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2011年2月27日 (日)

一体改革の論議に、ムダ排除の視点を

 菅内閣は社会保障と税制の一体改革を大きな課題としており、年金制度の改革などをめぐる議論が進行中である。社会保障費の増大をやむをえないものとして、その財源をどこから見つけるか、社会保障制度の再編で費用の伸びを多少なりとも抑制できないか、の2点が焦点のようだ。国と地方の役割分担および費用負担も争点の1つである。

 しかし、一体改革の議論は、厚生労働省などの社会保障費見通しが前提とされるため、いまの制度およびその運用によるムダがそのまま存続する可能性が大きい。それでは、消費税の引き上げ幅や現役世代の負担が大きくなってしまうおそれがある。負担の公平、公正とともに、真剣にムダを除去するよう努めるべきだ。

 日本の医療費は少ないとか何とかと言われるが、医師の収入、特に個人の診療所は群を抜いて高い。電子化を徹底すれば、医療費のチェックが容易になり、レセプトの過大な請求をはねつけられる。また検査や投薬などの重複が減る。

 社会的入院などといわれるものは依然多い。介護保険も家事代行などに安易に使われているケースがあるので、利用者の負担の割合を引き上げるなど何らかの抑制策が必要である。

 最近、胃ろうを安易に導入することの是非がメディアで論議されるようになった。それは①どんなにカネがかかろうとも、死なせないための治療を行なうのは当然だ、②最後まで人間の尊厳を保った生き方をするためには、胃ろうは好ましくない、という2つの意見の違いである。老親に胃ろうを付けることに否定的な返事をしたら、医師に「助かる命を助けないと殺人罪で訴えられますよ」と言われ、やむをえず同意したという話もある。このケースでは、間もなく老親は痴呆状態になってしまい、子供としては、やはり付けるべきでなかったと悔やんでいる。

 しかし、西欧では、自分で食べることができなくなった高齢者の延命措置はしないという話を現地で聞いたことがある。自分で食べることができない老人の医療に要する費用までを現役世代に負担させるべきではないという暗黙の了解がその背景にある。日本でも、若い世代と話していると、高齢者医療に無制限に医療費を使うことへの疑問を聞くようになった。

 雇用、生活保護など社会福祉関係でも、不正受給が多いことが報じられている。安易な制度設計のため、カネをばらまけばばらまくほど、自立心や労働意欲などが失われていく。それも社会保障費の増大の一因となっている。

 税制の改革では消費税の引き上げが当然視されているが、国と地方との配分をめぐって、全国知事会など地方自治体は地方への配分をいま(実質44%)よりも増やすよう強く求めている。しかし、地方自治体の財政はムダの除去が不十分である。

 その最たるものが地方公務員の高い給与だ。民間給与準拠というが、実態は民間より平均で約7割高い(09年度)。地方自治体の一般歳出の約4分の1が人件費である。いかに高い人件費が地方財政を圧迫しているか、歴然としている。

 もちろん、国家公務員も民間平均を大きく上回っている。民主党は総人件費を2割削減するとマニフェストで公約したが、棚上げ状態。マニフェストを重視する小沢一郎元代表に連なる議員たちも一切、この件に触れない。菅首相は閣僚の給与を2割カットするという意向を示したが、実行する気があるのか怪しい。公務員の人件費2割削減を公約したのだから、総理大臣や大臣は5割カットとか、3割カットとかをさっさと実施してこそ、本気だと国民は思うのである。

 2月26日付け朝日新聞に、「地方自治体が最低制限価格の設定によって公共事業の工費を高止まりさせ、コスト競争力のある土建会社を排除している」と主張する岐阜県の業者、希望社の桑原耕司会長のインタビューが載っている。

 地方自治体は財政のやりくりに大変だと言うが、高い人件費や公共事業の高価格発注などにみられるように、歳出の合理化、効率化が足りない。国も地方自治体も、財政破綻が起きかねないという危機的な状況のもとで、真剣に歳出のムダ減らしに取り組むべきである。地方主権などというが、いまだに、国からよけいにカネをとってくるのが首長の仕事と思っている知事や市長が圧倒的多数なのである。

 一体改革の論議では、徹底したムダの排除を同時に進めるべきだ。安易に大きな政府を志向していては、財政破綻が早まるに違いない。

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2011年2月24日 (木)

トリポリで思い出す石油の「トリポリ協定」

 リビアの首都トリポリには行ったことがないが、40年前の1971年4月、リビアが石油収入増加を要求して欧米のメジャー(国際石油資本)と交渉し、大きな成果を挙げた「トリポリ協定」を締結したことでなじみ深い。イラン、サウジアラビア、イラクなどアラビア湾岸産油国が同年2月にメジャーとの調印にこぎつけた「テヘラン協定」は産油国が結束して石油価格引き上げに成功した画期的な出来事だが、カダフィ大佐率いるリビアはそれを上回る有利な条件をかちとったのである。

