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2011年8月19日 (金)

コップの中の争い

 もしも、いま衆議院を解散したら、民主党は政策として国民に何を訴えるのだろうか。災害復興、エネルギーをはじめ、社会保障、税・財政、外交・安全保障、地方自治、産業振興、雇用などを総合したどんな政策体系を打ち出すのか、と考えると、おそらくきちんとした解は出てこないと思う。マニフェストは空中分解してしまったし、党としての綱領を持たず、また、つくろうともしていないのだから、民主党から立候補する人たちは、これまでの政治の中から適当に、都合のいいところだけをつまんで民主党の“実績”を誇ったり、個人の意見や考えを有権者に訴えるだけにとどまるだろう。

 それで民主党が総選挙で勝利することができるほど、国民は甘くない。大敗北は確実である。したがって、民主党の現在の最大の関心は、絶対に衆議院解散をせず、権力の座に座り続けることである。

 菅総理大臣の退陣を前提に、そのあとがまをめぐる民主党内の総裁選が行なわれる見通しだ。しかし、誰が後継者になろうとも、民主党は何をする政党かあいまいなままでは、国民の信頼は回復しない。当然のことながら、災害復興、財政健全化など諸課題の解決も、なかなか進まないだろう。にもかかわらず、総裁選に我こそはと名乗りをあげる民主党政治家が次々に出てくるというのはどうしたことか。

 野田佳彦、馬渕澄夫、樽床伸二、鹿野道彦、海江田万里‥‥といった人たちは大臣や党の要職についた経験があるが、普段、彼らが国政の諸課題について自説をぶったという話はまず聞いたことがない。閣僚の集まる会議で、かんかんがくがくやりあったということも寡聞にして知らない。したがって、この国をどう立て直したいのかといった総合的な識見が彼らにあるのか、未熟な政治家ばかりの民主党を引っ張って、望ましい政策を実現するリーダーシップがあるのかどうか、国民にはわからない。彼らの力量は未知数である。いずれも、政治家となった以上、総理大臣になりたいという“なりたがりや”ばかりなのかもしれないのだ。

 また、この後継者争いでは、民主党が国政を担当してきた2年間の総括・反省がきちんと行なわれそうにない。やろうとすれば収拾がつかないからだ。これは主義・主張が異なるさまざまな政党および政治家が反自民だけで結集した雑居政党の本質を示すものである。

 民主党におけるポスト菅の選出は、メディアでおもしろおかしく伝えられようが、いずれにせよ、本質的に問題がある。解散して民意を問うのが第一だ。

 経済界で、民主党の“応援団長”だった稲盛和夫氏は雑誌「文芸春秋」9月号の対談で、安岡正篤の言う「知識、見識、胆識」を備え、かつ基本的なモラルを十分に持った人を新しい首相に選んでほしいと語っている。民主党の中から選ばれるという暗黙の前提があるように思うが、稲盛氏の求める人物が首相になったとしても、民主党の抱える本質的な問題点に手をつけない限り、わが国の政治は漂流を続ける。

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