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2010年9月19日 (日)

目からうろこの本『デフレの正体――経済は「人口の波」で動く』

 吉本隆明氏は1993年の単行本ベスト3を挙げたとき、佐貫利雄著『日本経済・新論』を入れた。そして「この著者の本は全部読んでみたいと、わたしが思う唯一の経済学者だ。とくに、この人の主著『成長する都市、衰退する都市』(時事通信社)は、以前に読んで興奮を禁じえなかった。わたしはこの経済学者がどんな人かまったく知らない。それでも経済学的な認識から攻め上って、いまの社会の現状を骨の髄まで分析し、判りつくすことは可能だなと納得させ、意欲を駆り立ててくれる、まれな経済学者だと思う。こんな人が日本にもいるんだとおもえることは、何ものにもかえがたい」(『読書の作法  なにを、どう読むか』(2001年、光文社)より)と絶賛した。

 藻谷浩介著『デフレの正体  経済は「人口の波」で動く』を読んで、この佐貫氏のことを思い出した。佐貫氏は1950年ごろ日本開発銀行に入り、同行の設備投資研究所次長を経て早稲田大学教授などを歴任した。地域経済に詳しく、その研究論文は関係するデータを徹底的に分析して実証するタイプのものばかりだ。藻谷氏も同じく日本開発銀行(現、日本政策投資銀行)に入り、全国各地を丹念に歩いて、地域経済に関していまや第一人者である。著書の『デフレの正体』はデータに基づく実証的な問題提起であり、学ぶことが多い。

 著者があとがきに書いているように、同書は「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減」であることを人口統計や経済などの各種統計を駆使して立証している。

 即ち、生産年齢(現役世代)人口の減少→消費者人口(つまり需要)の減少→企業の供給能力の過剰→在庫積み上がりと価格競争激化→在庫の時価の低下(在庫が腐る)→叩き売りで企業収益が低下、という因果関係になっている。そして、供給過剰による単価低下で消費者余剰が発生しているが、高齢者は老後に備えて、この消費者余剰をきわめて固定的な貯蓄に回しているため、経済社会に循環しない。このように、デフレは生産年齢人口の減少に端を発する上記のメカニズムが原因だという。

 したがって、経済成長を促進する、生産性の向上を図る、金融政策でインフレを起こす、出生率を向上させる、外国人労働者の受け入れを増やすなどといった対策ではデフレからの脱却はできないという。

 では、どうするのがいいのか。著者は、高齢富裕層から若者に所得を移転させる、女性の就労と経営参加を当たり前にする、外国人観光客・短期定住者を受け入れる、といった対策をとるよう主張している。具体的な中身については本書を読んでいただくのがいいが、それらはかなりドラスティックで実現が容易でないと思われるものもあるし、政府が前向きに取り組めば割合簡単に実現しそうなものもある。

 菅内閣はデフレ脱出へ大見えを切っているが、中身は、国の借金を大幅に増やす予算で景気を刺激する類のものになりそう。財政破綻への道を急ぐだけの公算が大だ。藻谷氏らの問題提起を正面から受け止めて、デフレ、財政破綻の両方を解決する政策を実現することが求められる。

 

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コメント

ブログ「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門」http://abc60w.blog16.fc2.com/

って・・・。

「非製造業=サービス業」とか、費用曲線から導かれるべき供給曲線があっさりシフトできて、それが合理的だとか、国債の日銀引受が禁止されている理由に触れることなく、市場さえ通せば日銀がいくら国債を買っても構わないとか、外貨準備の為替損失に触れることなく、米ドルベースで増えているから「負担になっていない」とか、初めて見る斬新な理論がたくさんあって、勉強になります。

投稿: モペモペ | 2011年2月26日 (土) 14時41分

ブログ「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門」http://abc60w.blog16.fc2.com/
カテゴリ:藻谷浩介
もご参照いただければ、幸いです。よろしくお願いいたします。 

投稿: 菅原晃 | 2011年1月26日 (水) 23時23分

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