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2011年1月 4日 (火)

日本の「懐かしい価値観」再評価を強調する田坂広志氏

 2010年は、日本国の衰退を憂う人たちがとても多かったように思う。今年いただいた年賀状の中にも、そうした言葉を書いてくる人がいた。目を背けたくなるような政権・与党の迷走ぶり、深まる財政危機、デフレの長期化などを見れば、誰だって暗い気分になる。しかし、日本はそんなに駄目な国なのか、救いはないのか。希望はないのか。

 そうした暗い気分を吹き飛ばせと言わんばかりの新聞記事が昨年12月10日付け日本経済新聞に載った。「企業家精神と資本主義の行方シンポジウム」における田坂広志多摩大学大学院教授の特別講演(要旨)である。その締め括りは、「このように、日本型資本主義と日本型経営とが大切にしてきた「懐かしい価値観」が世界から再評価される時代を迎える。日本人は、そのことに自信を持つべきであろう」となっている。

 記事によると、資本主義の根底にある経済原理がこれから「5つのパラダイム転換」をとげる。①「操作主義経済」から「複雑系経済」へ、②「知識経済」から「共感経済」へ、③「貨幣経済」から「自発経済」へ、そして「自発経済」は「貨幣経済」と融合へ、④「享受型経済」から「参加型経済」へ、⑤「無限政調経済」から「地球環境経済」へ、と。

 日本型資本主義には、浮利を追わずといった、企業の社会的責任を深く問う思想がある。日本型企業経営は、働きがい、社員の和、顧客との縁、おもてなしなど、目に見えない価値を大切にする。また、日本人は限られた資源や自然を大切にしてきた。こうした日本の「懐かしい価値観」は、世界が5つのパラダイム転換を遂げたあとに必要とする価値観である。田坂氏はそう言って、日本の将来に自信を持つよう呼び掛けたのである。

 当面の日本経済はどう見ても明るい気分になれそうにない。しかし、展望のスパンを長くすると、日本の経済社会に対する見方が変わりうる。田坂氏の講演は、目先に寄りがちなものの見方を遠近両用型に改めるよう勧めているとも言えよう。

 ところで、田坂氏は2008年に『未来を予測する「5つの法則」  弁証法的思考で読む「次なる変化」』(光文社)を出版している。同書は、弁証法の5つの法則を使うと、どんなパラダイム転換が起きるか、その結果、どんな未来が予見できるか、を述べている。なるほどとうなづくところが少なくない。

 断片的には、「価格競争はある段階で、必ず付加価値競争に反転する」、「ハイテクへの動きは必ずハイタッチへとリバウンドする」、「コストが劇的に下がると、ビジネスモデルが進化する」、「営利企業と非営利組織は互いに社会貢献企業へと進化する」、「マネジメントの本質は矛盾のマネジメントである」等々が新鮮に感じられる。

 田坂氏は「未来は予測できない。しかし、未来は予見できる」と述べている。そのためには大局観を身につける必要があるので、同書を書いたという。上記の講演も、そうした大局観に基づくものだろう。

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