 カダフィ大佐はその2年前に無血革命でリビアに社会主義国家を樹立。議会などのない直接民主主義を打ち出したばかりの頃。その後、米国を相手に巧みな外交を展開した。

 アラビア湾岸産油国のうち、アラブ首長国連邦は、やはり40年前の1971年に発足した。アブダビ、バーレーンなど6つの首長国から成り、翌72年に7つの首長国の連邦になった。1973年、アブダビを訪れたとき、首都アブダビといっても、政府の建物やホテルなどがポツンポツンと建っているのを除けば、大半は何もない砂漠だった。郊外から戻ってくるとき、タクシーの運転手が運転中に眠ってしまい、舗装道路からはずれたことがあったが、ちょうど建物が全然ないところだったので、無事だった。いまのアブダビは巨大なビル群の都市だ。今昔の感がある。

 1960年代、豊富な埋蔵量を背景に、原油価格は下落を続け、60年代後半には1バーレル当たり実質1ドル近くまで下落した。石油収入が増えない産油国はOPEC(石油輸出国機構)を設けて、メジャーの価格支配に対抗しようとした。「テヘラン協定」、「トリポリ協定」は、そうしたメジャー支配をくつがえす大きな一歩で、1973年の石油ショック(石油危機)は産油国の結束力をみせつけた。以後、多少の曲折はあるが、産油国側が価格決定の主導権を握るようになっていく。

 その結果、サウジアラビア、イラク、イラン、クウェートなどの中東・北アフリカ産油国は石油収入の大幅増加で経済規模が急拡大し、国民・住民の生活も豊かになった。ドバイ、バーレーンが金融中心の都市になるなど、先進国に迫る経済発展をとげるところも現われた。

 しかし、中東・北アフリカ諸国の多くは先進国と異なり、大半が国王、部族長などの専制支配か大統領の長期独裁である。富は支配層に集中し、腐敗がはびこる。他方で、人口増もあり、貧困ないし無職の住民も少なくない。宗派の違いが支配層、被支配層の関係につながっている国もある。さらに、言論を規制し、体制批判を許さない国が多い。40年の歳月が経ち、石油資源などのおかげで豊かな国になったものの、先進国のような民主政治や言論の自由などは根付くことがなかったというわけだ。そのつけがいま来ているのだろう。 

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2011年2月22日 (火)

皆で渡れば‥‥国債を大量に抱える金融機関

 国民は安全志向で銀行やゆうちょ銀行におカネを預ける。銀行などはよい融資先がないので、預かったおカネをどんどん国債の購入に充てる。おかげで、政府は超低金利で国債を大量に発行できる。結果として、日本政府の債務残高は増え続ける。税収よりも国債発行による歳入のほうが多い2011年度予算案も、こうした国民、金融機関、政府の三者の資金移動を前提としている。

 日本経済新聞の2月22日付け朝刊の記事「銀行の国債購入最高に 昨年」は上記の資金の流れが勢いを増していることを示している。記事によると、「3メガ(バンク)など大手銀の昨年の国債買い越し額は約8.7兆円、地銀は約7兆円と、統計上さかのぼれる05年以降でそれぞれ過去最高を更新した」。そして大手銀は今年になっても、高水準の購入を続けているという。

 日本国債の所有者をみると、2010年9月末時点で、ゆうちょ銀行を含む銀行等が44.4%も所有している。次いで生損保等が20.1%所有している。ほかに公的年金が10.7%、年金基金が3.8%、日銀が7.9%などとなっている。三菱フィナンシャル・グループが昨年9月末時点で保有する日本国債の残高は約43兆円。同グループの国内法人向けの貸し付けと同額だという(朝日新聞2月21日付け)。

 ということは、もしも国債が相当値下がりすれば、銀行等や年金などは大きな損失をこうむることになる。そうなったら、経営危機に陥った銀行等から預金を引き出そうと大口顧客が殺到することも予想される。いわゆる取りつけ騒ぎである。それがいつ起きるか、予想はできないが、本格的な財政再建が行なわれないままだと、必ず危機は表面化する。外国の格付け会社2社が日本国債の格付けを最近引き下げ、ないし見直したのも、財政破綻の可能性がこれまでより大きくなったとみているからである。

