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2010年10月30日 (土)

民主党は党の綱領をつくれ

 菅政権の行政刷新会議が特別会計を対象に事業仕分けに取り組んでいる。党所属議員と有識者とがチームを設けて、これまで国会の監視がほとんどなかった特別会計に手を突っ込むのは大きな意義がある。

 官僚も政治家も、もう1つのポケットとして、いい加減なカネの使い方をしてきたので、洗い出せば洗い出すほど、問題点が浮き彫りになる。それにつれて、既得権益層の抵抗も強まる。すでに仕分けの結論に対して、同じ民主党の政務三役が軌道修正に乗り出す意向を示していると報道されている。ろくに見識もなく、官僚の手のひらで踊り出す与党議員が多いからだ。

 民主党という政党はこれからの日本をどのような社会、国家にしようとしているのだろうか。政権を握るための選挙のマニフェストはそうしたものを国民に提示することを求められたはずだった。だが、おいしい話ばかりで、およそ政権を担って国家運営をしていく整合的な政策ではなかった。

 しかし、ひとたび政権の座に就いた以上、国民の生活の安定や、グローバル経済の中でそれを支える経済の基盤強化、あるいは東アジアの中での安全保障の確保、といった主要な要請に対して、国民が納得する国家像や政策体系をできるだけ早く打ち出すことが求められている。

 それがないために、1つ1つの政治課題に対して、どういう方針、政策をとるべきか、で毎回、党内が百家争鳴している。しかも、それに派閥的な動きがからむことがある。要するに、民主党主体の菅政権は、政治課題のどれをとっても、行き当たりばったりばかり。個別政策ではばらまきなので一見よさそうにみえるが、国全体としては非最適なものばかりである。

 例えば、子ども手当の増額が民主党内で勢いを得ている。保育所と幼稚園の一本化すら実施できないような菅政権は、カネをさらにばらまくことが政策と心得ているのではないかとすら思う。それが財政危機をさらに強めるという基本的な認識すら議員になさそうなのも恐ろしい。

 農家への戸別所得補償制度は、兼業農家まで含めて補償の対象にしたため、コメの供給過剰に拍車をかけている。その結果、コメの価格が下がってきたのは当然のことだ。極端なことを言えば、いくら値下がりしても、国が補償するということになれば、農家はコメ余りの中で値下げしてでも売りさばこうとする。いまのコメ値下がりは、農家にいくらでも税金をつぎ込むという政策が招いた結果である。それにもかかわらず、コメの販売業者が買いたたくからだ、と販売業者を締めつけようというのが民主党の発想である。

 民主党の農業政策は、農業の担い手が高齢化し、10年後には担い手がほとんどいなくなってしまうのを無視し、農地の譲渡規制、株式会社の農業参入禁止などを変えようともしない。

 日本の製造業を守るためには域内関税をゼロにするTPP(環太平洋経済連携協定)に参加することが重要だが、それに対しても、民主党の中は日本農業が壊滅的な打撃を受けるとして、TPPへの交渉参加に反対する勢力がかなり強い。農業以外の産業が稼いでいるおかげで農業保護が可能となっているのに、他の産業を窮地に追い込む政策に民主党国会議員の多くは何の疑念も抱いていないようにみえる。

 法人税引き下げの財源を法人税見直しでひねりだそうというのも、民主党の製造業軽視とつながっている。個別の中身をみれば、修正が必要だが、トータルの税負担が高過ぎるという問題の解決にはつながらない。これでは企業の海外流出が増える。

 国家公務員給与の引き下げ問題は、財政危機を考慮すれば、最低限、世の中の賃金水準の低下の実態を上回る引き下げにするのが筋である。公務員を説得しようともせず、公務員天国を守る、それも公務員労組の要求を受け入れるというのは、圧倒的に多数の国民の敵ではないか。

 消費税引き上げを避けるという民主党政権の党内事情もそうだが、菅政権は整合的な政策体系を全く打ち出せていない。党綱領もないまま、その時々の状況に追随しているだけだ。それは日本国の弱体化をもたらしつつあると思う。

 最近、霞が関の官僚たちは息を吹き返している。民主党の国家議員が政策にうとく、官僚の言うなりに動くようになっているからだ。これでは自民党政治から決別したはずが元の木阿弥になったようである。あの鳩山由紀夫氏の変節ぶりなどは、それを象徴している。 

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