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2011年6月11日 (土)

田坂広志氏のリーダーシップ論

 世界銀行の副総裁をつとめた西水美恵子氏の著書『国をつくるという仕事』(2009年4月刊、英治出版)の末尾には、田坂広志氏が「真のリーダーの抱く夢――解説に代えて」を書いている。田坂氏独特の文章スタイルだが、リーダーシップについて述べたもので、なかなか読ませる。勝手な要約をすると――

 「真のリーダーシップは、必ず、人々に対する共感を原点としている」。職場でなら、部下に対する共感、企業でなら、社員に対する共感、国家でなら、国民に対する共感である。「もし、我々に、人々に対する深い共感があるならば、我々は、誰もが、優れたリーダーになっていく可能性がある」。

 リーダーの資質というと、例えば、信念、情熱、勇気、謙譲、寛容、人徳、ビジョン、行動力などがあげられるが、「それらの資質は、そのリーダーが、生来持っていた資質なのか、それとも、リーダーへの道を歩む過程で身につけた資質なのか」。後者である。

 どんな人間も「迷い」や「弱さ」を持っている。では、優れたリーダーは、いかにその「迷い」を捨て、「強さ」を身に付けたのか。その答えは「原体験」である。西水氏が優れたリーダーになりえたのは、貧民街でろくに栄養もとれず死んだ幼女、ナディアへの深い共感が同氏に、「迷い」や「弱さ」を超えて歩み続ける「信念」と「強さ」を与えたのではないか。

 いま目の前に、悲しみ、苦しみ、孤独の中にいる一人の人間がいる。自分はそういう境遇ではないが、この世に生れてくるとき、ほんのわずかの偶然で、そうなっていたかもしれない。とすれば、「いま目の前にいる相手の姿は自分の姿ではないのか。この世界の不条理の中で苦しむ一人の人間の姿は、実は自分の姿ではないのか」。そうした思いを抱くとき、そこに「共感」が生まれる。こうした共感を抱いたとき、「我々は、この世界を変えるための道を、歩み始める」。「それは一人のリーダーが生まれた瞬間」である。「自分自身の人生を自分自身で導き、生きていく」。「その一人のリーダーが生まれた瞬間」でもある。

 そして、その人が歩み出したとき、その後ろ姿を見つめている人々がおり、それらの人々の中からまた一人のリーダーが生まれてくる。そして、すべての人々が自らの人生の主人公になる時代を迎えること、それが真のリーダーが夢見る世界である。

 強力なリーダーシップは、人々の心の中に、かならず、深い依存心を生みだす。だから、その強いリーダーがいなくなると、しばしば、その組織に混乱が生じ、ときには独裁政治や衆愚政治が生じる。人類はその過ちを繰り返してきたのである。――

 西水氏の著書を評価して展開した田坂氏のリーダーシップ論は傾聴に値する。ただ、菅直人総理大臣がしばしば田坂氏を招き、意見を聞いているというのには違和感を覚える。このリーダーシップに関する田坂氏の見解に照らすと、菅総理は真のリーダーとはほど遠いと思えるからである。

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