外交筋の見方も同じく紹介されている。これは見出しの、世論が妥協を許さないという話とは違う。

 もともと言論の自由もなく、新聞などのメディアが政府の統制下にある中国では、主要な新聞、テレビは政府の広報宣伝の役割を担っている。ネットの書き込みにおいても、政府批判は容易ではない。削除されたり、誰が書いたか政府が追及するからだ。中国では、市民が政府を批判すれば、有無を言わさず拘留されることがままある。したがって、今回の事件で、中国メディアには日本を非難攻撃する報道しか存在しない。ネット上の発言も同様に制約を受けている。そうした国柄なので、中国国民の世論が本当はどうかを知るすべはないはずである。

 したがって、「妥協許さぬ中国世論」という見出しは明らかに基本的な誤りである。記事は中国政府が対日強硬策に転じた背景を説明しているのだから、それにふさわしい見出しにすべきだった。

 「世論」ということで言えば、日本の外交は、国際世論に訴え、国際世論を味方につける努力に欠けていることが今回、明らかになった。海外援助などカネで諸外国と仲良くするやりかたは、中国のほうがGDPも援助も多くなった今後は、もう通用しない。戦略的広報なるものが必要だろう。

 中国が力づくのごり押しで日本を屈服させた今回の漁船衝突事件は、日本にとっても、また中国と国境を接する多くの周辺諸国にとっても、大変な教訓となったようだ。日本はそれらの周辺諸国と一緒になって、中国に当たるようにしなければならない。一方で、日本は中国と異なる価値観の国家・社会をめざすこと、すなわち、経済成長重視から人間重視の民主的な経済社会に移行する道をとることが望ましい。先進国となり、かつ経済的な豊かさの頂点をきわめた日本が周辺諸国との難しい問題を抱えながら独立国として堂々と生きていくにはそれがいいと思う。いまなお軍事力を増大し、拡張政策をとる中国とまともに競り合うことなく、国民の幸せを保障する方途は何か、それがこれからの国民的な課題である。

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