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2011年3月22日 (火)

過度の集中と分散の脆さ

 マグニチュード9.0の巨大地震が襲ってきてからの出来事をみていると、現代経済はコスト最小化などのため、ひたすら集中や分散を図ってきたという構図とその脆さとがよりはっきり見えてきたように思う。

 ◆原発の問題については、立地を受け入れてくれる地域がごく限られていたため、電力会社は一ヵ所にできるだけ多くの原発を設置してきた。東電は自社の営業管内で原発をつくる場所を確保できなかったから、余計、集中して何基も設けた。もちろん、集中によるコストダウンも考慮に入れていた。しかし、一基でも放射性物質による汚染などの事故を起こしたら、同じ立地内の他の原発まで停止をよぎなくされかねない。原発の集中はこのように潜在的に大きな供給不安定というリスクを抱えていて、それが今回、現実となったのである。

 日本が原発に力を入れてきた背景には、脱石油・石炭もある。しかし、石油はだめ、さらに原発もいまのシステムではだめとなると、省エネ、再生可能エネルギーの開発・普及などに国を挙げて取り組むしかない。経済・産業構造やライフスタイルの抜本的な転換が迫られる。

 ◆自動車、エレクトロニクスなどの分野では、最終製品のメーカーの内製率はどんどん下がってきている。外部から部品などを買ったり、製品の生産そのものまでも委託したりしている。今回の大震災で、サプライチェーンを構成する部品メーカーなどの工場が壊れ、供給が途絶している。このため、国内の完成車メーカーの工場生産が止まったのみならず、日本から部品などを供給しているアジアや欧州、米国などの完成車メーカーの操業にも響いている。エレクトロニクス製品も同様だ。

 自動車の場合、部品点数が3万ともいわれるように非常に多く、それらの生産に当たる内外の部品メーカーは特定の部品組立や加工だけというように専門分業化している。しかも下請け、孫下請け‥‥という供給のチェーンに支えられている。したがって、完成車メーカーなどにとって、品質、コスト、納期や在庫最小化などを踏まえたグローバルな最適調達体制となっている。だが、部品などの納入ストップが長く続くと、最終製品のメーカーの生産ラインは大きな打撃を受ける。今回の震災を機に、戦争や大災害などを考慮に入れた柔軟性のある新たなサプライチェーンを構築することが必要になろう。

 ◆東日本大地震のあと、かなり強い余震が頻発している。いずれ、東海地震や東南海地震、あるいは東京直下型地震が襲ってくるだろう。そのときに最も恐ろしいのは直下型地震などで出火し、住宅が密集している東京都区内が火の海になることである。東北地方の沿岸地域とは正反対に、地価が高くて小さな住宅がくっつくように集中している首都の最大のリスクだ。街では、いざという時の避難場所を表す案内板を見かけるが、肝心の避難場所は小学校など狭いところが多い。それでは東京大空襲のような広範囲の火災から逃れられない。

 ◆鉄鉱石、石炭といった鉄鋼原料を供給する英、豪などの鉱山会社が企業買収・合併で巨大化している。BHPビリトンなど、全世界の供給量の何割もを占める会社もある。これほど極端に集中が進むと、供給側による販売価格の支配が容易となる。過去には鉱山会社と鉄鋼メーカーとの間で1年以上、固定価格で長期契約していたのに、直近では毎月、決める話になっている。それに伴い、鉄鋼メーカーは鋼材を納入する長期顧客にツケを回そうとするが、長い商慣習を変える話なのできわめて困難だ。鉱山会社の売り上げ高利益率はベラボーに高い。半面、鉄鋼メーカーは窮地にある。公正競争を実現するため、世界独占禁止法が求められる。

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