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2011年3月24日 (木)

野菜などの摂取制限や出荷停止が及ぼす影響

 一部地域で生産されたホウレンソウ、小松菜などの幾種類かの野菜や原乳から食品衛生法で定めた放射性物質の暫定規制値を超える値が検出されたとして、政府は摂取制限や出荷停止を指示した。福島原発から放散したセシウムなどの放射性物質がそれらの地域を汚染したためとみられる。この結果、当該地域の農家でつくられた野菜や原乳は廃棄されることとなった。

 わざわざ菅首相が摂取制限を指示したそうだが、これは、国民の健康に十分配慮していることを強調したいがためだろう。だが、その一方で、枝野官房長官は相当に食べたとしても、「健康に被害は出ないし、将来にわたって健康に影響を与えるような放射線量は受けない」と述べている。菅首相が国民の不安をかきたて、枝野長官がそれを抑制しているような印象を受ける。

 出荷停止や摂取制限の指示によって、広範囲の農家は出荷がストップした。いずれ、他の野菜なども危険視され、当該地域の農家は完全に息の根をとめられてしまうおそれがある。いわゆる風評被害である。一部品種だけの話ではすまなくなるのである。そうだとすれば、これらの農家は農業・畜産業をやめるしかないことになる。

 だが、放射性物質による健康への影響について、専門家は野菜などを水洗いしたりすれば、大幅に影響は減るとか、毎日、同じものを食べるわけではないから、あまり心配しなくていい、といった意見を述べている。もしも、それが正しいなら、政府が率先して国民を不安におとしいれるような措置をとるのはいかがかと思われる。

 有害化学物質に対する規制は安全係数が100倍である。そもそも有害か否かの実験は人体を使ってはできない。そこで動物を使う。このため、種の違いを考慮して、安全度を10倍に見積もる。さらに、人間も乳幼児と大人とでは違うように、個体差がある。そこでやはり安全度を10倍に見積もる。その結果、動物実験で得られた安全度の100倍を人間用の基準としている。安全第一を極端に推し進めた基準を採用している。

 放射性物質に対する規制値もおそらく同様な考え方で機械的に設けられているのだろう。そうだとすれば、規制値を相当上回っても、当該の野菜などを普段の暮らし通りに摂取するだけなら、健康を害しないのではないか。当該地域の農業を全滅に追い込むほどの強い副作用を持つ規制に踏み切ったのは、大きな誤りではなかろうか。福島原発がもっと深刻な状態になり、放射性物質がさらに多く放散されると、厳しい規制を導入して当然だが、いまはまだ時期尚早である。

 政府が原発の安定化に必死になっているのは当然のことだ。また、被災地や被災者に救いの手をさしのべることにも、もっと力を注ぐ必要がある。しかし、それとともに、菅首相および政府は、これからどうなるかと不安を抱いている国民に対し、日本再生の展望を明示することが求められている。一国のリーダーがいまなすべきことは何かを、菅首相はわきまえてほしい。 

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