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2011年5月 8日 (日)

前福島県知事が著書『知事抹殺』で述べた原発問題

 1988~2006年、福島県知事だった佐藤栄佐久氏が2009年9月に出版した『知事抹殺――つくられた福島県汚職事件』は、東京電力福島第一、第二原子力発電所をめぐる問題にかなりのページを割いている。そこには、今度の原発危機が想定外とは言い難いような経緯があったことが指摘されている。

 ――「原発政策は国会議員さえタッチできない内閣の専権事項、つまり政府の決めることで、その意を受けた原子力委員会の力が大きいということだった。そして、原子力委員会の実態は、霞が関ががっちり握っている。すなわち、原発政策は、立地している自治体にはまったく手が出せない問題だということが、私の在任中に起きた数々の事故、そしてその処理にともなう情報の隠ぺいでよくわかった。」

 1989年の事故で、『強烈な教訓として残ったのは、「国策である原子力発電の第一当事者であるべき国は、安全対策に何の主導権もとらない」という「完全無責任体制」だった。』

 『「原発の後の地域振興は原発で」という要望が地元から出てきたということは、運転を始めて約20年、原発が根本的な地域振興のためになっていなかったことの証明だった。「30~40年単位で考えると、また新しく原発をつくらないとやっていけなくなるということなのか。これでは麻薬中毒者が「もっとクスリをくれ」と言っているのと同じではないか。』、「2008年、双葉町は福島県内で財政状態が一番悪い自治体となってしまい‥‥」

 『知事に就任して12年、否応なしに原発と付き合ってきたが、同じ方向しか見ず、身内意識に凝り固まる原子力技術者だけでは安全性は確保できないこともわかってきた。東京電力や経産省を含めた「原子力ムラの論理」に付き合わされて振り回された反省にも立って‥‥』、『制御できないという意味において、地元にとって原発は巨大モンスターである。』

 エネルギー政策を福島県として見直す検討委員会で、村上陽一郎氏は『「有り得ないことが次々と起きる」ということは、「起こるべくして起きている」のと同じ意味なのだ』と強調。米本昌平氏は「霞が関にすべてを任せておけば良いとする風土や考え方」を「構造化されたパターナリズム」と名付け、『原子力政策は国策だから安心だと思っていると、実は核物質をバケツでかき混ぜていた、という「報い」になって返ってくる』と言った。

 1999年の東海村JCO臨界事故を教訓に内部告発を奨励する制度がつくられ、2000年に検査記録の改ざんを告発する初の文書が経産省の原子力安全・保安院に届いた。これに対し、保安院は本来すぐに立ち入り調査をすべきなのに、「よりによってその告発内容を、改ざん隠ぺいの当事者である東京電力に照会」した。さらに、「保安院は、告発者本人からの事情聴取を一度もしないまま、2000年12月、告発者の氏名などの資料を東電に渡すことまでしていた。」、「少なくとも国は国民サイドには立たず、国は産業と一体であったのは間違いない。」

 「経済産業省の中に、プルサーマルを推進する資源エネルギー庁と、安全を司る原子力安全・保安院が同居している。これまでわれわれは国に対し、“警官と泥棒が一緒になっている”ような、こうした体質を変えてくれと言い続けてきた。それに対して原子力委員会は、事務局である経産省の役人の書いたゼロ回答を送ってよこした。ここに問題の原因のすべてが凝縮されている。」

 2005年10月、原子力委員会は核燃料サイクル計画などを盛り込んだ原子力政策大綱を了承、さらに閣議で決定した。「しかし、責任者の顔が見えず、誰も責任を取らない日本型社会の中で、お互いの顔を見合わせながら、レミングのように破局に向かって全力で走り切る決意でも固めたように思える。」(レミングとは、ネズミ科の小動物。餌が不足すると、集団自殺する、といわれるが、事実はそうではないとされる)

 原発反対の立場ではない佐藤氏は首長として、「事故情報を含む透明性の確保」と、「安全に直結する原子力政策に対する地方の権限確保」の2点を追い求めた。それが政府の方針と真っ向から対立する理由だったのだろう。――

 『知事抹殺』の後半は佐藤氏が身に覚えのない建設汚職で逮捕、起訴され、一審で有罪判決(執行猶予つき)を受けるにいたる詳細な記録である。検察がストーリーを描き、それに無理やり当てはめて起訴するやりかたは、世間にかなり知られるようになった。読んだ限りでは、それと同じような構図と受け取れる。

 ただ、佐藤氏は知事として5期目に入っていた。汚職云々はさておき、4期(16年)とか、5期(20年)というのはいかにも長過ぎる。知事としての実績は評価するが、お山の大将になっていはしなかったか。そこは読んで気になったところである。 

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