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2010年11月10日 (水)

事の本質を見誤るな

 尖閣諸島沖で中国漁船が日本の巡視船にぶつかってきたときのビデオがユーチューブに公開された事件で、第5管区海上保安本部神戸海上保安部の職員が、自分がやったと上司に名乗り出たという。政府は“犯人”を守秘義務違反とか機密漏えいの罪で処罰しようとするだろうが、事の本質を見誤ってはいけない。

 そもそも衝突事件の主犯である中国漁船の船長は処分保留のまま釈放されたというが、実態は処罰なしだ。無罪である。それなのに船長が処罰もされない、つまり犯罪とみなされない衝突場面を撮影した映像を公開したというだけで、海上保安庁の職員が処分されるとしたら、正義に反する。事の軽重を正しく判断できない政府は、国民の信を失う。

 政府税制調査会が所得税制の見直し作業を始めた。高所得層への課税を重くし、子ども手当上積みなどの原資をひねり出そうとしているようだ。原則を言えば、経済成長がほとんど見込めないため、累進課税のカーブを高めて貧富の差を縮めるのは適切な政策である。しかし、日本の所得税制はトー・ゴー・サン・ピンなどといわれるように、課税捕捉率が極端に違う。サラリーマンのように所得が課税当局にきっちり捕捉されているのに比べると、農業、中小企業などは実質はかなりの所得があるのに、ほとんど納税していない。こうした税制の不公平をたださないままに、源泉徴収を受ける層ばかりから徴税するというのは正義に反する。行き過ぎた課税の不公平、不公正は、そうした層のやる気を失わせる。

 政府の行政刷新会議は過去の仕分けの結果が2011年度予算概算要求にろくに生かされていないことから、再仕分けを行なうという。民主党の政策の中で、唯一、国民に好評だったのが事業仕分けだ。しかし、廃止などの判定を受けた事業が名称を変えたりして11年度予算要求に出てきているという。どうして、こんなことが起こるのだろうか。

 それは、政務三役、つまり各省庁の大臣、副大臣、政務官が一つひとつの仕分けの意味がよくわからず、結果として、本気で仕分けの結果を遵守する気がないからだと思われる。菅首相が官僚の用意した答弁書を読むばかりになっているのと同様、民主党・国民新党の連立政権の政治家の多くは、霞が関の官僚があきれるほど知識、判断力などが低く、官僚の手のひらで踊るようになっている。したがって、仕分けの結果を遵守するか、否かも官僚の判断にゆだねられているらしい。そこで、仕分けの影の主役、財務省が再仕分けを仕掛けているというわけだ。いずれにしろ、「政治主導」は雲散霧消した状態である。

 情けないことだが、日本が置かれている内外の情勢はかつてないほどに厳しい。打つ手を間違えば、日本国は衰退の一途をたどる。TPPについても、前途のない日本農業の既得権益者がただただ反対を叫んでいて、日本農業をどうやって活性化するか、の前向きの発言が彼らからは聞こえてこない。民主党内部のTPP反対論者もまた、ではどうしたら日本農業が持続可能になるかを主張していない。党内できちんとした政策論議をしない政党に私たちの未来をゆだねるのは考えるだにおそろしい。

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