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2011年5月22日 (日)

東電の純資産は1兆6千億円しかない

 東京電力が3月期決算を発表した。連結決算をみると、期末の総資産14兆7904億円と巨大な企業だが、純資産は1兆6025億円にすぎない。1年前は2兆5165億円あった。2011年3月期に1兆2473億円もの純損失を出したため、純資産が一挙に9千億円近く減ったことを示している。

 この純資産を1株当たりでみると972円である。現在の株価の3倍近い。この1株当たり純資産は2010年3月期末には1828円あったから、この1年で、一気に半分に減ったということになる。この純資産のサイドからみると、今回の決算並みの損失が2011年度(2011年4月~2012年3月)にも出れば、純資産はゼロに近くなるか債務超過になる。株価がそれを反映したら、株価はゼロに限りなく近づく。

 ところで、企業の資産の中には、大体、時価が簿価より高いという“含み益”が隠されている。東電は歴史のある会社だから、保有する土地や株式には相当の含み益がある。電力事業の遂行に必要不可欠でないものは処分するという方針にしたがえば、処分によって、「簿価プラス含み益」の資金を手にすることができる。

 発表された「経営合理化方針」によれば、厚生施設、有価証券、国内外の事業の売却で6000億円以上の資金確保を目指すという。問題は、それ以外に、電力事業遂行に必要不可欠でない資産がどれだけ残されているかだ。まったくの想像だが、6000億円には達しないのではないか。以上の資産処分で得られる資金は一回限りのものである。

 一方、「経営合理化方針」では、投資・費用の削減で5000億円以上を捻出するという。具体的には修繕費、システム・研究開発費、人件費などあらゆる費用の削減を実施する。こっちは毎年、その分だけ資金が手元に残る。

 以上に挙げたのは、東電が損害賠償に充てる資金として自らが捻出できるものだ。一方で、福島第一原発の安定化や原発縮小をカバーする火力発電のコストなどに要する費用が当面、年間に数千億円ないし1兆円はかかるだろう。したがって、電力料金を据え置いたままでは、損害賠償に必要な資金を東電の自己努力で賄うことができるか疑わしい。賠償額は多くても1兆円に達しないという話をする人もいるが、賠償額がもっと大きくなれば、東電は欠損累積で事業遂行が困難に陥る。

 欠損続きになっても、従来なら、金融機関が救済融資に応じてくれた。だが、枝野官房長官が「貸し手責任」を言って、金融機関にまで損害賠償負担を求めるようになっているから、金融機関が追加融資に応じる可能性は乏しい。

 したがって、政府が計画している「機構」から資金を調達するという話になるのだろうが、その資金は返済せねばならないことになっている。不確定な要素が多いので、いまの時点で断定的なものの言い方をするわけにはいかないが、電力料金を上げないままで、東電が損害賠償を完遂するというのは無理があるように思える。菅政権は東電に全ての責任をおっかぶせようとしているが、いずれ、どこかで、その無理が表面化するのではないか。

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