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2011年1月19日 (水)

新内閣の消費税増税と社会保障制度改革の取り組み

 菅首相が新内閣で消費税増税と社会保障制度改革とをパッケージで進める具体策のとりまとめに着手した。枝野官房長官、与謝野経済財政担当相、玄葉国家戦略相、藤井官房副長官らが中心になって、財務、厚生労働などの省庁や民間の有識者などの考えも採り入れて構築していくようである。政権を握ってから約1年半経ち、ようやく国のリーダーたち(の一部)は夢想状態から覚めたということか。

 メディアの世論調査によれば、国民の半数程度は消費税の引き上げに賛成するようになった。一般会計の予算で、新規国債発行額が税収をはるかに上回るようなことは異常である。そんなことは常識があればわかる。国民はバカではない。

 一方で、国家財政の支出にムダが沢山あるのは事実だが、それを暴き、歳出カットするのは、いまの民主党には無理だ。どこにムダがあるかがあまりわかっていないうえに、ムダとわかっている歳出についても、選挙の票が欲しいから利権に手をつけることを避けてしまう傾向があるからだ。そして、高齢化に伴い、社会保障への歳出は毎年1兆円以上増えていく。しかも、年金制度のほころびは大きくなる一方だし、介護、医療などの制度も問題を抱えている。

 2011年度予算編成においても一段とこうしたほころびが目立っており、国家財政はにっちもさっちもいかなくなっている。したがって、歳入を増やす、つまり増税をするしか道はないし、年金などの社会保障制度も改革が必要になっている。菅首相がそのことを直視し、パッケージでの改革を目指して始動したのは評価してよい。

 ただし、民主党の内部が割れているため、同党および政府がこのパーケージ改革でどれほどの推進力を持つものか、不安があるし、ほかにも気がかりな点がある。第1に、民主党が政権奪取の際に示したマニフェストとの関係である。改むるにはばかることなかれ、マニフェストの修正を国民に明示すべきである。その前提として、党内で、徹底的に社会保障制度、消費税などのありかたについて議論し、ばらまきとは異なる、党としての見解をとりまとめる必要がある。

 第2に、消費税、社会保障制度のいずれも、国の根幹をなすものゆえ、政権交代のたびに変わることがないように、長期かつ安定的な仕組みであることが望ましい。したがって、民主党政権が打ち出す案をもとに、与野党で協議検討し、ベストの改革案を生み出すように努めなければいけない。いたずらに政争の道具にしていたら、国民は政治を疎ましいものとしか見なくなる。

 第3に、与謝野氏である。民主党の政治家の中で、彼に匹敵する見識、経験などを持つ議員はいないだろう。とはいえ、自民党の比例区で当選したいきさつに照らせば、衆議院議員のまま民主党政権の閣僚に名前を連ねるのは選挙民である国民を愚弄しているとしか言いようがない。国会議員を辞職して、民間人として大臣になるのが筋ではないか。政治家人生の末尾をかっこよく終わろうと思っているのだろうが、それはとんだ思い上がりである。

 自民党や公明党にパッケージ改革を一緒にやろうと呼び掛けるうえで、与謝野氏の存在が障害になるということも十分に考えられるところだ。

 単なる受け売りだが、シンガポールの法学者、サイモン・S・C・テイ教授の近著『Asia Alone』には、将来のアジアは中国とASEANの2つのスーパーパワーが存在すると書かれているそうだ。日本はスーパーパワーに数えられていない。経済規模がアジアの中で低下するし、首相がひんぱんに交代し、政治がダメだからだという。

 その通りかもしれない。日本の政治のひどさは外から見たら、よけいはっきりしているのだろう。願わくは、消費税と社会保障制度の改革など主要な政策を可及的速やかに実現すること、それはうつむき加減な日本の再生につながる。 

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