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2010年11月 2日 (火)

『江戸絵画の不都合な真実』(狩野博幸著)から

 私たちは『奇想の系譜』(辻惟雄著)によって岩佐又兵衛、伊藤若冲、曽我蕭白ら江戸時代の奇想画家たちを知ったのだが、最近出版された『江戸絵画の不都合な真実』(狩野博幸著)は、そうした画家を含む江戸絵画の画家8人たちに関わる新事実を明らかにしていて、なかなか面白い。

 京都錦小路の老舗の青物問屋の主人だった若冲が40歳で家督を弟に譲って絵に専念したというのが通説である。しかし、本書によると、青物問屋というが、納入する百姓ら仕入れの取引先が3千業者もあったという。八百屋の主人だったようなイメージとは全く違う。そして、弟に譲ったあとも、錦高倉市場をつぶそうとの役所のたくらみに対して、若冲は帯屋町年寄として存続のため奮闘した。本書には、そうした興味深い指摘がいろいろある。

 その1つが、第七章「葛飾北斎 富士信仰の裾野」で取り上げられている富士講と、食行身禄(じきぎょうみろく)という六世行者の話である。富士講は富士山を信仰し、信仰の証しとして富士山に登る同行者の組織であり、費用を無尽で融通し合う。それが、江戸幕府によってしばしば禁止されたという。

 その理由は、不穏の世に絶望し、1733年に入定(にゅうじょう。絶食して死んだ)した食行身禄の教えに、幕府が「不穏なものをかんじとったにほかなるまい」という。彼は、人は食べることで生きていける、その点で、人は皆、平等でなければならないと主張した。士農工商は「入り渡り相助ける」べき四民で、上下関係ではないとも言った。男女の隔てはない、同じ人間だとも言っている。

 さらに、神も仏も、一切のものは、人間がこしらえたものだと断言している。

 著者は、西洋の思想に先駆けていた食行身禄の思想を述べながら、いまの時代に生きる者たちに、こんなことを言っている。「おのれの身を捧げて民衆を救う、という考えをもたぬ人間は宗教者などと口が腐ってもいってはならない」、「イスラム過激派にしても、指導層はただひとりとして死ぬことがなく、死ねば何十人の処女に迎えられると称して若者たちに自爆させるばかりだ」と。 

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