 ところで、資金運用全体の中で日本国債のウエートが大きすぎるのは気になる。国債暴落ともなれば、保有する金融機関、年金基金などは軒並み巨額の損失を抱える。その際、担当者は責任を問われるはずだが、“皆で渡ればこわくない”ということなのか。日本の金融機関は長期デフレで国内企業の資金需要が細っているため、資金を寝かせておくよりは超低利でも国債を買うほうが有利だと安易なソロバン勘定をしているようにみえる。そうではなく、国内外で地道に融資先を開拓し、すぐれた企業に育てあげる努力をすべきではないか。内弁慶では困る。

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日本の若者は怒りを忘れたのか

 チュニジア、エジプトにおいて政治体制がひっくりかえされたあと、リビアでは、カダフィ大佐の長期支配体制が大きく揺らいでいる。同国では、反政府活動に対して、軍隊が実力行使し、沢山の死者が出ているという。程度の差はあるが、中東・北アフリカ諸国のほとんどで、反政府の活動が一気に火を噴いた感じだ。

 それらの国は独裁的な政治体制で、政府批判を許さない。また、貧富の差が極端に大きい。しかも、人口が急増し、若者たちの働く場がなかなかない。そこで、主に若者たちがそうした不満や政府批判を訴える集会・デモをツイッターやフェースブックといったネットの利用で呼び掛けたわけだ。

 一党独裁体制を敷き、言論の自由を認めず、政府批判を許さない中国政府は、中東・北アフリカ諸国と同質の政治体制である。このため、中国国内のいくつかの大都市でも、言論の自由などを訴える集会の動きが少しあったが、政府は公安警察を動員して、こうした反政府活動を厳しく取り締まっている。また、インターネット規制を一段と強化する方針である。力づくで一党独裁体制を守ろうとしているわけだ。

 ひるがえって日本国内をみると、民主党の内部権力抗争が広がる一方で、菅政権は2011年度国家予算を成立させる見通しが全く立たない。少子高齢化や長期デフレのもとで、財政破綻を回避する明確な展望を示せず、また年々大幅に増える社会保障費の財源確保のメドも立っていない。高齢者を支える現役の人々は、平均すると、賃金が下がり気味だ。しかも、若い世代にとっては、大学・高校などの新卒者の就職難がある。日本にいては、若者の未来は率直に言って非常に暗い。

 したがって、現役で働く人々や若者たちが不満や怒りを感じて当然だと思う。しかし、中東・北アフリカの国々で起きているような権力者批判、体制批判が日本では全くみられない。学生は就活で忙しいし、労働組合もほとんどが春闘で定期昇給維持を要求している程度だ。非正規雇用や無職の人たちがまとまって政府批判や怒りの声をあげる様子もまずない。活動的な若者たちこそ、政治を変える力なのに、彼らは怒りを忘れてしまったかのようである。若者が怒りをデモなど目にみえる形で示さないから、政府も議会も永田町でコップの中の争いを延々と続けていられるのだ。

 なぜ、若者は怒りを社会的な行動で示さないのか。それは現代の日本社会が抱える大きな問題点の1つである。

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2011年2月18日 (金)

予算審議で柔軟に組み替えを

 民主党は、内部抗争に明け暮れる権力亡者の集まりか、理念・理想もない単なる烏合の衆なのか。このままでは、2011年度政府予算案の成立は見込めない。予算関連法案の成立も無論、無理だ。菅内閣は解散総選挙に追い込まれる可能性も出てきた。統一地方選挙(4月)もあり、国内政治は相当波乱含みだ。

 国民生活への影響を考えると、3月末までに関連法案を含めて国の新年度予算が成立することが望ましい。しかし、これまでの予算委員会の審議などを通じて、政府は国会に提出した予算案を全く修正しようとしない。内閣の方針にそって財務省が中心となって作成した政府案を野党に丸飲みせよという姿勢である。公明党にすり寄ったり、社民党に“復縁”を迫ったりするのも、必要な議席数を確保して政府案をそのまま国会で成立させるという前提を置いているようにみえる。

 菅内閣は財政再建や社会保障制度の維持・充実のために、消費税引き上げの必要性を認めたほか、新年度予算案に法人税引き下げを盛り込んだりしている。鳩山内閣時代と比べると、野党第一党の自由民主党と政策がほぼ一致するか、かなり似ているという分が少なくない。したがって、野党から批判されている民主党の政策を部分的に修正し、予算案もそれに応じて組み直せば、自民党などの野党の賛成を得て予算を成立させることは不可能ではない。子ども手当一つとっても、保育所を増やすとか、幼保一元化などのほうが国民ニーズに合っている事実を直視して予算案を修正すれば、野党との対立点が一つ解消する。

