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2011年1月22日 (土)

公費(負担)を考える

 22日の朝日新聞朝刊(東京)は1面トップに「生活保護費3兆円超す」、同、左上に「B型肝炎救済へ所得増税」という記事が載った。どちらも公費(国、地方自治体の歳出)で支払う話である。

 多くの失業者が生活保護を受けるようになったため、09年度の生活保護費は総額3兆72億円(うち、国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担)と前年度より約3千億円増加した。10年度に入ってさらに受給者が増えているから、10年度の総額はもっと膨らんでいよう。昨年10月時点で過去最高の141万世帯が受給しており、そのうち、「病気や障害がなく働ける年齢の世帯は23万世帯で、2年で倍増した」という。

 一方、B型肝炎集団訴訟で札幌地裁が出した和解案を政府が受け入れるのに伴い、政府は「患者らの救済に必要な3兆円規模の財源について、所得税を増税してまかなう方向で調整に入った」という。「歳出削減で捻出するには財源の規模が大きいため」消費税とは別に国民に増税で負担してもらおうと考えているようだ。

 上に挙げた2つはいずれも公費でまかなう話だが、後者は、救済基金の原資を所得税増税という特定財源を設けて調達しようというものだ。

 ところで、政府・与党は社会保障と税の一体改革を議論するため「社会保障改革検討本部」を立ち上げた。また、「集中検討会議」を新設し、政治家と識者が改革案づくりを進めることにしている。それに関連して、内閣府が「経済財政の中長期試算」を21日に発表した。それによると、「慎重シナリオ」で見たマクロ経済の姿は想像を絶するほどに危機的だ。

 例えば、2020年度の国の一般会計は、歳出119.8兆円に対し、税収等は55.3兆円と半分にも満たない。公債等残高は1238.1兆円と名目GDPの2.2倍にも膨らむ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)は23.2兆円の赤字だ。これを黒字にするには消費税を約9%引き上げる必要があるという計算だ。

 もう一つの「成長戦略シナリオ」でも、歳出134.2兆円に対し、税収等は64.4兆円と半分弱。公債等残高は1242.8兆円であり、基礎的財政収支は16.2兆円の赤字である。これはかなり名目、実質の成長率を高く設定した場合で、その実現性は低いと内閣府は考えているようだ。

 こうした試算が示すように、長期デフレや少子高齢化のため、日本の財政は危機的な様相を深める一方であり、消費税の大幅な引き上げは必要不可欠である。その結果、国民の税・保険料合わせた負担率は相当に上がるが、それ以外にも、上の2つのニュースのように国民の負担がさらに増す要素がいくつも出現するのではないか。

 オーストラリア、ブラジル、フィリピンなど、世界のあちこちで記録的な大雨による大災害が発生している。スペインなど欧州やインドには大寒波が襲った。地球温暖化に伴い、こうした大がかりな異常気象がちょくちょく発生するだろう。また、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどが畜産業に大打撃を与えている。これらの災害の対策および復旧もまた国の財政支出を膨らませる。

 日本で巨大地震が起きれば、老朽水道管はひとたまりもない。地方自治体の水道事業は値上げを避けてきたため、古い水道管を取り換えたりする財政的な余裕はない。そこでも、復旧のため、国の財政支援、つまり税金の投入が社会から求められるだろう。道路などのインフラの劣化も、いずれ財政上の大きな問題となる。

 悲観的なことを言うようだが、今後の日本では、現実の財政支出は内閣府の試算を相当上回る可能性が大ではないか。したがって、既存の歳出を徹底的にゼロベースから洗い直すことが重要だと思う。生活保護を例にとれば、不正受給者をなくすよう、チェックを強化し、不正を厳しく処罰するとともに、受給しているよりも働くほうが総収入が増え、生きがいもあるというような仕組みに変えていく必要がある。

 政府・官僚はよく「公費を使う」、「公費で負担する」などと言う。しかし、実際は「税金を使う」、「税金で負担する」ことである。生活保護の3兆円にしても、B型肝炎患者救済の3兆円にしても、国民の納得を得て税金を使うということでなければならない。公費の中身の吟味が大事だ。社会保険庁の職員が年金業務でいい加減な仕事をしたために、後始末にまで莫大な税金が使われているようなばかげたことは繰り返してはならない。

 民主党は公務員総人件費の2割削減というマニフェストを抵抗が強いとして棚上げしたが、官高民低の賃金構造を放置していると、役人天国は直らず、結果として、公費=税金との認識も徹底しないおそれがある。

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