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2011年2月 4日 (金)

新日鐵と住金の合併

 新日本製鐵と住友金属工業とが来年秋、合併することで合意したという。両社に神戸製鋼所を加えた三社はアルセロールミタルが誕生し、日本の鉄鋼メーカー買収に乗り出すのを恐れて三社提携をしていた。したがって、今回の二社合併にはいささか意外性がある。

 神戸鋼が参加しなかった理由はメディアも報じていない。勝手な憶測だが、神戸鋼は鉄鋼、機械、非鉄の三部門を持つ複合企業であり、鉄鋼のウエートは約4割にとどまり、鉄鋼中心の他の二社に比べて低い。また、鉄鋼事業においても、独自の製造技術を持ち、安い低品質の原料を利用可能である。鉄鋼主体の両社と合併したら、同社の鉄鋼事業の社員・幹部らは人事面で割りを食うおそれなしとしない。そんなこんなで、独自路線を歩もうとしたのではないか。〔2月7日追加:その後の報道で、この憶測は否定された。では、両社が神戸鋼をなぜはずしたのかの報道は見当たらない。知りたいところだ。〕

 1970年に八幡製鐵と富士製鐵が合併して新日本製鐵が誕生したが、その前の段階で、八幡の社内には神戸製鋼所との合併を目指すべきだという意見がかなりあった。そっちをとっていれば、総合重工業会社の道を歩んでいた可能性もある。

 それはさておき、新日鐵と住金が合併したとして、アルセロールミタルとは決定的に違う点がある。前者は日本企業同士の“結婚”である。ところが後者はインド人のミタル氏が途上国中心に買収・合併を重ねた会社ミタルが、ヨーロッパ最大の鉄鋼メーカー、アルセロールを強引に買収し、統合して誕生した会社である。かたや純日本企業であり、いま一方は途上国の色彩を帯びた多国籍企業である。

 ミタルは10年以上前、カザフスタンだったと思うが、同国の国営鉄鋼企業を買収したことがある。冬には零下二十度といった寒風が吹く日がずっと続く、極端に労働条件が厳しい土地にある製鉄所だった。ミタルは大量にインドなどから従業員を派遣し、設備を入れ替え、競争力を持つ製鉄所に変身させた。そこを視察した日本の鉄鋼大手の役員は「日本の鉄鋼メーカーには、そうした悪条件下の仕事に耐えられる社員はいない」と言い切った。鉄鋼業でグローバルな競争に勝ち抜くには、そうした厳しい労働環境でも働ける人材が必要なのだ。

 そうでなければ、鉄鋼業界で優位な立場を保持するには、よほど技術的にすぐれ、他を寄せ付けない競争力を維持することが欠かせない。日本の高炉大手は技術力でまだまだ抜きん出ていると自負しているようだが、過去の不況期のたびに研究開発費を減らしてきたため、近年は研究開発の成果がさほどでもなくなっている。新日鐵・住金の合併は世界的な産業再編成の一環として位置づけられるが、合併によるメリットを確実に生むのはそう簡単ではないだろう。

 ところで、新日鐵・住金の合併や、NECがパソコン事業を切り離し、中国企業との合弁に移管するといった、競争力保持を目的とする企業・事業の思い切った再編が相次いでいる。先進国経済の停滞と中国、ブラジル、インドなどの急成長など、グローバルな経済情勢の激変がその背景にある。残念ながら、日本経済は相変わらずデフレから脱却できず、肝心の政治は内向きの姿勢が続いている。これでは国内のビジネス界はやってられない心境だろうと推察する。

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