 国会の予算審議で、野党の主張に理があれば、政府は予算案を修正することにやぶさかでない、というのが民主主義国家だろう。国会の議席数ですべてが決まるというバカげた発想はもういい加減に卒業したいものである。日本では、国会にせよ、地方自治体の議会にせよ、議論をたたかわせて、よりよい政策をつくりあげるという民主政治のイロハを未だに実現するに至っていない。

 民主党が政権をとったのは、国民が望ましい民主政治の実現を期待してのことだったと思う。そうした国民の期待を裏切り続けるのは、日本の未来に暗い影を落とす。何年も政治が揺らいだままだと、国際的に日本の威信は落ち、国民の生活に悪影響を及ぼす。

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2011年2月14日 (月)

「できるだけ面倒みてもらわなくてすむように自ら暮らす」に共感

 大森彌東大名誉教授といえば、地域行政の専門家だが、最近、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の会長に就任することが決まったばかり。社会保障についても詳しい。ネットサーフィンしていたら、その大森氏が2008年10月に盛岡市渋民文化会館で「「地域自治」の可能性」と題して講演した内容を読むことができた。共感するところが多かった。それを紹介する。

 「後期高齢者と言われた高齢者が怒っているのだそうでして、何怒っているのですかね。後期と言われて怒っている高齢者に私は怒っているのです」、「何か姥捨て山の扱いを受けると怒っているようですけれども、そんなことはありません。後期高齢者に求められていることは二つだと思います。一つは健康であり続ける努力をすること。健康寿命を延ばすこと。できるだけ病院に行かないこと。‥(中略)‥後期高齢者はできるだけ医療費を高めないですむ暮らし方をして、若い世代の負担を減らす努力をする。」

 「本人にとっても、社会にとっても、医者にもかからない、介護サービスも受けなくてもいい、元気で頑張っている高齢者が一人でも多い地域をつくり出すことが望ましい」、「それはどうしたらできるかといったら、簡単」、「高齢者が地域に出ていって、楽しいさまざまな、しかも有意義な活動をする。そういう地域はみんな平均寿命が長い」、「もう一つ、高齢者がやるべきことは、次にやってくる若い世代のために、つまり世のため、人のために尽くして死ぬことなのです。人から何かやってもらおうとするのではなく、地域のために何かやって死のうと。」

 高齢者は死後に発効する遺言状を必ず書くこと。その中に「全体とすれば、いい人生を送ることができたので、地域におカネを寄付すると書くこと」。もう一つ、生前に発効する遺言状も必要。「倒れても生命維持装置を拒否すると書いておく」。そうしておかないと、家族などに迷惑をかけるし、病院で死ぬことになるからだ。

 「できるだけ人から面倒見てもらわなくても済むように自ら暮らし続けて、できればほかの人のために尽くして死んでいく。そうすれば、高齢社会の問題はそんなに難しい問題ではない」、「高齢者がみんなだれからも面倒見てもらうようになったら、どうしようもない社会になる。」

 「本当の優しさというのは、普通に考えたら意地悪いぐらいでなければ」。みんなが優しくしてしまうと、「その人の持っている力は弱まり、失われていく。それが優しさだと思っているのは大間違いなのです。そのことが人間をだめにしていくのです。」

 福祉、医療などについて「私ども今までやってきたことが本当に人間を大事にするやり方かどうかについては考え直してみる必要があるのではないかと思っています。」

 大森氏の話は、「かわいそう」な人たちを助けるために政府などがやたらカネを出そうとする風潮にも当てはまるように思う。誰も声をかけてくれないから死にたいなどという若者の甘えに対し、かわいそうに、と反応するのも同様だ。どちらも人間をだめにするのではないかと思う。

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2011年2月12日 (土)

世界ランキングに見る日本のシンクタンクのレベル

 米ペンシルバニア大学が毎年作成する世界のシンクタンク・ランキングがこのほど公表された。全世界、米国を除いた全世界、調査研究分野別などに分けた順位を示している。

 世界のリーディング・シンクタンク75社の中に、日本からは日本国際問題研究所だけが入っている。世界ランキングの第1位はBrookings Institute(米)、第2位はCouncil on Foreign Relations(米)、第3位はCarnegie Endowment for International Peace(米)、第4位はChatham House(英)、第5位はAmnesty International(英)である。

 世界(米国を除く)では、上位50において、日本からは第46位に日本国際問題研究所が入っている程度。ちなみに中国はChinese Academy of Social Sciencesが第15位、China Institute for International Affairsが第49位に入っている。

 アジアでみると、Chinese Academy of Social Sciencesがトップ。2位が日本国際問題研究所である。日本勢は、ほかに世界平和研究所が9位、防衛省防衛研究所が13位である。

