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2010年10月23日 (土)

『Mr.金川千尋 世界最強の経営』(金児昭著)の教え

 信越化学工業の金川千尋会長には新聞記者時代に二、三回会ったことがある。同社が日本の化学産業の中で卓越したグローバル企業であることは理解していたが、経営について突っ込んだ話をしたことはなかった。このたび、同社の経理担当役員だった金児昭氏が書いた『Mr.金川千尋 世界最強の経営』を読んで、金川氏が稀有の傑出した企業経営者であることを初めて知った。

 同書から、共感を覚えた個所を中心に、金川氏の考えなどを紹介する。

 「自己資本で設備投資を賄う」。「少数精鋭で、過剰な設備投資はしない。が、タイミングを見て果敢に投資する」、「不況は必ずくるという前提で、どうするかを決めるのが私の仕事」。

 「フル生産、フル販売」。「相手の気持ちをつねに考え、つかんでいく」。「お客さまとの信頼関係は決してバランスシートにはあらわれないが、これが不況になったとき、大きくきいてくる」。「利益よりもシェアを優先するような販売はない」。「金川さんが最も重視しているのは、お客さまの“生の声”」。

 「自分が知らなければならない悪い報告は、どんなものでも必ず五分以内に入るようにしています」。「マーケットのあるところならどこにでも行く」。「カントリーリスクにはきわめて慎重」。

 「私のボスは株主だけ」。「アメリカに一歩足を踏み入れた瞬間、外国人とはすべて英語で会話します。‥‥日本語は話しません」。「日本に帰国すれば、相手が外国人のとき以外、英語は話しません」。

 「『心+数字』がすべての基礎である」。「直接、従業員の声を聞くことは経営のヒントであり、自分にとってのOJTと考えています」。「金川さんは『定期採用』という言葉が理解できない、と言います」。「終身雇用は大事にして、‥‥アメリカ人も日本人も変わりなく」。「ジョブローテーション‥‥金川さんは、これを『百害あって一利なし』と真っ向から否定します」。「少数精鋭になるには、その道のプロにならなければならない」。

 「利益を上げて税金を納めること、そして雇用を守り、雇用機会を創出することが何よりも重要なCSR(企業の社会的責任)の基本である」。「金川さんが自分に見せる厳格さ、真面目さは、部下への『自分との戦い』に勝つという“心”を叩きこんでいます」。「つねに自分にも従業員にも、スピードある実行と意識改革を迫ります」。

 「不景気のつけを従業員に回すのは経営者として恥ずかしいことである」。「決裁が必要な書類の八~九割は一分以内で即断即決する」。「経営に理想はない。市場とともに、会社のあるべき姿はつねに変化している。それを追い求めるのみ」。「結果を出すためには朝令暮改も恥ずかしくもなんでもない」。

 「真面目がいちばん。誠実に一生懸命(仕事を)やっているのがいちばん」。「良い会社とは、正道(フェアウエイ)を歩きながら成長を続ける会社。真正面から戦いながら、売上と利益を上げていく」。

 ――ところで、著者の金児氏は、本書が彼の著書の120冊目という。いまも毎日の通勤電車の中で、原稿用紙とペンとを持って原稿を書いているそうだ。信越化学の、そして金川氏の企業風土や「教育的指導」とどこかでつながっているような気がする。

 読後感の一つは、大企業のトップおよび経営者たらんとする人たちには必読の書だということ。二つには、こういうエクセレントカンパニーに自分が勤めたとしたら、さぞくたびれるだろうなということ、三つには、金川氏が引退したあと、信越化学の経営は変わっていくだろう。どうなるのだろうかということ。そして、かつての上司を褒めあげるだけの本にしない著者の工夫、努力は大変なものだったろう、と推察。

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