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2011年8月12日 (金)

食料自給率への疑問

 カロリーベースの食料自給率は2010年度に39%となったと農林水産省が発表した。国内で供給される食料のうち、国産でどれだけまかなえているか、という指標とされ、政府が食の安全保障を主張する大きな根拠となっている。だが、『農業で稼ぐ!経済学』(浅川芳裕、飯田泰之著、2011年7月刊、PHP研究所)は、そうした国の政策に真っ向から疑問を呈していて、刺激的だ。

 まず、農水省が発表する自給率を政策に使用する国は日本だけ。主要先進国では使われていないという。国際社会に共通する食料安全保障とは、①国民が健康な生活を送るための最低限の栄養を備えているか、②貧困層が買える価格で供給できているか、③不慮の災害時でも安全に供給できるか、の3つだという。

 カロリーベースの自給率が高い国というのは、「経済力がなく農産物に対価を払えない、もちろん、食料の輸入自体が難しいといった、途上国の農業なのです。貧しいがゆえに自給率が高くならざるをえない‥‥」と指摘している。

 同書によると、国民1人あたりの年間農産物輸入額(試算)はイギリス690ドル、ドイツ617ドル、フランス557ドルで、日本はそれらの国の半分程度、324ドルだという。1人あたり輸入量でも、フランス593㎏、ドイツ570㎏、イギリス557㎏、日本は437㎏である。

 GDPに対する農産物輸入比率はイギリス1.9%、ドイツ1.8%、フランス1.7%、日本は約半分の0.9%である。そして、年間農産物生産額では、日本は世界第5位の農業大国で、フランス、ドイツ、イギリスやロシア、オーストラリアを超えている。ちなみに、第1位は中国、次いでインド、米国、ブラジルという順番だ。

 また、特定の国から小麦を輸入しているのは高品質の小麦を安定的に買えるからで、小麦輸出国自体は100ヵ国以上もあるので、品質が多少悪い小麦ならいくらでも買えると述べている。

 このほかにも、同書の内容はきわめて刺激的だ。人口に占める農家の割合はイギリス1.7%、ドイツ2.2%、フランス2.9%だが、日本は3.4%。「農業人口の減少は経済発展の証といってもよい。そのなかで、日本の農家人口はまだ多過ぎます」という。

 「高齢化などによる農家人口の減少は、日本に限らず先進国では共通の現象」。少数精鋭の農業者が食を担える先進国に成長するというのが先進国共通の経済段階だという。高齢化については日本よりも他の先進国のほうがよっぽど深刻だとも言及している。

 「農家」、「販売農家」、「主業農家」、「準主業農家」、「自給的農家」、「農業従事者」、「農業専従者」、「基幹的農業従事者」などの定義についても、同書は詳しく触れている。外部者にはわかりにくいうえに、過去の農政の歪みが反映した農業統計の問題点を素人に教えてくれるのも、同書のすぐれた点だ。

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