 調査研究分野別では、国際開発において日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所が24位、健康政策で日本医療政策機構が第10位に位置する。国際経済政策で日本貿易振興機構アジア経済研究所が17位に、また科学・技術において未来工学研究所が第7位、関西情報・産業活性化センターが12位である。

 環境、安全保障・国際問題、国内経済政策、社会政策などでは日本のシンクタンクの名前は挙がっていない。

 Special Achievement Categoriesの部門では、インターネットやメディアの利用や政府・大学・政党傘下のシンクタンクなどについてもランキングをしている。政府関係シンクタンクでは、日本は国連大学が7位、経済産業研究所が13位に挙げられた。

 シンクタンク世界ランキングの対象は169ヵ国、6480のシンクタンクである。うち、北米が1913、ヨーロッパが1757、アジアが1200、ラテンアメリカ・カリビアン690、アフリカ548、中東・北アフリカ333などとなっている。国別では米国が1816と断然トップ、次いで中国425、インド292、英国278などで、日本は103と9位である。

 日本はNPO/NGOが弱く、シンクタンクも民間のそれは規模、質、資金力などで米欧にかなり劣る。それがこうしたランキングに如実に表われる。日本の政党の政策形成力が乏しいのも、民間シンクタンクが非力であるのと裏腹の関係にある。それはまた、日本の税制がシンクタンクなどへの寄付を無税扱いしないことともつながっている。 

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2011年2月11日 (金)

古賀連合会長の話から

 民主党を支える主柱ともいうべき連合(日本労働組合総連合会)。そこの古賀伸明会長の話を聞いた。

 まず、日本の現状を「政権交代で新しい社会づくりをと考えたが、そうは問屋がおろさなかった。成熟社会の中で、どんな暮らしをするか、どんな生き方をするか、どんな働き方をするか、模索していて、その方向性を見出していない。これは日本の大きな課題だ」と述べた。

 いまの政治については、「民主党政権はどこで間違ったんでしょうね。マニフェストを掲げて選挙を闘った。マニフェストは一定期間をかけて実現するもので、1年でおかしいというのは間違っている。ただし、マニフェストの検証は必要。国民とともに検証をやるべきで、そうすれば、一定程度の理解は得られる。マニフェストの背骨、例えば、育児の社会化。そのために子ども手当をつくるといったことは変えてはならない。検証に早く着手する必要がある、そう言ってきた。いま、党が割れている。そこが最大のポイント。大きな宿題、代償、学習をしている。政治は何のためにあるのか、原点を訴えていきたい」、「いまは闇夜を暴走しているようなものだ」と語った。

 いわゆる春闘については「すべての働く者の処遇改善を要求する」とともに、「すべての労働者を対象に1%を目安に適正配分を求める。1997年から5.3%賃金が下がったので、それを5年間で復元してゆく」との方針を表明した。ただし何の1%か(ベアか、ボーナスか、手当込みかなど)という点については、あいまいであることを認めた。

 また、日本の労使関係について「集団的労使関係は日本の重要な社会システム」だと積極的な評価を示し、「日本の経営者には、非正規雇用に対して、これでいいのかと考える人が増えている。人は経営資源である。政労使で非正規雇用問題に一歩ずつ踏み込む必要がある。ワーキングプアを放置してはいけない」と付け加えた。

 法人税引き下げに関しては「下がった分を即、人件費引き上げに回せという意見には賛成しない。国内への投資を増やすことが重要だ。新成長戦略実現会議では、企業から投資の内容が提示された。ただ、いま7~8割の企業は法人税を払っていない。だから、あまり関係ない感じだ」という見方を示した。

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2011年2月 9日 (水)

国の特別会計歳出予算

 9日、財務省が公表した2011年度特別会計の歳出総額は384.9兆円。うち、会計間のやりとりが91.4兆円、国債の借り換えが111.3兆円。この2つを差し引いたあとの純計額は182.2兆円である。

 次に、純計額の内訳をみると、国債償還費等が82.5兆円、社会保障給付費が57.4兆円、地方交付税交付金等が19.0兆円、財政融資資金への繰り入れが14.6兆円。残りは8.8兆円で、保険事業、社会資本整備事業、エネルギー対策、食料安定供給などに充てられるという。

 特別会計の歳出総額は見かけは一般会計予算の4倍以上と膨大だが、個別の政策判断なしに自動的に出ていく経費がほとんどだということを示している。

 また、国債の借り換え111.3兆円、国債償還費等82.5兆円、および(財投債発行で調達した資金の)財政融資資金への繰り入れ14.6兆円の3つを合わせると208.4兆円に達する。現代日本の国家財政が巨額の国債発行によって支えられていることを肌身で感じることができよう。

 公表された特別会計の資料が示すように、国民にとって国家財政の仕組みはきわめてわかりにくい。データを公表するだけで、霞が関の省庁が説明責任(アカウンタビリティ)を果たしているとは言い難い。過去、特別会計を濫用してきたことにも問題がある。これからは国家財政全体に関して、一般会計を中心とするすっきりした仕組みに変えていく必要があるように思う。

 とにかく、この国の財政は個別分野に立ち入っても、きわめてわかりにくい。わかっているのは官僚だけということで、官僚がかなり操作できる余地がある。しかも、お互い、他の省庁への批判をしないようにしているから、おかしな点が是正されない。最近、厚生労働省が発表した「我が国の医療制度の概要」を読んでいて、つくづくそう感じた。

 例えば、「各保険者の比較」というデータをみると、公費負担(定率分のみ)が市町村国保は給付費等の50%、国保組合が同43%、協会けんぽが同16.4%、組合健保は財政窮迫組合に対する定額補助、共済組合はなし、となっている。なぜ50%なのか、43%なのか、‥‥。国保組合には平均収入が突出して高い医師の組合も含まれているのである。やっと最近、民主党政権はそこを改める方針を打ち出したが、そんなでたらめが一般市民にはわからないままだった。おそらくこうした問題が随所にあるだろう。 

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身延線の旅から

 東京から東海道線で富士駅(静岡県)まで行き、身延線(富士~甲府)を経て、中央線で東京に帰る小旅行をしてきた。切符は「東京都区内―東京都区内」である。

 昼前に着いた富士駅の周辺は、土曜日だったが、ほとんど人が通っていない。タクシーも人待ち顔。飲食店中心の商店街はまるで眠っているようだった。かつては大手スーパーの店があったが、それもなくなっている。弁当や果物を買うつもりだったが、そうした店がないのであきらめた。

 全国あちこちでみられる現象である。スーパーが商店街の一角に開店し、そのあおりで地元の商店が次々に閉店に追い込まれる。そして、次に、バラエティーの薄れた商店街には人が段々来なくなる。スーパーもやっていけなくなり、閉店する。富士市の場合、新幹線の駅が在来線と離れており、新幹線の駅周辺も閑散としている。人の集まる繁華街がなくなってしまったのである。製紙業が元気がないなど産業の後退もその背景にある。

 お隣りの富士宮市はB級グルメの富士宮やきそばで街が再生した。渡辺英彦氏が中心となって富士宮やきそば学会を設立したのは2000年11月29日。それから10年経った現在、B級グルメでは最も名が通っており、地元経済は相当に活性化した。

 富士宮やきそば学会をつくって間もない頃に、渡辺氏の話を聞いたことがある。富士山に依存し、停滞している富士宮市の経済をどうやって活性化するか。そこで、材料や味付けで独特の地元やきそばに着目し、それを売り出そうと考えたという。しかし、損害保険セールスを仕事にする渡辺氏のそうした呼び掛けに対し、地元の焼きそば店は素人が何を言うか、と冷たかった。にもかかわらず、渡辺氏の熱意と、おやじギャグを連発し、ユニークな発想で繰り出すさまざまな仕掛けとが徐々に賛同者を増やしていったのである。

 身延線の終点、甲府(山梨県)の地元料理である鳥もつ煮は、昨年9月、厚木で開催されたB級グルメの祭典(第5回)でゴールド・グランプリをもらった。「みなさまの縁をとりもつ隊 甲府鳥もつ煮」である。ちなみに富士宮やきそばは06年、07年の第1回、第2回祭典でゴールド・グランプリを獲得した。

 B級グルメとは「安くて旨くて地元の人に愛されている地域の名物料理や郷土料理」とされている。甲府で食べてみた鳥もつ煮丼は900円で、残念ながら「安くて旨くて‥‥」とは感じなかった。鳥もつ煮だけだと500円である。子供の頃、家でときどき鶏をつぶして食べた記憶があるし、社会人になってから、焼き鳥をさかなに呑んだから、安くて当たり前と思うのかもしれない。

 身延線には日蓮上人が開祖の日蓮宗、身延山久遠寺がある。身延山の頂上には寺の奥の院思親閣がひっそりと立っている。魁皇関が来て節分の豆まきが行なわれた日のあとに訪れたから、参拝客はほとんどいなかったし、寺も参道の商店もひっそりとしていた。有名なしだれ桜が花開く頃までは、静かな日々が続くのだろう。

 久遠寺は三門を過ぎると287段の石段がある。上り切ったところに大本堂などの建物がある。上がるのも下りるのも高齢者には相当しんどいが、それでも、急こう配の高い石段を見ると、なぜか、頑張って一歩一歩のぼろうという気にさせられる。今回が二度目の訪問だったが、また、いつか来てみたいという気になった。

 ところで、身延山頂上からは富士山がみえた。富士駅を出てからしばらくは富士山が電車の右に見えたり、不思議なことに左に見えたりした。そのうち、富士山の姿は見えなくなり、あと電車からは甲府までずっと見ることはなかった。富士山の周りを身延線が走っているので、ずっと車窓から富士の姿を眺められると期待していたのに。

 日常から離れ、都会の喧騒とは無縁。ローカル線の電車の旅は楽しい。 

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2011年2月 7日 (月)

中国がめざす情報統制『1984年』の世界

 最近の新聞記事で最も衝撃的だったのは日本経済新聞のコラム記事「中外時評」の「新華社の膨張どこまで 国家メディア戦略の先兵」(2月6日付け)である。筆者は論説委員の飯野克彦氏である。

 中国の国営通信社、新華社が、中国最大かつ世界で最大の契約者を持つ携帯電話会社、中国移動と組んで国家級の検索エンジンの開発に当たるという。中国政府が情報の安全保障を確立するために取り組んでいるもので、「5億を超える契約者を抱える中国移動のインフラにさりげなく情報統制の手段を埋め込む」ことが目的である。

 中国政府は09年に同国内で販売するパソコンに独自の情報フィルタリングソフトの搭載を義務付けようとした。外国メーカーなどの反対が強く、引っ込めたが、その後も中国政府の情報統制の姿勢は変わらず、今度は検索エンジンなどのシステムに情報統制のプログラムを埋め込む仕組みの実現をめざしているというわけだ。

 サイバー空間は設計次第では人類がみたこともないほど規制しやすい場所になる(ローレンス・レッシグ・ハーバード大学教授)という警告を引用した飯野氏は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』が発した警告はむしろ真実味を帯びてきたと言っている。

 エジプトなど中東の政治不安の背景には、ネットの活用があると言われる。しかし、中国はネットに対しても厳しい情報統制を敷いており、民主主義や言論の自由などというものを一切認めない。小説『1984年』に出てくる全体主義国家オセアニアは思想、言語などを統制し、市民のほぼすべての行動を監視するが、中国はそれに近い国である。しかも、日の出の勢いで、途上国などに中国の諸システムを輸出している。飯野氏は「中国流の情報統制システムが他の国々に普及していく可能性も見えてくる」とすら言い切る。

 中国はさまざまな矛盾を抱えており、共産党の独裁を維持するためには、何でもする可能性がある。13億の民を統治するには、『1984年』の描く国家を平気で指向するのではないか。我々の未来を考えるとき、そうした中国の恐ろしい情報統制の傘を断固としてはねのけるようにいまから他の民主主義国家とともに万全の備えをしなければならない。

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2011年2月 4日 (金)

新日鐵と住金の合併

 新日本製鐵と住友金属工業とが来年秋、合併することで合意したという。両社に神戸製鋼所を加えた三社はアルセロールミタルが誕生し、日本の鉄鋼メーカー買収に乗り出すのを恐れて三社提携をしていた。したがって、今回の二社合併にはいささか意外性がある。

 神戸鋼が参加しなかった理由はメディアも報じていない。勝手な憶測だが、神戸鋼は鉄鋼、機械、非鉄の三部門を持つ複合企業であり、鉄鋼のウエートは約4割にとどまり、鉄鋼中心の他の二社に比べて低い。また、鉄鋼事業においても、独自の製造技術を持ち、安い低品質の原料を利用可能である。鉄鋼主体の両社と合併したら、同社の鉄鋼事業の社員・幹部らは人事面で割りを食うおそれなしとしない。そんなこんなで、独自路線を歩もうとしたのではないか。〔2月7日追加:その後の報道で、この憶測は否定された。では、両社が神戸鋼をなぜはずしたのかの報道は見当たらない。知りたいところだ。〕

 1970年に八幡製鐵と富士製鐵が合併して新日本製鐵が誕生したが、その前の段階で、八幡の社内には神戸製鋼所との合併を目指すべきだという意見がかなりあった。そっちをとっていれば、総合重工業会社の道を歩んでいた可能性もある。

 それはさておき、新日鐵と住金が合併したとして、アルセロールミタルとは決定的に違う点がある。前者は日本企業同士の“結婚”である。ところが後者はインド人のミタル氏が途上国中心に買収・合併を重ねた会社ミタルが、ヨーロッパ最大の鉄鋼メーカー、アルセロールを強引に買収し、統合して誕生した会社である。かたや純日本企業であり、いま一方は途上国の色彩を帯びた多国籍企業である。

 ミタルは10年以上前、カザフスタンだったと思うが、同国の国営鉄鋼企業を買収したことがある。冬には零下二十度といった寒風が吹く日がずっと続く、極端に労働条件が厳しい土地にある製鉄所だった。ミタルは大量にインドなどから従業員を派遣し、設備を入れ替え、競争力を持つ製鉄所に変身させた。そこを視察した日本の鉄鋼大手の役員は「日本の鉄鋼メーカーには、そうした悪条件下の仕事に耐えられる社員はいない」と言い切った。鉄鋼業でグローバルな競争に勝ち抜くには、そうした厳しい労働環境でも働ける人材が必要なのだ。

 そうでなければ、鉄鋼業界で優位な立場を保持するには、よほど技術的にすぐれ、他を寄せ付けない競争力を維持することが欠かせない。日本の高炉大手は技術力でまだまだ抜きん出ていると自負しているようだが、過去の不況期のたびに研究開発費を減らしてきたため、近年は研究開発の成果がさほどでもなくなっている。新日鐵・住金の合併は世界的な産業再編成の一環として位置づけられるが、合併によるメリットを確実に生むのはそう簡単ではないだろう。

 ところで、新日鐵・住金の合併や、NECがパソコン事業を切り離し、中国企業との合弁に移管するといった、競争力保持を目的とする企業・事業の思い切った再編が相次いでいる。先進国経済の停滞と中国、ブラジル、インドなどの急成長など、グローバルな経済情勢の激変がその背景にある。残念ながら、日本経済は相変わらずデフレから脱却できず、肝心の政治は内向きの姿勢が続いている。これでは国内のビジネス界はやってられない心境だろうと推察する。

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2011年2月 3日 (木)

「国民経済計算」で知る日本経済の位置付け

 2009年度(平成21年度)の国民経済計算確報を内閣府が1月末に公表した。この資料を読んでいて、一番びっくりしたのは、1999~2009年度の表でGDPデフレーターが毎年度マイナスだったことである。それだけデフレが続いたということだろう。

 09暦年末の総資産は7954.2兆円と8000兆円を割った。過去のピークは06年末の8538.6兆円である。負債を差し引いた正味資産は2712.4兆円。10年前の2911.2兆円より7%近く低かった。

 土地資産額は09年末1207.7兆円となお減り続けており、1990年末のピークの半分以下に下がった。また、株式資産額は373.5兆円で、1989年のピーク875.4兆円の4割強にまで下がっている。

 正味資産の中のダントツである家計(個人企業を含む)の分は2039.0兆円(総資産2403.1兆円-負債364.0兆円)で、1988年以来の低水準。そして注目すべきは、一般政府(国や地方政府など)の正味資産がマイナスの48.8兆円となったこと。国債発行などでとうとう借金のほうが資産を上回った。財政破綻に近付いていることを示している。

 確報によれば、名目GDP(支出)は1999年度499.5兆円だったのが、2009年度は474.0兆円へと下がっている。その中で、国民所得に占める雇用者報酬の割合(労働分配率)は09年度に74.1%(前年度と同じ)と近年では比較的高い水準。家計貯蓄率は5.5%(08年度3.2%)と2000年度に次ぐレベルに上がった。

 また、産業別GDPの構成比(名目)をみると、09暦年の農林水産業はわずか1.4%。製造業にしても17.6%にすぎない。鉱業、建設業を含めた第二次産業というカテゴリーでも23.8%である。第三次産業の割合は09年に74.9%に達した。2000年には69.8%だった。

 このほか、一般政府の財政状況も確報に示されている。09年度のプライマリーバランスはマイナスの39.5兆円。内訳は中央政府がマイナス(赤字)31.5兆円、地方政府はプラス(黒字)1.7兆円、社会保障基金マイナス9.7兆円である。

 内閣府の発表には主要国の名目GDPのデータもある。日本の一人当たり名目GDPは09暦年に3万9530ドルで、OECD加盟国中、第16位だった。2000年には3位だった。2000年から2009年までの10年間に、日本の名目GDPは4兆6662億ドルから5兆0420億ドルまでちょっぴり増えた。その間に中国は4倍以上に、フランスは2倍弱に、米国は4割増、韓国は6割弱の増など、主要国はどこもかなりの経済成長を遂げた。

 過去10年以上にわたって日本経済が低迷してきた結果、国際経済における地位が顕著に低下した。それをどう考えるか。資源・環境などの制約を踏まえると、諸外国のような内容の経済成長を続けることは問題が多いとの見方も少しずつ出てきている。日本の進むべき道をめぐって議論が盛んになればいいと思う。

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